【初めての論文投稿⑨】トップジャーナルに投稿する

【初めての論文投稿⑨】トップジャーナルに投稿する

投稿のチャンスを逃さないために

いつかは『Nature』、『Science』、『Cell』、『NEJM』、『Lancet』などに投稿してアクセプトされたいと願う人は多いはず。研究歴が浅いからといって、トップジャーナルに投稿することが「夢のまた夢」というわけではありません。実験をしているうちに思わぬ発見をして、投稿にチャレンジする機会が訪れるかもしれないからです。 そうした時に備え、トップジャーナルならではの注意点を頭に入れておきましょう。

どのジャーナルにも共通することではありますが、とりわけトップジャーナルには、投稿時の書類が大量に必要だったり、リバイスに応えるまでの期間が短かったり、プルーフ作業が膨大だったりする傾向があります。それでは以下に詳しく見ていきます。

ジャーナルのAims and Scopeと文章の傾向を把握する

自分たちの発見した結果に新規性があり、重要で意義のある発見だと考えられるのなら、ぜひトップジャーナルへの投稿を検討してみてください。

ジャーナルによって論文に求める内容は少しずつ違うため、まずは「Aims and Scope」をよく読み、自分たちの主張や研究内容に合った投稿先を選びましょう。『Nature』でリジェクトされた論文を、書き直して『Science』用に投稿したらリバイスを経てアクセプトされたという話や、その逆の話もよく耳にします。合わないところに投稿してリジェクトされたら、書き直しを行っている間にライバルに出し抜かれてしまうかもしれません。特にトップジャーナルでは執筆や投稿時の書類の用意の手間がかかるため慎重に吟味しましょう。

 Aims and Scopeに合っているか迷うときは、Pre-submission inquiries(【初めての論文投稿③】投稿するジャーナルの選び方)を行って、自分の論文に見込みがありそうか事前に問い合わせることもおすすめします。

本文を書くときは、ジャーナルの好む文章の傾向も知っておく必要があります。トップジャーナルには毎日大量の論文が送られてきますので、エディターが「これはうちのジャーナルの書き方ではない」と判断したら内容を吟味する前にリジェクトになる可能性もあります。ストーリー性を重視した文章を求められるのか、客観的な事実を列挙していくべきなのか、実験の倫理規定について既定の記載事項があるのか、など掲載論文をたくさん読み、書き方を掴んでおきましょう。

言いたいことは絞り、新規性にフォーカスする

トップジャーナルにはさまざまな分野の研究論文が掲載され、読者の専門分野も多様です。論文を書くときは、分野違いの人にも研究の意義と面白さを理解してもらうことを目指してください。そのためには、「読者」視点で書くことが必要です。自分の研究の記録ではなく、読者に伝えるための文章を目指しましょう。

初心者がよくやってしまいがちなのが、大量のデータをあれもこれもと論文にすべて詰めこんでしまうことです。多くのデータを見せたい気持ちはわかりますが、情報が多すぎると論文の主張を読み取りづらくなってしまいます。新規の発見がどういうものかを伝えるのが第一優先事項です。他のデータはだらだら書かず、取捨選択をしていきましょう。広く浅く複数の実験を紹介するよりも、1つの大きな発見を掘り下げることをおすすめします。

文章だけでなく図も重要です。【初めての論文投稿⑤】伝わる図表の作り方を参照し、実験デザインや伝えたい結果が直感的に伝わる図表を作成しましょう。

動物実験のガイドラインをあらかじめチェックしておく

動物実験は、3Rの法則(苦痛の軽減 Refinement/使用数の削減 Reduction/代替法の活用 Replacement)に基づいて行われていますが、研究に動物を使用することに対する批判の目は、動物愛護の観点から世界的にますます厳しくなっています。

多くのトップジャーナルでは、認可を与えた委員会の名称や動物の性別や種類、飼育環境、安楽死の方法などをより詳しく論文に記載することが求められます。たとえば『Nature』はARRIVEガイドラインに沿っていることを推奨しています。

ARRIVEは実験の透明性を保証し、再現性を高めることを目的に作られたもので、動物の数や動物種、種の系統、性別、遺伝的背景、ケージや飼育法の詳細、実験法や統計法および分析方法などの20項目のチェックリストで構成されています。

日本でも動物実験が必要なときは専用の講習を受け、事前に計画書を提出して実験の許可を得ますが、国際的なガイドラインを知らずに実験を行っていた場合、論文を投稿するときになって条件が合わずに慌てることになるかもしれません。一般的に、日本は動物の権利に関する取り組みは欧米に比べて遅れています。トップジャーナルへの投稿を視野に入れるのなら、実験計画段階で海外のガイドラインも確認し、より厳格な条件で計画を立てるとよいでしょう。

カバーレターに何を書くか

カバーレターには、自分の研究がジャーナルの掲載にふさわしい理由を簡潔に説得力のある根拠を挙げて書きます。研究の新規性や面白さ、雑誌に載せる意義などを、忙しいエディターにもスムーズに伝わるように、わかりやすく記載しましょう。

Pre-submission inquiriesで投稿を勧めてもらった場合は、その旨をカバーレターに書いておくと強力なアピールになります。

さらに、カバーレターでは研究の内容にも触れますが、論文の文章をそのままコピーすることはやめましょう。実験内容や研究の意義は論文中に書いているはずなので、重複して長々と書かないように注意しましょう。逆に、今回の結果が世界で初めての発見であるという主張は、カバーレターでアピールすることをおすすめします。

細かい投稿規定をすべてクリアする

投稿時の書類の量が多いのもトップジャーナルの特徴です。COIやデータシェアリングステイトメント(【初めての論文投稿⑧】オンライン投稿~準備から投稿完了まで~)も細かく聞かれます。ジャーナル独自の提出書類が必要な場合もあります。

図のガイドラインも細かく決められています。外部のイラストレーターに外注するときは、ジャーナルのガイドラインを把握して伝えましょう。せっかく見た目がきれいでも、投稿規定に合っていなければアクセプト後に作り直しになってしまいます。

大量の論文が送られてくるトップジャーナルでは、投稿時にはレビューのしやすさを優先した形式での提出が求められます。そのため、投稿時に細かく規定違反を問われることはありませんが、いざアクセプトされたときに大きな修正が必要になると、指定された校正期間に間に合わないかもしれません。やはり投稿前に規定をしっかり読んでおくべきでしょう。

これだけがんばって書類を作っても、リジェクトされてしまったら膨大な労力が無駄になってしまいます。だからこそ、Pre-submission inquriesを行うことをおすすめします。短い文章の中でエディターに研究の面白さを伝えられてこそ、トップジャーナルに掲載されるにふさわしい論文だと言えるでしょう。

リバイスが返ってきたら、あきらめずに食らいつく

もし、あなたの論文がエディターでリジェクトされずに、査読者の手に渡ったとしたら、それはとても喜ばしいことです。トップジャーナルのリジェクト率は90%以上とも言われます。つまり、最も難しい第一関門を突破したわけです。

リバイスでは複数人の査読者による手厳しい指摘が行われます。内容についてのコメントが100個以上添えられていることも。トップジャーナルになると、統計解析専門家によるレビューが入ることもあります。

これらのコメントに1つ1つ真摯に答えていきましょう。ただし、研究を一番よくわかっているのは自分たちです。分野の違う査読者の指摘が間違っていたり、査読者が読み間違いをしているということもあります。できる限り答える努力をしながら、時には反論もし、最終判断をエディターにゆだねるという場合もあります。

注目度が高く競争の激しいトップジャーナルでは、リバイスの期間が短いケースがほとんどです。新規性のある発見は、ライバル誌に先に越される前に発表したいからです。長期間に渡る追加実験が必要な場合は、エディターの判断でリジェクトとなり得ます。つまり、リバイスが返ってきた場合、エディターが期間内に応えられると判断したということを示しています。できるだけ期間を守ってなるべく早く、あきらめずに答えてきましょう。

アクセプト後も気を抜けない

見事トップジャーナルにアクセプトされた後も、膨大な量の校正(プルーフ)が待っています。喜びを噛み締めながらも、ここで気を抜かないように。校正期間はリバイスよりもさらに短く設けられており、膨大な修正を3日以内に提出する必要がある場合も。最後のひと踏ん張りを経て、いよいよ掲載となります。