【初めての論文投稿⑩】投稿後からアクセプトまで
投稿後からアクセプトまでにやるべきこと
数々の難関をクリアし無事に論文を投稿し終えたら、ほっと一息。しかし、まだゴールではありません。投稿した後には、いったいどんな作業が待っているのでしょうか。この記事では、投稿後からアクセプトされるまでの過程、さらにリバイス(修正)を行うときの注意点について解説します。
論文がリジェクト(却下)された場合
せっかく苦労して投稿した論文がリジェクトされてしまった場合、残念ですが、まずはその結果をしっかりと受け止めましょう。
リジェクトになる場合は大きく分けて、以下の2パターンに分けられます。どちらのパターンだったかで、今後の方針が変わってきます。これまでの労力を無駄にしないよう、リジェクトの原因を知り、ぜひ次に生かしてください。
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査読者にまわされず、エディターの判断でリジェクトされた場合
ショックな結果ではありますが、エディターのコメントを読んで、リジェクトされた理由を理解しましょう。一番多いのが、新規性が足りないという理由です。ジャーナルが望むインパクトに届かなかった場合は、投稿先を再考しましょう。
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査読者にまわされてから、エディターがリジェクトと判断した場合
査読者にはまわされたけれども、査読者のコメントを見て、これは修正できないとエディターが判断し、リジェクトされたパターンです。この場合は研究内容に踏み込んだ査読者のコメントが付与されますので、これを生かし、論文をさらにブラッシュアップさせることができます。忙しい中、ボランティアで査読をしてくれた査読者の労力を無駄にせず、コメントを真摯に受け止めて、他のジャーナルに再投稿するときの役に立ててください。
リバイス(修正)の指示が返ってきた場合
エディターからの返事がリジェクトではなくリバイスだった場合、査読者とエディターを納得させる修正ができれば、アクセプトされる可能性のあることを意味します。まずは第一関門突破です。
しかし、ここで気を緩めることがないように。ここからが本当の戦いです。査読者が付けたコメント全てに一つひとつ答えていかなくてはなりません。また、相手を表面的に説得しようとしたり言い訳などで議論を回避しようとするのではなく、査読者が納得する答えを用意します。追加実験が必要になることもよくあります。
トップジャーナルの場合は7人くらいの査読者がそれぞれ10個以上コメントを付けることもあり、対応するのはかなり大変です。これを通り抜けられればアクセプトというゴールが待っていますので、知恵を絞ってがんばりましょう。
リバイス時の注意点
では、リバイスのときには、どのようなことに気をつけたらよいでしょうか。基本的には査読者の指示に従い、論文の内容を読者に伝わりやすいように改善します。
アクセプトを目指すのであれば、どれほどささいなことであっても、コメントにはすべて返信します。研究内容を熟知している著者とは違って、通常、査読者は客観的な視点から文章だけで論文を判断します。その際、著者が見落としている矛盾を発見することもあるでしょう。そうしたコメントは真摯に受け止め、すべて再検討しましょう。もちろん正当な理由があれば、反論しても構いません。サイエンティストとして相手を納得させることができればよいのです。
たとえ査読者の誤読ではないかと感じたときも、自分たちの書き方が悪かった可能性を考え、文章を見直す方が建設的です。コメントの返信も「あなたの誤読だ」と突っぱねるのではなく、「このような意図で書きましたが誤解させる書き方だったので、このように直しました」というような表現で返信すれば、査読者も納得し、論文もより伝わりやすいものになるでしょう。
大切なのは、査読者の質問の意図を理解することです。例えば、「理由」を聞かれているのに「手法」を答えたり、「how(どうやって)」で聞かれているのに「what(何)」で答えていたりしては、査読者に「この著者は私のコメントを理解していない」と思われてしまいます。ぜひ、査読者の意図を丁寧に読み取ってください。
修正後は原稿を念入りにチェック
査読者の指摘に従って原稿を修正した後は、念入りに全体を読み返してください。特にMajor revisionを行なった場合は、データの一部を表から削ったのに本文に説明が残ったままだったり、結果の記述を変えたのにディスカッションがそれに対応していなかったり、つながりがおかしくなっていたりなど、あちこちに不備が発生しているはずです。
リバイスした内容は、エディターへのレターに続けて文章で記述していきます。査読者のコメントを貼り付け、それぞれにどのように対応したのかという説明を加えていくのです。その際、直した箇所が確認できるように、「〇ページの〇行目に挿入した」と変更箇所を示します。答え方が悪いとこちらの意図が伝わらないこともありますので、査読者への返信は指導教員や先輩研究者に一度見て確認してもらったほうがよいでしょう。
こちらの答えに査読者が納得できない場合は、2回目、3回目とリバイスが重なることもあります。真摯に答えていれば、回を重ねるごとにコメントの量は少なくなるはずですが、面倒くさがって手を抜いてしまうと査読者の心証が悪くなり、リジェクトされることもあるので気をつけてください。
アクセプト後にやらなくてはいけないこと
アクセプトの知らせほど、うれしいことはありません。数々の苦労を経てようやくゴールにたどり着いたわけです。しかし、肩の荷をすべて降ろすのは、もう少しだけ待ってください。
アクセプト後は、編集部との細かなやりとりが発生します。まずは、アクセプトされたという知らせと何をどうすればよいかという指示が届きますので、それに従って必要な書類を用意し、電子メールで送ったり指定の場所にアップロードしたりします。やり方がわからなければ、メールや電話で聞くこともあります。
投稿論文の数が多いトップジャーナルほど、アクセプト後にやることが多くあります。解像度の高い図を改めて提出したり、著作権に関する書類を用意したり、校正作業を行ったり、アクセプト後に必要な作業はジャーナルごとに違います。そろそろ通りそうだという段階に来たら、投稿規定をもう一度見直し、アクセプト後にやるべきことを確認しておきましょう。
校正に求められることはジャーナルによる
アクセプトが決定すると、ほとんどのジャーナルで出版のための校正作業が発生します。ワードファイルで提出していた原稿が出版用のレイアウトに組み直され、エディターの修正提案が付与された状態で送られてきます。
エディターからの校正の指摘は誤字脱字だけでなく、内容に踏み込んだものもあります。査読者はいいと言っても、エディターから指摘された場合は、やはり対応しなくてはいけません。指導教員とよく相談しながら修正を行います。
また、指摘箇所だけでなく改めて全体を詳細に見直すことも必要です。今までは不備がなくても、ワードファイルからPDFバージョンになったときにどこかが欠けてしまったり、編集部が直したところに誤字が発生していたりすることもあるからです。著者として責任を持って仕上げていきましょう。
細々とした校正作業は、慣れないうちは大変です。特にトップジャーナルの場合は、膨大な校正作業が発生するケースが多く、校正期間も短く設定されているため、寝る暇がないほど忙しくなることも。
ジャーナルによっては、リバイスの最終原稿がそのままウェブに掲載される場合があります。雑誌に掲載されるより先に、電子版として出版されるのです。このタイプの雑誌に投稿する場合は、あとで校正できるからと油断せず、リバイスの段階で出版用のクオリティにまで高めておく必要があるでしょう。
掲載は次の論文執筆の始まり
すべての作業が終わったら、あとは掲載されるのを待つだけです。プレプリント版としてウェブに掲載されたときにも喜びはありますが、やはり雑誌の一部としてページに組み込まれた自分の論文を眺めるのは格別でしょう。
論文投稿は終わっても、研究者人生は続きます。むしろ、これからが本当のスタートです。次の投稿に向けて、実験や執筆準備をがんばってください。次のチャレンジでは、今回の経験を生かして、もっとよい論文を書くことができるでしょう。
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