いまさら聞けないラボノートの基礎と書き方

いまさら聞けないラボノートの基礎と書き方

ラボノートは論文作成の下準備と考える

ラボノートは、「実験ノート」とも呼ばれ、研究者が毎日の実験を記録するノートを指します。きっちりと書かれたラボノートは、さまざまな場面で研究者を助けてくれます。たとえば、実験中に気づいたことを毎回記しておけば、実験がうまくいかなくなったときに、何が原因なのかをさかのぼって探ることができます。また、万が一、研究の不正を疑われたときは、精密に書かれたラボノートがあなたの身の潔白を証明してくれます。研究が信頼に値するかどうかは、ラボノートを見ればわかるからです。

また、ラボノートをしっかりと書くことで、逆に、実験の効率や精度が高まり、論文を作成するスピードも速くなります。日々の実験に追われてラボノートを書く暇がないという人も、ぜひ、この機会に、ラボノートの書き方を見直してみましょう。

この記事では実例を交えながらラボノートのおすすめの書き方を紹介します。ラボノートの書き方には正解はありません。ですが、その基礎を知ることで、自分のノートをもっと充実させることができるはずです!

ラボノートの基本的な書き方

では、まずラボノートにはどんなノートを選べばよいでしょうか。この記事では3人の研究者の先輩のノートを紹介しますが、考え方は三者三様です。自分に合うノートを選べば、なんでもよいのです。が、共通して言えることがあります。それは、バラバラになったり順番が変わったりするものはNGということです。日々の実験を記録するノートは時系列が大切です。ルーズリーフなどは避けましょう。

また、基本中の基本ですが、書くときはボールペンなど消えないものを使いましょう。間違えた場合も修正液を使わず、二重線で消すなど、消した跡がわかるようにします。もちろん、ページを破り取るのもNGです。ラボノートは確かに実験をしたという物的証拠です。あとから改ざんしたと疑われないよう、消さない習慣を身につけましょう。

では、実際の書き方を見てみましょう。

■実験前

  • 日付、実験タイトル、実験番号、プロトコルを書く
  • 続きの実験の場合や、他のページとの関連がある場合は、わかるように記しておく。あとで実験を逆にたどるときに便利。
  • 予測される結果を書いておく。

■実験中

  • 実験中に思ったこと、気づいたことはメモをとる。メモをとらなかったことは忘れてしまう。きれいに書くことを心がけるあまり、書き込みのハードルが上がってしまったら本末転倒。実験中は常にメモを取り続けるつもりで臨む。五感すべてをフルにつかって、わずかな音、匂いなども気になったら必ずメモ。機械のオイル漏れなど、不調などに気付くことがある。
  • 絵も活用する。パソコンに結果が取りこまれる場合でも、ノートに簡単なグラフを書いておけば、あとで見直すときに時間短縮になる。

■実験後

  • 分かったこと、想定通りのこと、予想が外れたことなどを書いておく。
  • 今回の実験が全体のプロジェクトの中のどういう位置づけなのかをイメージして書いておく。「Figureがこれで完成」「全体の5割進んだ」「仮説が間違っているかも」など。
  • 次にする実験、何を知りたいかなどを書く。
  • 生データを貼っておく。

3人の研究者のラボノートの活用の実例

ラボノートの書き方は人によって違います。どんな工夫をしているのか、3人の研究者に聞いてみました。

  1. 有機化学系研究者Aさんの場合
    ※Aさんのノートのイメージ(あくまで簡略化したイメージになります)

    ■使用しているノート

    コクヨ帳簿補助帳 A4 サイズ メーカー希望小売価格(税抜) :3,890円

    Aさんが使っているのは、ハードカバーのコクヨのノート。学部4年のときからずっと同じノートを使い続けています。値段は高いけれども、コーヒーがかかっても汚れない、よい紙を使用しているところがよいそうです。このノートはページの端に通し番号がついているのも特徴です。

    ■こだわりポイント

    ・合成する物質のロット番号をノートに書いて、実験を記録する。

    ・共同実験をしやすいようにラボのメンバーで書き方を統一している。

     

  2. ライフサイエンス(生理学系)研究者Bさんの場合
    ※Bさんのノートのイメージ(あくまで簡略化したイメージになります)

    ■使用しているノート

    大学ノート B5サイズ  100円くらい

    Bさんが使っているのは、一般的な大学ノート。2カ月に1冊のペースで使います。いつでもどこでも持ち歩いてスケッチもするため、薄くてコンパクトで、なくなったらどこでも買えるようなノートに落ち着いたそうです。

    ■こだわりポイント

    ・実験が成功するかどうかは、さまざまな要因が関わってくるので、気づいたことはとにかくメモをする。細胞の様子やスライスした切片の形などもスケッチしておく。

    ・実験が終わったらグラフを毎回ノートにスケッチしておく。パソコンを開かなくても、どのデータが成功データかがすぐにわかって、あとで作業時間が短縮化できる。

    ・よく使うプロトコルを書いたページにはインデックスラベルを貼って、探さなくてもすぐに開けるようにしておく。

  3.  ライフサイエンス(分子生物学系)研究者Cさんの場合

    ※Cさんのノートのイメージ(あくまで簡略化したイメージになります)

    ■使用しているノート

    大学ノート A4サイズ

    Cさんは、たくさん書きたいので大きめのノートを選んだそうです。

    ■こだわりポイント

    ・プロジェクトごとに実験ノートを分けるようにしている。終わらなくても一冊を充てる。

    ・プラスミドデータやDNAデータなど、カタログ的な情報は別にまとめなおし、ラボの全員が閲覧できるようにしている。

    ・新しい実験方法は別の「プロトコルノート」に必ずまとめ直す。

    ・毎日のまとめや、関連して読んだ論文などは、ワードファイルにどんどん追記していく。最終的に論文にするときに、役に立つ。

いかがでしたか? 知れば知るほど奥深いラボノートの世界。同じラボの先輩や先生に、どんな書き方をしているのかきいてみてもいいかもしれませんね。ラボノートを味方につけて、しっかりと成果を出していきましょう。