親水基の種類に注目!界面活性剤の3つの分類

親水基の種類に注目!界面活性剤の3つの分類

界面活性剤の分類

疎水基と親水基による様々な組み合わせから、市販される界面活性剤には数多くの種類があります。しかし、その選択肢の多さから、どれを使ったらよいか判断に迷うこともしばしばです。

界面活性剤の選択基準の一つは、目的とするタンパク質を可溶化でき、余分なタンパク質を可溶化しないということ。可溶化しようとするタンパク質と界面活性剤の相性も考慮して選択する必要があるため、界面活性剤の分類を知っておくことが重要です。

界面活性剤は、特に親水性頭部基の性質によって以下のように大きく3つに分類できます。

  • イオン性(有する電荷によって陽イオン性または陰イオン性がある)
  • 非イオン性(電荷をもたない)
  • 両性イオン性(正負両方の電荷をもつが分子全体の電荷はゼロ)

近年では、界面活性剤に似た機能をもつ非界面活性剤型スルホベタイン(NDSB)が可溶化・結晶化・安定化など、広範囲の分野で有用な試薬として知られています。

この記事では、各界面活性剤およびNDSBの性質について詳しく解説します。

イオン性界面活性剤

イオン性界面活性剤は、正味の電荷を有する頭部基を含有しており、タンパク質-タンパク質相互作用の破壊に有用です。陰イオン性の界面活性剤には、負に荷電した硫酸基を含むドデシル硫酸ナトリウム(SDS)やグリココール酸ナトリウム(胆汁酸塩)があり、陽イオン性の界面活性剤には、正に荷電したトリメチルアンモニウム基を有する臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)などがあります。

さらに、イオン性界面活性剤は、SDSやCTABとして炭化水素(アルキル)直鎖、またはデオキシコール酸ナトリウムのような複雑で硬いステロイド構造のいずれかを含んでいます。

イオン性界面活性剤では、イオンによる反発力が存在するためミセルを形成しにくく、ミセルサイズは、側鎖の疎水性引力の効果とイオン基の反発力の組合せによって決まります。また、頭部基の電荷が対イオンの濃度増加により中和されると大きくなる可能性があります。さらに、アルキル鎖の長さの増加によっても大きくなります。

媒体のイオン強度の増加によってCMCは低下しますが、温度に対しては比較的独立しているという特徴があります。

陰イオン性界面活性剤のひとつである胆汁酸塩は、短いアルキル鎖の末端に存在する陰イオン性のカルボキシル基に加えて、ステロイド構造上にヒドロキシル基も有しています。そのため、明確に定義された極性頭部基はありません。その代わりに、豆形の分子に極性面と無極性面があります。

胆汁酸塩は小さな凝集体を形成し、カルボキシル基末端でタウリンやグリシンと結合できます。胆汁酸塩で形成されたミセルは、硬い構造を持つため球状にはならず腎臓形になります。胆汁酸塩のミセルサイズは、イオン性界面活性剤の挙動と同様に対イオン濃度の影響を受けます。

膜の可溶化やタンパク質-タンパク質相互作用の破壊に関して、ジヒドロキシ胆汁酸塩およびデオキシコール酸は、トリヒドロキシ胆汁酸塩と比較して高い有効性を示します。トリヒドロキシ胆汁酸塩は効果が穏やかで、透析による除去に適しています。

非イオン性界面活性剤

非イオン性界面活性剤は、次の2つのうちいずれかから構成される非荷電の親水性頭部基を含有しています。

  1. BRIJおよびTRITON®界面活性剤に存在するようなポリオキシエチレン部分
  2. オクチルグルコシドやドデシルマルトシドに見られるようなグリコシド基

一般的に非イオン性界面活性剤は、タンパク質-タンパク質相互作用よりも脂質-脂質相互作用や脂質-タンパク質相互作用の破壊に適しています。そのため、非変性とみなされ、生物学的に活性の膜タンパク質の単離に広く使用されます。また、CMCはイオン強度の増強の影響をあまり受けませんが、温度の上昇により実質的に上昇します。

では、この2つの特徴について具体的な界面活性剤を例に交えながらみていきましょう。

  1. ポリオキシエチレン頭部基を有する界面活性剤

    ポリオキシエチレン鎖はランダムコイルを形成し、結果としてミセルの疎水性コアから遠く離れて存在します。ポリオキシエチレン鎖が短い界面活性剤は水中で凝集し、室温で粘性溶液を形成する一方、ポリオキシエチレン鎖が長い界面活性剤は凝集しません。

    ポリオキシエチレン頭部基を有する界面活性剤は、次の2つのうちいずれかを含有している可能性があり、TRITON®X-100およびNP-40界面活性剤は後者に含まれます。

    ・一般式CnH2n+1(OCH2CH2)xOHで表されるアルキルポリエチレンエーテル
    ・アルキル鎖とエーテル基の間にフェニル環

    芳香環を含む界面活性剤は紫外線領域の光を吸収し、280nmでのタンパク質の分光光度測定に干渉する可能性があります。これらの界面活性剤の水素化バージョンも利用可能です。水素化バージョンでは、芳香環が還元され、280nmの吸光度が比較的低くなっています。

  2. グリコシド基を有する界面活性剤

    アルキルグリコシドは、以下に示す3つの理由から、膜タンパク質の単離における非イオン性界面活性剤として人気が出てきました。

    ・均一の組成を示す。
    ・炭化水素鎖(環状または直鎖)と極性の糖類の種々の組合せを含有するアルキルグリコシドの複数の変異体が、純粋な形で容易に合成できる。
    ・グルコース、マルトースまたはスクロースのいずれかの頭部基に、種々のアルキル鎖が結合したアルキルグリコシドの物理化学的特性のわずかな差が、膜タンパク質の選択的な可溶化に利用できる。

両性イオン性界面活性剤

両性イオン性界面活性剤は、イオン性の界面活性剤と非イオン性界面活性剤の両方の特性を併せ持つ独自の界面活性剤です。代表的な両性イオン性界面活性剤として、CHAPSやZWITTERGENT界面活性剤3-Xシリーズなどがあります。

非イオン性界面活性剤と同じく、正味の電荷を持ちません。また、伝導度や電気泳動移動度を示さず、イオン交換樹脂に結合しません。しかし、イオン性界面活性剤と同様に、タンパク質-タンパク質相互作用の破壊に有効です。

非界面活性剤NDSB

NDSBはタンパク質の凝集を防ぎ、安定性を向上させる化合物です。開発当初は未変性タンパク質の等電点電気泳動実験で用いられてきましたが、近年では可溶化・結晶化・安定化など、広範囲の分野で有用な試薬として知られています。

両性イオン性界面活性剤であるZwittergent界面活性剤と同じく、NDSBはスルフォベタイン親水性頭部基を有します。しかし、Zwittergent界面活性剤とは対照的に、NDSBは疎水基が短く疎水的結合力が乏しいため、ミセルを形成しません。また、広いpH範囲にわたって両イオン性を示し、透析により容易に除去できるという長所があります。また、280nmで優位の吸光を示しません。

NDSBは、膜タンパク質の単離および核タンパク質や好塩性タンパク質の精製など、複数の適用例で有用であることが立証されています。これは、短い疎水基からの寄与とスルフォベタイン基の電荷中和能が組み合わさった結果、高い膜タンパク質収率が得られたと考えられます。また、NDSBは化学的および熱的に変性したタンパク質の再生やリフォールディングにも使用されています。

以上、各界面活性剤およびNDSBの性質について紹介しました。実験の目的や下流のアプリケーションに合わせて界面活性剤を選択するために、それぞれの特性を理解しておきましょう。メルクのWEBサイトでは、界面活性剤の特徴や製品情報を豊富に掲載していますので、そちらもぜひ参考にしてみてください。

NDSBについての参考文献:
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Blisnick, T., et al. 1998 . Eur. J. Biochem. 252, 537.
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