【初めての論文投稿③】投稿するジャーナルの選び方

【初めての論文投稿③】投稿するジャーナルの選び方

論文を書き始める前に投稿先を検討しよう

論文の投稿先選びは、ときに将来の進路を決めることもある重要なプロセスです。確認が不十分のまま執筆を始めてしまうと、大幅な書き直しや投稿先の再検討が必要になることもあり、注意が必要。投稿先を最終的に決定するのは論文の仕上がりが近くなってからでよい、という考え方もありますが、書き始める前に候補先をリストアップし、自分の研究内容や執筆したい論文の主旨に合うかどうかをしっかり考えておくことをおすすめします。

もちろん、学生の間は指導教員と相談して投稿先を決める場合が多く、研究室によっては教授が指定するというケースもあるでしょう。しかし、すべてを人任せにするのではなく、自分なりに調べておくことは大切です。自分の研究がどのような雑誌に向いているかを考えることは、研究のコンセプトや意義を改めて再確認し、さらに将来的に研究者としてどのようにやっていきたいかを考えるきっかけにもなるからです。

それでは、以下で投稿先のジャーナルを選ぶときのポイントを見ていきましょう。

まずは雑誌のインパクトファクターを調べよう

投稿先を選ぶ上で最もわかりやすい指標はインパクトファクター(Impact Factor。以下、IF)でしょう。IFとは、特定の期間において、ある雑誌に掲載された論文が平均的にどれくらい頻繁に引用されているかを示す尺度です。一般的にIFが高い雑誌ほど掲載が難しく、アクセプトされたときの評価は高くなります。

普段から、このIF値やジャーナルの特色を意識して論文を読むことで、研究のインパクトの大きさや傾向を体感的に理解できるようになってくるはずです。また、論文執筆前に興味のある雑誌をリストアップし、IFの値や雑誌の特徴や投稿規定などを表にしてまとめておくと、検討や指導教員との議論もスムーズに進みます。

ちなみに、雑誌の数は年々増えており、これに応じてIFも移り変わってきています。教員もすべての雑誌を把握しているわけではないため、みなさんが調べることで、新たな発見があるかもしれません。もし期間的に余裕があり、自分の研究に自信のある場合、遠慮は無用。IFの高いところを狙いたいと指導教員に相談してみることをおすすめします。可能性があれば、指導教員も知恵を貸してくれるはずです。IF値の高い雑誌投稿にチャレンジした経験は、今後の研究者としてのキャリア形成に役に立つでしょう。

ジャーナルのaims and scopeをしっかり読もう

IFはもっともわかりやすい基準ですが、それだけで投稿先を決定することは避けたほうがいいでしょう。ジャーナルにはそれぞれ目的があり、これに合わない論文を投稿してしまうと、レビューワーに回される前にエディターによってリジェクトされてしまうからです。逆にジャーナルの目的に合っていれば、もともと想定していたよりも高いIFの雑誌でアクセプトされる可能性があります。

ジャーナルの目的は「Aims and Scope」という項目に記されてるか、もしくはジャーナルのサイトの「ABOUT」ページに書かれていることが一般的です。投稿候補を考えるときはそれらに必ず目を通しましょう。

たとえば『Neuron』は神経科学分野において権威ある雑誌(IF=14.318)ですが、Aims and Scopeには次のように書いてあります。

  1. 『Neuron』のAims and Scope

    Neuron has established itself as one of the most influential and relied upon journals in the field of neuroscience. The editors embrace interdisciplinary strategies that integrate biophysical, cellular, developmental, and molecular approaches with a systems approach to sensory, motor, and higher-order cognitive functions. Neuron serves as one of the premier intellectual forums of the entire neuroscience community.

    『Neruon』が求めているのは、神経科学分野における画期的な研究であること、そして生物物理学、細胞、発生、分子的手法などを統合的に用いて、感覚、運動、高次認知機能へのシステムアプローチを可能にする、専門分野の垣根を超えた研究を推奨していることがわかります。1種類の手法のみを使って深く掘り下げたものや、臨床的な研究などは、研究自体にどれだけ意義があっても『Neuron』には向いていないかもしれません。

    もうひとつの例として『Journal of Neurophysiology』(IF=5.02)は、神経科学分野において、『Neuron』より的を絞った基礎的なアプローチの研究論文を投稿するのに向いています。『Journal of Neurophysiology』のAims and ScopeについてはサイトのABOUTに書かれています。

  2. About 『the Journal of Neurophysiology』

    The Journal of Neurophysiology publishes original articles on the function of the nervous system. All levels of function are included, from the membrane and cell to systems and behavior. Experimental approaches include molecular neurobiology, cell culture and slice preparations, membrane physiology, developmental neurobiology, functional neuroanatomy, neurochemistry, neuropharmacology, systems electrophysiology, imaging and mapping techniques, and behavioral analysis. Experimental preparations may be invertebrate or vertebrate species, including humans. Theoretical studies are acceptable if they are tied closely to the interpretation of experimental data and elucidate principles of broad interest.

    この文章から、神経システムの機能についての研究が求められてることがわかります。また、可能な実験アプローチや実験対象、理論計算の研究が許容かどうかまで、細かく記してあります。

    最後に、研究者なら知らない人はいないもっとも有名なジャーナルのひとつ『Nature』(IF=41.577)のAims and Scopeはどのように書かれているかを見てみましょう。

  3. 『Nature』 aims and scope

    Nature is a weekly international journal publishing the finest peer-reviewed research in all fields of science and technology on the basis of its originality, importance, interdisciplinary interest, timeliness, accessibility, elegance and surprising conclusions. Nature also provides rapid, authoritative, insightful and arresting news and interpretation of topical and coming trends affecting science, scientists and the wider public.

    この文章から『Nature』の範囲は神経科学だけでなく、科学と技術の全ての分野の研究を対象にしていることがわかります。また独創性の高さ、重要度、いくつかの分野にまたがる学際的な関心を引く研究であることなども求められています。たとえ神経科学分野において重大な発見をしたとしても、ほかの分野にもインパクトを与えるような研究でないと『Nature』に掲載されるのは難しいかもしれません。

このように、雑誌のAims and Scopeを確認すると研究の業界を見渡すことができます。どのような研究がどういう評価で受け止められているのかを知ることで、自分の研究の立ち位置や今後の戦略も考えられるようになります。論文を投稿する過程を通じて、研究者として様々なスキルを身につけていきましょう。

事前に確認しておきたい投稿規定

投稿規定は投稿直前だけでなく、投稿先を決める段階や執筆前にしっかりと読み込んでおきましょう。前もって確認せずに進めた場合、あとから条件不足が判明して投稿できなかったり、規定のフォーマットに合っておらず書き直しが発生することもあるからです。

例えば、単語数や図表の数については、多くの雑誌が制限を設けているので、まず確認しておきたいところです。主張したい事柄が多いのに単語数制限のせいですべてを書けないという場合は、内容を削る検討だけでなく、制限が厳しくない雑誌を探すことも選択肢に入れたほうがよいでしょう。図表の数の制限も同様です。ジャーナルの制限を優先するあまり、本来は別にすべき図や表を無理やりひとつにまとめたり、必要な図のデザインを省いて主張が伝わらない論文になっては本末転倒です。そうした場合は、制限が厳しくない雑誌を検討したほうがよいかもしれません。

ちなみに、図に関してはモノクロしか受け付けないという雑誌もあります。複数の項目を同時に掲載している折れ線グラフや染色写真などはモノクロにしてしまうと内容が伝わらなくなります。その場合は、カラーでも問題ない雑誌を考慮する必要があるかもしれません。

また、臨床研究が含まれる場合は、CONSORT(Consolidated Standards of Reporting Trials: 臨床試験報告に関する統合基準)など、基礎実験とは違うガイドラインがあるため、投稿規定を慎重に確かめておきましょう。

Pre-submission Inquiry も利用しよう

トップジャーナルに投稿する場合は、Pre-submission Inquiry を行うと時間を有効に使うことができます。Pre-submission Inquiryは、投稿前に自分たちの研究がジャーナル掲載に値するかどうかを事前に問い合わせられるシステムです。サイトに専用の投稿欄が設けてある雑誌もあり、エディター宛にメールで聞くこともできます。

見込みのありそうな返事が来た場合は、そのまま投稿し、カバーレターにPre-submission Inquiryでエディターから「いい返事をもらった」と書き添えるといいでしょう。もし、見込みがなさそうなら、頭を切り替えてほかのジャーナルに投稿すればいいのです。利用できる仕組みを効率よく使って、可能な限り大きな実りを得る。そんな臨機応変さも、長丁場でハードワークとなる論文執筆には重要だといえます。

以上、投稿先のジャーナルの選び方についてポイントを紹介しました。自分の研究に合ったジャーナルを選ぶためにも、日頃からジャーナルのAims and Scopeを意識しながら論文を読みましょう。