免疫組織化学、免疫細胞化学のための標本調製の進め方

免疫組織化学、免疫細胞化学のための標本調製の進め方

免疫組織化学/免疫細胞化学と標本調製

免疫組織化学(IHC)とは、特異的な抗体‐抗原相互作用を利用し、組織切片の細胞から抗原(例:タンパク質)を検出する工程を指します。IHCという名称は、抗体に関連する単語である「immuno(免疫)」と、組織化学を意味する「histochemistry」が語源です。

一方、免疫細胞化学(ICC)は、細胞を意味する「cyto」という語に由来しており、組織ではなく、培養細胞か単離細胞を用いて行われます。IHCとICCは、それぞれ組織と細胞におけるバイオマーカーの分布や局在、差次的に発現しているタンパク質について理解するための基礎研究で、広く用いられています。

IHC/ICCの手順は主に「標本調整」「抗原賦活化」「抗体染色」「抗体検出」の4ステップに分けられます。標本調製のステップでは、抗体インキュベーションや組織染色前に行う準備として、以下のような作業を行います。

  • 固定
  • 包理
  • 切片化

これらのステップとその次の抗原賦活化のステップは、有用な結果を得るために慎重に実施しなければなりません。染色を良好に可視化・解釈するためには、使用する組織切片の品質が重要です。技術にばらつきがあると、染色結果に多大な影響が及ぶ恐れがあるため、丁寧に行いましょう。

この記事では、標本調整における上記3つの作業について順番に解説していきます。

組織を「固定」して保存する

固定は、さらなる処理を可能にするために行う化学的または物理的工程で、生物組織を一定期間自然の状態に最も近い状態で保護・保存(すなわち「固定」)することを目的としています。

固定に使用する試薬「固定液」は、タンパク質分解を止め、構造的安定性を強化し、微生物による腐敗を阻害するという3つの方法によって上記の目的を達成します。主な化学的固定液は、アルデヒド、アルコール、水銀、酸化剤、ピクリン酸です。物理的固定は組織を冷凍することを意味することが多く、冷凍した場合は、その後の処理の前にいずれかの時点で化学的固定を行います。

固定にあたっては、組織ブロック、組織切片、培養細胞、またはスメアを固定液に浸漬するか、動物の個体全体を研究する場合には、動物の循環器系を介して固定液を還流します。培養細胞の場合、細胞標本を浸漬または風乾します。

固定液は細胞や組織を安定化し、その後の処理や染色手順による酷烈な環境から保護します。固定液の作用の仕方には、架橋の形成(例:グルタルアルデヒドやホルマリンなどのアルデヒド)、凝固によるタンパク質変性(例:アセトンおよびメタノール)、またはこれらを組み合わせたものなど、いくつかの種類があります。

固定の強度や時間は、抗原や細胞構造を保持し、エピトープの遮蔽を最小にするために最適化する必要があります。固定の要件は、組織によって大きく異なる場合があります。免疫学的研究では、標本や標的抗原の適切性を保証するために、固定が特に不可避となっています。組織によってタンパク質含有量や立体配置が異なるため、著しい固定を行わない場合にその構造を保持する能力も異なります。標本の調製が不適切であると、組織や細胞の抗原の標識が阻止または妨害される恐れがあるので注意しましょう。

残念ながら、組織構造の保存に最適な方法は、タンパク質を変化させることによって作用するため、一部のエピトープが遮蔽され、望ましい標的タンパク質の検出が妨げられてしまうこともあります。失敗した場合には、特異的染色を「あきらめる」前に、別の固定液や抗原賦活化方法を用いて実験を行うことが重要です。

「包理」して構造をサポートする

免疫染色法で用いられるサンプルはほとんどの場合、優れた形態学的細部や解像度を得ることが可能なパラフィンで包埋されます。一般的に用いられている「パラフィン」は、典型的にはパラフィンワックスと樹脂の混合物を指します。加熱すると液状になり、キシレンで溶解すると組織に浸潤し、比較的迅速に再び固体になり、切片化の際に最大の構造的サポートが得られるため、パラフィンは優れた包埋剤といえます。

通常、小さな組織ブロック(10×10×3 mm)の場合は最長24時間固定することができます。パラフィン切片で最も一般的に使用される固定液は、ホルマリンをベースとするものです。組織におけるこれらの固定液の認容性は高く、浸透も良好です。

ブロックを透徹し、パラフィンで包埋した後、5〜10μm厚の切片をリボン状に切断し、スライドグラスに載せます。載せた後は免疫染色が必要となるまで、スライドを長期間保存することができます。免疫染色を行う時には、組織からパラフィンを除去し、水をベースとするバッファーや抗体が浸透できるようにしなければなりません。

包理した組織を「切片化」する

切片化は、使用した包埋剤(パラフィンまたは水性の凍結剤)にの種類よって、ミクロトームまたはクライオスタットのいずれかで実施されます。ミクロトームは通常、パラフィン包埋した組織ブロックに対して室温で使用し、1〜60μmの超薄切片が得られます。クライオスタットは、基本的にはミクロトームが温度を調節したキャビネットに入ったもので、切片化に用いるすべての器具や組織ブロックを-10〜-30℃に保ちます。至適な切片の厚さは約5μmで、この程度だと細胞の重なりが最小になることが多いようです。

以上、免疫組織化学と免疫細胞化学における標本調整の手順について解説しました。組織の処理が少ないほど、つまり固定が短時間で、包埋が緩く、処理時間が短いほど、この後に続く抗原賦活化の必要性が少なくなります。使用する細胞や組織にあった適切な方法で調整を行えるよう、条件を検討するとよいでしょう。

同じカテゴリの人気記事ランキング

下記フォームでは、M-hub(エムハブ)に対してのご意見、今後読んでみたい記事等のご要望を受け付けています。
メルクの各種キャンペーン、製品サポート、ご注文等に関するお問い合わせは下記リンク先にてお願いします。

メルクサポート情報・お問い合わせ

*入力必須

    お名前 *

    メールアドレス *

    電話番号 *

    勤務先・所属先 *

    お問い合わせ/記事リクエスト内容 *

    このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleのプライバシーポリシー利用規約が適用されます。