免疫組織化学、免疫細胞化学における染色と検出手法

免疫組織化学、免疫細胞化学における染色と検出手法

免疫組織化学/免疫細胞化学の染色と検出

免疫組織化学(IHC)/免疫細胞化学(ICC)とは、特異的な抗体‐抗原相互作用を利用し、組織や細胞中の抗原(例:タンパク質)を検出する手法です。それぞれ組織と細胞におけるバイオマーカーの分布や局在、差次的に発現しているタンパク質について理解するための基礎研究において、広範に用いられています。

IHC/ICCは主に次のようなステップで進められます。

  • 標本調製
  • 抗原賦活化
  • 抗体染色
  • 抗体検出

この記事では特に抗体染色と抗体検出について、一般的に用いられている手法をいくつか紹介。さらに、組織切片を二重に染色することによって抗原の位置を目立たせる対比染色という手法についても解説します。

直接標識法と間接標識法による染色

抗体の特異性を利用し、組織切片や培養細胞におけるタンパク質やその他対象となる標的の局在を視覚化するには、いくつかの方法があります。

直接標識法では、酵素または蛍光プローブで直接標識した一次抗体を用います。間接標識法は、一次抗体と二次抗体を使い、2ステップの工程で行われます。二次抗体は、一次抗体の軽鎖または重鎖(またはその両方)に特異的で、酵素か蛍光プローブで標識されています。

直接または間接標識法によって生じるシグナルは、ビオチン標識した一次または二次抗体を用いて増強または増幅することができます。ビオチン化抗体は、酵素または蛍光プローブに結合した複数のストレプトアビジンタンパク質に結合します。

酵素標識した免疫複合体の視覚化には、酵素によって色素原を触媒し、有色の色素を生じさせるステップが付け加える必要があります。ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)やアルカリホスファターゼ(AP)は典型的な酵素標識ですが、これらに匹敵する色素原も増え続けています。

一次抗体は、酵素(HRPやAPなど)または蛍光プローブ(FITCやローダミン)で直接標識される場合も、標識されない場合もあります。標識しない場合には、標識した二次抗体か、より複雑な検出系が必要です。二次抗体を用いる場合には、一次抗体を産生した動物の免疫グロブリンに対する抗体を用いなければなりません。例えば、一次抗体がウサギで産生されたものであれば、二次抗体はヤギ抗ウサギ抗体などになります。一次抗体と二次抗体のいずれに対しても、バッチ(製造ロット)ごとに至適な力価を判定しなければなりません。

また、各抗体に対し、使用する実験系において適切に機能する希釈率を最適化する必要があります。同一の実験系が、すべての抗体に対して機能するわけではありません。希釈系列の開始点については製品データシートをガイドとして利用するとよいでしょう。至適な抗体希釈率とは、特異的な抗原の染色が最も強力でありながら、非特異的なバックグラウンドが最も低い希釈率です。その他のコントロール実験と同様に、1回に変更する実験変数は1つのみにするようにしましょう。一次抗体の至適な力価/希釈率を判定した後、二次抗体の希釈率を最適化します。

組織切片の染色では、通常25〜50 μLの希釈した抗体を加えてインキュベーションします。このとき、インキュベーション中に乾燥しないよう組織を完全に覆うため、十分な容量を使用しなければなりません。インキュベーション時間は、37℃で30〜90分、室温で1〜6時間、4℃ではオーバーナイトです。インキュベーション時間は、それぞれの抗体/抗原の組み合わせについて経験的に最適化する必要があります。

抗体検出の方法

最も一般的に用いられている検出方法は、「発色または酵素による検出方法」と「蛍光に基づく検出方法」の2種類です。

電子顕微鏡の出現に伴い、大型の金粒子を含有する抗体を用いた検出も頻繁に行われています。金粒子で標識された抗体は、光学顕微鏡レベルでも視覚化することができますが、現在、電子顕微鏡法以外で使用されることはほとんどありません。

光学顕微鏡で一般的な抗体の検出方法を詳しくみていきましょう。

  • 発色または酵素による検出方法
    酵素によって変換される基質を選択する際には、沈降する生成物を生じる基質を選択しましょう。一般的に使用されている基質の一覧を以下に示します。

  • 蛍光に基づく検出方法
    UV光を用いた検出を目的とし、蛍光を発する分子で抗体を標識することができます。例としては、フルオレセイン、ローダミン、Texas Red®、Cy3、Cy5などがあります。蛍光色素の選択肢は、利用可能な顕微鏡のフィルターセットによって限定されます。ほとんどのフィルターセットには、ローダミンやフルオレセインが最も適しています。Texas Red®も、ローダミンフィルターセットで使用可能な場合があります。

免疫組織化学における対比染色

基礎研究分野では過去数十年の間に、組織化学染色は免疫染色法にほとんど置き換わっています(診療においては組織化学染色法がまだ優勢です)。しかし、組織の顕微鏡検査においては、利用可能な色の数が限られているという点が主な欠点となっています。

この欠点を克服するために、組織化学的対比染色法が用いられるようになりました。組織切片を二重に、場合によっては三重にも染色することによって、いくつもの利点が得られ、組織形態や存在する抗原の細胞内位置の検討や同定が可能となります。1つめの染色を対比させて目立たせるために、2つ目の染色剤を用います。このために、実験デザインに合わせて色素原(例:ヘマトキシリンやヌクレアファストレッド)と蛍光色素(例:DAPIやファロイジン)の両方が一般的に用いられています。

ヘマトキシリンは、核酸染色のために最も一般的に用いられている色素の1つです。酸化ヘマトキシリンをアルミニウムイオンと組み合わせると、活性型の金属‐色素複合体が形成され、ヒストンのリジン残基に結合するため、哺乳類細胞の核が青色に染まります。一方、ヌクレアファストレッドは核酸を染色し、ヘマトキシリンよりもかなり迅速に作用します。DAPIやHoechstなどの蛍光染色は、DNAの間に侵入し、紫外線で励起すると強い青色を発します。

以上、免疫組織化学と免疫細胞化学における抗体染色と検出の手法および、対比染色について解説しました。IHC/ICCは汎用性が高く、生物学的な基礎研究のみならず、病理診断の現場や医薬品開発など広く活用されている技術です。これを機に仕組みや方法をよく確認しておきましょう。