<研究最前線>輝く分子で生命活動を探る

<研究最前線>輝く分子で生命活動を探る

生命現象を「視える化」する

―まず、五稜化薬という会社について紹介いただけますでしょうか。

蛍光プローブの製造・販売を専門とするベンチャー企業で、2010年に設立されました。現在では80種あまりの蛍光プローブを販売しており、従業員は19名です。試薬の製造を行なうラボからオフィスまでが、札幌市内のビルのワンフロアに入っています。

―五稜化薬という社名はどこから?

諸説あるのですが、五稜化薬の「五稜」は五稜星から取られていると聞いています。五稜星は北海道の開拓のシンボルであり、当社においても、まさしく「開拓の精神」を大切にしています。

―五稜化薬という会社は、どのようにスタートしたのですか?

慶応大学の助教で、ベンチャーキャピタルにも籍を置いていた丸山(健一・現社長)が、蛍光プローブの技術に目を留め、2010年に立ち上げた会社です。当初から札幌市に拠点を置いていますが、2015年には東京支社を設立しています。

―蛍光プローブとは、どのような試薬なのでしょうか?

蛍光プローブは、蛍光によって生命現象を可視化するための試薬です。いわば蛍光色素にスイッチをつけて、特定の刺激に応答して蛍光を発するようにしたものです。たとえば、活性酸素と反応して蛍光物質に変化する化合物は、活性酸素検出用の蛍光プローブになりえます。現在、鉄・銅・カルシウム、酵素、酸性度など様々な刺激に応答するプローブを販売しています。

―蛍光プローブには、どのような条件が求められるのでしょうか?

反応の前後で蛍光強度が大きく変化するほどよいので、反応前の状態の蛍光をいかに抑えるかがポイントになります。また、細胞膜を透過し、細胞内の狙った場所に移行することも必要です。ですので、試験管内でうまく行っても、生きた細胞で同じように機能するとは限らないのが難しいところです。

ワクワクする試薬を

―サイエンスの歴史は、今まで見えなかったものが見えるようになるという歴史でもありますが、蛍光プローブはまさにそうした存在なのですね。製品化する試薬は、どのように選んでいるのですか?

会社設立当初は、社長の丸山が浦野泰照先生(東大薬学部教授)にストーカーのようにつきまとって(笑)、研究成果を製品化させていただいたそうです。その後関係を深め、今では研究用試薬としての研究の領域だけではなく、診断薬という医療の領域に向かって共に仕事をさせていただいています。

最近では、関連する論文を研究部門の者でチェックし、これはと思うものを選んでいます。もちろん分野の盛り上がりなどを見て売れるかどうかを判断するのですが、「こんな試薬は今までになかった!」「これは面白い!」というワクワク感も大事にしています。

また、製法の工夫、試薬のアプリケーションの開発なども積極的に行い、ホームページなどを通じて情報を提供しています。

―現在力を入れている分野は?

先日のM-Hubにも登場されました、岐阜薬科大学 平山祐先生の鉄イオン検出用蛍光プローブは、ホットな領域である鉄の生理作用の解明に貢献できると思っています。
弊社でも鉄イオン検出プローブのシリーズ化に力を入れており、FerroFarRed™やFerroOrangeを新製品として販売しております。
どちらも細胞内在のFe2+ を検出する事が可能です。FerroFarRedはフローサイトメーターでの測定に適した製品です(左図)。また、FerroORANGEはROS検出プローブを併用することでフェロトーシスのイメージングが効率的に行えます。(下図)

五稜化薬の鉄イオン検出プローブ リーフレット」より

―鈴木さんは合成化学者の立場ですが、生物系研究者との協働による面白さ、苦労などはありますでしょうか?

現在は、全員博士号を持った化学者4名と生物学者2名の体制です。このメンバーで毎日のようにディスカッションをするのですが、別々のバックグラウンドをもった研究者としてそれぞれが異なる視点をもっています。互いに信念を持っていますが、それをすり合わせてひとつのゴールに近づいていく感覚は、この仕事の面白みのひとつです。どちらが欠けても回らない、車の両輪の関係ですね。

―独特の苦労などはありますか?

何しろ当社の製品は「色モノ」なので、不純物が混じっていると外観でもはっきりわかりますし、実験結果にも影響してしまうので気を使います。長期保存した場合の安定性、ロット間の差などにも気を配っています。実験で一回きり作るのとは違い、まとまった量を、いつでも安定して同じ結果が出るように作らねばならないのが難しいところです。

それぞれの研究環境

―鈴木さんご自身は、もともとこの分野を研究していたのですか?

私は学生時代には有機合成分野におり、ペクテノトキシン2という複雑な天然物の全合成をしていました。この化合物はスピロ環が特徴的な分子で、スピロ環をどのようにうまく合成するか、また、その動的な挙動をどのように制御するかということに特に力を入れて研究をしてきました。蛍光プローブにもスピロ環をもっているものが多数ありますので、これまでしてきた研究との繋がりにも面白さを感じています。

―大学に残るか企業で研究するか、考えたりはしましたか?

自分のしたい研究ができるというアカデミックにも興味はあったのですが、より世の中の役に立ちやすい、ユーザーに近いという立場で研究できる、企業を選びました。また地元札幌で、世界に伍した研究ができるというのも魅力でした。

―鈴木章先生(2010年ノーベル化学賞)が会社の顧問に名を連ねています。

時に会社に来ていただいて、お話を頂いています。先生の「精進努力」という信念は、我々にとって大きなモチベーションになっています。

技術顧問 鈴木章先生(北海道大学名誉教授)の色紙

―会社のウェブサイトを見ますと、蛍光プローブの使用プロトコルやQ&A、アプリケーションノートなどが非常に充実しています。

研究者からの問い合わせに対しても、専門のスタッフが対応するなど、アフターケアにも力を入れています。ラインナップも、たとえば単に「活性酸素を検出する」というだけではなく、特定の分子種を検出できるようなものを、きめ細かく揃えています。このあたりが、当社の強みと思っています。

―単なる試薬の販売者ではなく、研究のパートナーでありたいという思いが伝わってくるサイトですね。

 

プロフィール
鈴木 悠記 (すずき ゆうき)
五稜化薬株式会社 製品開発部 製品開発グループ マネージャー。
1987年生。2014年9月北海道大学大学院 総合化学院博士課程修了(鈴木 孝紀 教授)。
2012-2014年 日本学術振興会特別研究員(DC1およびPD)。
2015年より五稜化薬株式会社 入社。2018年より現職。

会社概要
五稜化薬株式会社
平成22年7月16日北海道札幌市北区にて会社設立
「ケミカルバイオロジーで生命の見える化に貢献する」を使命として、機能性色素の販売、機能性色素の受託合成、機能性色素を用いた診断薬開発等の事業を展開
詳細はこちら

関連情報
五稜化薬株式会社のウェブサイト
五稜化薬株式会社の新製品情報
FerroFarRed
FerroOrange

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