ウェスタンブロッティングで失敗したら見直したい3つの条件

ウェスタンブロッティングで失敗したら見直したい3つの条件

失敗の原因は検出反応にあるとは限らない

ウェスタンブロッティングは、下図のように目的タンパク質の分離、転写、検出(抗原抗体)反応という複数の工程から成る複雑な手法です。

図1 ウェスタンブロッティングのワークフロー

そのため、シグナルが検出できなかった場合も、最後の工程である検出反応だけを見直すのではなく、その前段階の様々な条件を見直す必要があります。

この記事では、ウェスタンブロッティングを成功させるために押さえておきたい、転写(トランスファー)における以下3つの条件について解説します。

  • 適切な転写メンブレンの選択
  • メタノール濃度の調節
  • アクリルアミドゲルの平衡化

適切な転写メンブレンの選択

狙い通りのシグナルを検出するためには、サンプルのタンパク質の分子サイズに応じて転写条件を最適化しておくことが必要です。検出したいタンパク質のサイズに合わせたメンブレンを選ぶことで、メンブレンに転写されるタンパク質量を増やすことができるのです。

SDS-PAGEゲル中では、タンパク質―SDS分子複合体はマイナスに帯電していますので、電場から力を受けて、プラス極側に移動します。ゲルから抜け出したタンパク質は、疎水性相互作用によってメンブレンに吸着します。

一般的に、タンパク質が低分子だとゲルからもメンブレンからも抜け出しやすくなり、高分子だとゲルからは抜け出しにくくメンブレンに吸着しやすいことが知られています。転写条件を最適化するためには、まず、目的のタンパク質の分子量に合わせたメンブレンを選択しましょう。目的タンパク質が低分子量(<20kDa)の場合は、孔径0.2μmのメンブレンImmobilon-PSQ(カタログ番号 ISEQ00010 他)がおすすめです。

図2 サイズに依存した、転写時のゲルおよびメンブレン上のタンパク質挙動モデル

メタノール濃度の調節

メンブレンを通り抜けてしまって吸着しづらい低分子量タンパク質。一方、ゲルから抜け出にくくてメンブレンに吸着しにくい高分子量タンパク質。どうすれば、このような分子量のタンパク質のメンブレンへの吸着効率を上げることができるでしょうか。

その方法のひとつが、転写バッファーの組成の調整です。

標準プロトコルでは、25mM Tris Base、192mM Glycine、10%メタノールという組成の転写バッファーが推奨されていますが、このバッファーのメタノール濃度を調整することで、タンパク質のメンブレンへの吸着を変えることができます。

電気泳動(SDS-PAGE)に必要だったSDSをメタノールに置換するとタンパク質がゲルから抜け出しにくくなる一方でメンブレンへの吸着が促進されます。

したがって、低分子量タンパク質の場合には、メタノール濃度を高めにすればタンパク質がメンブレンを通り抜けてしまうのを防ぐことができます。

逆に、高分子量タンパク質の場合には、メタノール濃度を低めに設定すれば、ゲルから移動しやすくなるためメンブレンへの転写効率が改善します。

ただし、メタノールはゲルの膨潤や変形を防ぐ効果もあるため、極端に低濃度にしてしまうとゲルの膨潤が起こり、過剰な場合はゲルが収縮しやすくなるのて注意してください。

アクリルアミドゲルの平衡化

転写バッファーでアクリルアミドゲルの平衡化を行う工程も、条件を最適化することで、タンパク質のメンブレンへの吸着量を増やすことができます。

下のグラフは、平衡化の時間とタンパク質の吸着量について評価した結果です。

この実験では、同じ量のBSAをサンプルとし、平衡化時間を0分、5分、15分、30分に設定したアクリルアミドゲルを用いて、同一条件で転写を行っています。メンブレンは、PVDF製Immobilon-P(孔径0.45μm)を用い、バックアップメンブレンとして、Immobilon-PSQ(孔径0.2μm)を重ねて使用。転写後は、ゲルに残ったタンパク質、Immobilon-Pに吸着したタンパク質およびImmobilon-Pを通り抜けて、Immobilon-PSQに吸着したタンパク質量を測定しました。(下図参照)

グラフを見ると、平衡化の時間が増えるにつれてBSAの残存率が増加していることがわかります。平衡化の最適時間は、ゲルのサイズに依存しますが、標準的なミニゲルの場合、15~30分の平衡化を行うことをおすすめします。

以上、ウェスタンブロッティングを成功させるために押さえておきたい3つの条件について解説しました。実験の成功率を高めるために、ぜひ、この記事を参考に普段何気なく行っている工程も見直してみてくださいね。