環境に優しい超純水・純水製造装置のイノベーション

研究現場に欠かせない超純水・純水製造装置。その中でもメルクは環境に配慮した製品の開発に取り組んできました。節水・節電による資源の効率的な活用や水銀フリー装置の開発、エコパッケージ、さらには遠隔システムサポートにより、環境負荷の軽減だけでなくコスト削減にも貢献しています。未来の科学を支える、環境にもラボにも優しい超純水・純水製造装置をご提案します。
SDGsなサイエンスのために、どんな装置が必要なのか?
サイエンスの現場において、超純水や純水は必要不可欠な存在です。しかし、ラボで超純水・純水を製造するには多くの水、電気、そして消耗品が必要となり、これらが環境に与える負荷は持続可能なサイエンスを目指す中で大きな課題となっています。メルクは、イノベーションの力を通じて社会に長期的に価値をもたらすことを目標とし、環境負荷を軽減する超純水・純水製造装置の開発に積極的に取り組んできました。
このような中で開発されたメルクの最新世代のMilli-QⓇ超純水・純水製造装置は、電気・水・プラスチックの使用量を削減した設計となっており、水銀フリーの環境に配慮した製品となっております(詳細は後述参照)。このような功績が評価され、超純水・純水製造装置「Milli-QⓇ IQ 7003/05/10/15」は、2022年のScientists’ Choice Awardのサスティナブル製品デザイン部門において、SelectScienceⓇのSustainable Product of the Yearに選ばれました。
圧倒的な節水・節電効率!
環境負荷を軽減させるためには、資源の効率的な利用が鍵となります。高流量方式の純水製造装置である純水製造装置「Milli-QⓇ HX 7000シリーズ」を例に見てみましょう(図1)。1時間あたり40 Lの純水を製造する場合、年間排水量が他社製品では384,000 Lに達するのに対し、「Milli-QⓇ HX 7040」ではわずか110,400 Lであり、年間で82,080円のコスト削減を実現します。さらに、1時間あたり120 Lの純水を製造する装置で比較すると、他社製品では年間排水量が1,152,000 Lであるのに対し、「Milli-QⓇ HX 7120」ではわずか295,200 Lで、これによって年間257,040円ものコスト削減が可能です。また、この装置の使用によって年間171.4 kgのCO2排出を削減することができます。

図1. Milli-QⓇ HX 7000シリーズの節水効率(メルク調べ)
また、節水だけでなく電力消費の削減にも力を入れています。メルクの旧製品である「Milli-QⓇ Advantage A10」と比較して、最新型の「Milli-QⓇ IQ 7000 」では最大35%の節電を実現しました。さらに、製品ライフサイクル全体では前世代の装置と比較して、最大2000kWhの電力を削減することが可能です。
世界初!すべての工程で完全水銀不使用の超純水・純水装置
水銀は、環境や健康に深刻な影響を与える危険な化学物質です。過去には水俣病をはじめとした水銀中毒事件が世界各地で発生し、多くの人が犠牲となりました。このような被害を繰り返さないために、2013年に水銀の採掘・貿易・製造・保管・廃棄を規制する国際条約である、「水俣条約」が締結されました。これを受けて、日本国内でも「水銀による環境の汚染の防止に関する法律」が施行され、水銀製品を廃棄する際には厳格な規制が設けられています。こうした流れを背景に、研究機関でも水銀フリー製品の需要が高まっています。メルクが実施した企業や研究所に対するアンケートでは、64%の機関において物品購入時に水銀含有に関する規定が設けられているという結果になりました(図2)。

図2. 所属機関における水銀含有製品の規定に関するアンケート結果(2024年メルク調べ)
超純水の精製には、有機物酸化分解用と殺菌用の2種類の紫外線(UV)ランプが必要です。従来、有機物酸化分解に用いられてきた低圧水銀ランプは、水銀を励起させて、基底状態に戻るときに発生する紫外線を利用するものでした。メルクはこれに代わるキセノンを利用した水銀フリーランプを開発しました。この水銀フリーランプは低圧水銀ランプと比較して有機物分解効率や最大発光効率の点でも優秀です(図3)。

図3. 低圧水銀ランプと水銀フリーランプの比較
さらに、殺菌用UVランプにおいても革新が進みました。従来の超純水製造装置では、細菌のDNAを破壊する260 nmの波長に近い、254 nmの波長のUVを効率よく発光する水銀を用いたUVランプが用いられてきました。これに代わるものとして、メルクはUV-Cと呼ばれる265 nmのピーク波長を含むUV LEDに注目しました(図4)。これによって、純水から超純水に至るまですべての工程で水銀を使わない、世界初(メルク調べ)の完全水銀フリー超純水製造装置が完成しました。

図4. 水銀フリー殺菌用UVランプの波長特性と殺菌効率
従来の水銀を使用した超純水製造装置を10年間使用した場合、最大375 mgの水銀を廃棄する必要がありました。しかしメルクの水銀フリーの超純水製造装置であれば、10年間使用しても水銀は発生しません。そのため、廃棄手続きや廃棄料金が不要となり、コスト削減に加えて環境と健康の両方を守ることにつながります。
廃棄物削減・エコパッケージ・遠隔システムサポートでラボにも環境にも優しい選択を
従来型の純水処理に使われる連続イオン交換(EDI)は、内部に炭酸カルシウムが固着しやすく、水質の低下を防ぐためカートリッジ交換が必要でした。一方、メルクのElixⓇ EDIテクノロジーでは、イオン交換樹脂と粒状カーボンを活用することで炭酸カルシウムの固着を防ぐことができます。カートリッジの調整や樹脂交換も不要なため廃棄物を削減できるだけでなく、長期間にわたり安定した純水の製造が可能です。
また、古くなったカートリッジの廃棄する際に、水が残っていることがあり、運搬コストの増加や廃棄燃焼効率の低下が懸念されておりました。それを解消するために、ドレインキャップをカートリッジに装着することでカートリッジ内の残った水を捨てることができるようになりました。
詳しい動画は以下よりご覧いただけます。
さらに、メルクでは「SMASHパッケージプラン」として、製品包装をよりサスティナブルな形に進化させています。例えば、梱包材をForest Stewardship CouncilⓇ(FSC)認証の段ボールに変更し、装置類の緩衝材はバイオベースのポリエチレンやリサイクル材比率50%以上のポリエチレンを採用しました。このようなエコパッケージを用いることで、包装面でも環境負荷の軽減に取り組んでいます。
また、メルクは製品の使用後の管理や効率的な運用を支援するため、遠隔システムサポートであるMyMilli-Q™ Remote Careを提供しています。このサービスでは、装置をインターネットに接続し、装置の状態や水質データにリアルタイムでアクセス可能です(図5)。さらに、メンテナンスアラートや機器異常はメールで通知が届くため、状態把握や管理の手間を削減できます。トラブル時にはMilli-SAT™認定技術員が装置の遠隔診断を行い、迅速な修理作業が可能です。これらの機能によって、ラボ運営の効率化に貢献します。

図5. MyMilli-Q™ Remote Careによる遠隔サポート
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メルクでは、製品ごとにデザイン・フォー・サスティナビリティ(DfS)スコアカードを作成しています。このスコアカードによって、環境に配慮した製品であることを認識でき、SDGs対策の一助にもなりますので、ぜひ各製品のページからダウンロードしてみてください。
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