失敗しない抗体の選び方——高い再現性と確かな結果を得るための最新ガイド

はじめに:抗体選択の重要性
タンパク質検出の実験において、抗体選択は研究の成果を左右する重要な要素です。選択した抗体の質が低いと、実験の再現性が低下することがあります。そのため、適切な抗体を選ぶことは、実験にかかる時間やコストを削減するだけでなく、結果の信頼性を高めるためにも不可欠です。
この記事では、最新のリコンビナント抗体も含めた抗体選択のポイントを解説します。ぜひ、日々の実験に役立ててください。
抗体選択の基本ポイントを押さえる
抗体は、ただ標的と結合すればよいというものではありません。実験の目的に合わせて適切かつ信頼できる製品を選択する必要があります。そのポイントを5つに絞って解説します。
1 標的との交差性を確認する
検出したいタンパク質を標的とする抗体を探す際に交差性(Reactivity)の確認が重要です。交差性とは、その抗体が反応することを確かめている動物種のことで、抗体のカタログには必ず記載されている情報の一つです。自分が扱っている動物種が含まれているか、必ず確認しましょう。
2 ポリクローナル抗体かモノクローナル抗体かを選択する
一般的な抗体製品は大きく分けて、抗原中の複数のエピトープと反応できるポリクローナル抗体と、特定のエピトープに反応するモノクローナル抗体の2種類があります。それぞれの特性や推奨される用途については、以下の記事をご覧ください。
3 ホスト種とアイソタイプを考慮する
二次抗体の選択にホスト種とアイソタイプを確認する必要があります。ホスト種とは、抗体作製で用いられた動物種のことです。二次抗体の選択では、用いる一次抗体の動物種に結合するものを選択する必要があります。
アイソタイプはクラスとも言い、哺乳類ではIgA、IgD、IgE、IgG、IgMの5つがあります。多くの二次抗体は特定のアイソタイプを認識するため、実験に用いた一次抗体のアイソタイプに合わせた二次抗体を選択する必要があります。
4 適用アプリケーションと使用実績を確認する
抗体によっては、ウェスタンブロッティング(WB)、免疫組織化学(IHC)、フローサイトメトリー(FACS)など特定のアプリケーション向けに検証済みの製品があります。普段使っている抗体で、特定の実験で、良い結果が得られない場合、用途に適した抗体も検討しましょう。/p>
5 検証データを確認する
4と関連して、メーカーが公開している検証データを確認することが、適切な抗体を選択する上で欠かせません。製品のデータシートやウェブページで、抗体の性能や特異性を検証した実験結果があれば、信頼できるでしょう。製品紹介ページの中で引用されている論文も重要な情報源になります。
効率的な抗体の探し方を身につける
抗体を探すとき、メーカーのウェブサイトやカタログを使うことがあるかもしれません。メルクでは多くの抗体製品を一括して検索できる専用サイトを用意していますのでこういったサイトを利用することもおすすめです。しかし、なかなか希望する製品が見つからない、見つかっても信頼できる製品か判断がつかないこともあります。次のポイントを押さえると、効率よく抗体を探すことができます。
1 専門検索エンジンを活用する
論文検索でPubMedを使うように、抗体にもメーカーをまたいで検索できる専用サービスがあります。例えば、抗体を含めたさまざまな試薬を検索するウェブサイトにCiteAbがあります。抗体を探す場合、標的タンパク質や製品名を入力すると、論文の引用回数順に抗体の検索結果が表示されます。
他にもAntibodypediaという検索サービスもおすすめです。このサービスも抗体情報や引用論文を検索でき、実験結果の画像を簡単に見られるのが特徴です。CiteAbもAntibodypediaも、WBやFACSなど用途を絞り込んだ検索が可能です。
2 レビューや論文を参照にする
実際に使用した研究者の評価は、抗体選択の上で重要な情報源になります。論文の記載はもちろんのこと、上記の検索サービスやメーカーのウェブページにあるコメント欄には研究者の生の声があります。製品を比較する際にぜひ活用しましょう。
3 メーカーサイトを比較する
似たような抗体が別々のメーカーから販売されているときには、データシートや検証実験をもとに自分の目的に合っているものなのか、よく検討する必要があります。抗体選択の基本ポイントの項で示した点は実験の結果に大きく関わるものなので重点的にチェックしましょう。メーカーのテクニカルサポートに目的のアプリケーションに適切な抗体を問い合わせてみるのも有効です。
潜入!たよれるメルクのテクニカルサービスの秘密
また、使用した時のトラブルに備え、品質保証に関するポリシーやサポートの体制の確認も大切です。
抗体の新しい選択肢「リコンビナント抗体」
ポリクローナル抗体は標的分子に小さな変化があっても認識できることが多く、比較的幅広いアプリケーションで使用可能です。しかし、ロット間差が大きい可能性があり、動物の死亡によって供給が途絶えてしまうリスクもあります。
一方、モノクローナル抗体は特異性が高い上に、ハイブリドーマ細胞によって安定的に生産できるため、ロット間差が低いことが長所として挙げられます。ただ、標的分子の構造変化やアミノ酸配列のわずかな違いの影響を受けやすく、アプリケーションや動物種が限られる場合があります。また稀に、ハイブリドーマ細胞のもつ抗体の遺伝子配列が変異することで性能が変わり、実験結果に影響を及ぼす潜在的リスクを抱えています。
一長一短あるポリクローナル抗体とモノクローナル抗体に対して、近年登場した第3の選択肢がリコンビナント抗体です。リコンビナント抗体とは、クローニングした抗体の遺伝子を発現ベクターに組み込んで産生させるモノクローナル抗体のことです。ロット間差がほとんどない上に、配列がわかっているので必要に応じて再構築が常に可能であることが特徴です。
メルクでは、この優れた特徴を持つリコンビナント抗体としてZooMAb抗体を提供しています。ZooMAb抗体はメルク独自の抗体作製技術とリコンビナント発現系を用いた製造、精製によって、従来のモノクローナル抗体よりも高い特異性、親和性、再現性を実現しています。また、一般的な抗体製品には、抗体を安定化させるためにウシ血清アルブミン(BSA)など動物由来の防腐剤が含まれることが多くありますが、ZooMAb抗体は防腐剤フリーで保存されています。これにより、実験への影響を最小限にとどめることができます。
ZooMAb抗体はCiteAb社の「2020 Innovative Product of the Year」を受賞しており、まさに「新世代の組換え抗体」として評価されています。現在は高感度なモノクローナル抗体としてウサギをホスト種とした抗体を販売していますが、ヒトをはじめとする多くの動物種で反応する製品を用意しています。ZooMAb抗体の詳細や検証実験は以下のページをご覧ください。
おわりに:賢い抗体選択でスムーズな実験を
実験コストや時間を節約するだけでなく、再現性の高い実験を行うためにも、抗体選択は慎重になるべきです。抗体選択では、従来のポリクローナル抗体やモノクローナル抗体だけでなく、ZooMAb抗体に代表される新世代のリコンビナント抗体も選択肢に含めると、ロット間変動のない安定した実験結果が期待できます。ZooMAb抗体はリコンビナント技術により品質のばらつきを最小限に抑えて安定的に供給できるため、高感度な抗体を再現性高く利用することが可能です。また、基本的に同じ容量、同じ価格で提供しているので、ラボでの在庫・予算管理もしやすいなどの効果があります。
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