高感度イムノアッセイ、SMCテクノロジーとは

高感度イムノアッセイ、SMCテクノロジーとは

高感度の定量を実現可能にしたSMCテクノロジー

疾患研究および創薬開発研究においては、血清、血漿、唾液、脳脊髄液などの生体サンプルに含まれる疾患関連分子バイオマーカーを定量測定する必要があります。これまで、バイオマーカーの定量測定といえば、酵素抗体法(ELISA)が主流でした。

しかし、近年では、質量分析計などの分析装置の性能が飛躍的に向上したことで、新たなバイオマーカーが次々と発見されています。2013年のVisiongain Report社のレポートによると、ヒトのタンパク質は40万種類あると予想され、うち30万種類はELISAをはじめとする現在の定量法では検出できない微量なバイオマーカーであるとされています。

そのため高感度バイオマーカー測定は、疾病の早期発見の糸口や健康な状態を明確に定義できる指標になる可能性を含んでいます。また、新しい創薬のターゲットなど、社会的にも経済的にも多くの期待が寄せられているのです。

SMC(Single Molecule Counting)技術は、イムノアッセイの検出感度を大きく向上させる技術で、従来のイムノアッセイでは到達できなかった、高感度のバイオマーカー定量を実現できます。今回はSMCイムノアッセイの手順と原理、汎用性について紹介します。

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SMCテクノロジーによる高感度イムノアッセイの手順

SMCイムノアッセイでは、以下の手順でデータを取得します。

  1. 従来のイムノアッセイと同様にターゲット物質(アナライト)の蛍光免疫検出を行う
  2. 独自の溶出バッファーを用いて免疫複合体から蛍光標識検出抗体を溶出する
  3. SMCイムノアッセイ測定装置でデータを取得する

従来のサンドイッチ法イムノアッセイは、次のようなプロセスを踏みます。まず、固層化された目的物質特異的抗体(補足抗体)と、蛍光標識された目的物質特異的抗体(検出抗体)で目的物質との抗原抗体複合体を形成。この段階で、検出抗体に結合した標識物質(酵素や蛍光色素)の量に応じたシグナル(発色や蛍光)を生じさせ、ウェルごとに読み取ります。

一方、SMCイムノアッセイでは、図1のように、一度形成した抗原抗体複合体から検出抗体を溶出します。溶出された検出抗体は、補足抗体の固層化されたビーズなどと分離され、測定用の新たなプレートに移し替えられます。

図1:従来のイムノアッセイとSMCアッセイの相違点

測定用プレートに移し替えられた蛍光標識抗体は、SMCアッセイ専用測定装置(SMCXPRO)で測定されます。

図2:SMCアッセイ専用測定装置「SMCXPRO」

SMCテクノロジーによる高感度イムノアッセイの検出原理

測定は共焦点レーザーによるウェル中のスキャンによって行われます。レーザーは回転しながら、らせん状にウェル中をスキャンしていきます。

蛍光色素が共焦点レーザーの高エネルギースポット(焦点の周囲約5μm)を通過すると、蛍光標識抗体がたとえ1分子であっても非常に大きな蛍光シグナルが発生します。一方、高エネルギースポットを通らなかった蛍光標識抗体や、高エネルギースポットを通った夾雑物のシグナルはノイズレベルになります。

共焦点レーザーによるスキャンの時間を横軸に取り、得られた蛍光シグナルの強さを縦軸に取ると、図3のようなチャートになります。

図3:401binにおける蛍光シグナルの強さ(1bin:10μS毎に得られる蛍光シグナル)

バックグラウンドノイズよりも6σ上でシグナルの閾値を設定し、それを超える強い蛍光標識抗体由来のシグナルの数をイベント数として集計します。

単位時間当たりに得られるイベント数は、ウェル中の蛍光標識抗体濃度、ひいてはサンプル中に含まれていた目的物質の濃度に相関します。図4のように、イベント数はサンプル中の目的物質濃度が高かった場合には多く、低かった場合には少なくなります。

図4:イベント数と目的物質濃度の関係

また、各サンプルウェルから得られたシグナルの単位時間あたりの数を、濃度既知サンプルから得られたシグナル数で作成された検量線と照らし合わせることで、未知サンプルの濃度を算出することができます。

図5:SMCアッセイで得られた検量線の例

このようにSMCイムノアッセイは、蛍光標識抗体1分子由来の蛍光シグナルをバックグラウンドノイズから明瞭に分離することができます。そのため、図6に示されるように、低アナライト濃度領域での定量性が大きく向上し、広いダイナミックレンジを実現できます。

図6:SMCイムノアッセイによる感度向上の概略

SMCイムノアッセイの柔軟性

SMCイムノアッセイは基本的に一般的なサンドイッチ法のイムノアッセイをベースとしています。主なアッセイの構成要素は、ビーズ等に固層化された捕捉抗体、蛍光標識された検出抗体、そして検量線作成用の濃度既知の目的物質です。

メルクでは、捕捉抗体を固層化するキット、検出抗体を蛍光標識するキット、そして、アッセイに必要なバッファー類のセットを販売しています。これらを使った独自アッセイの構築も可能です。

表1は、同じ抗体を用いて、ELISA、プレートベースSMCアッセイ、ビーズベースSMCアッセイを構築して比較した結果です。ELISAと比べるとプレートベースSMCアッセイで60倍、ビーズベースSMCアッセイでは1200倍の感度上昇が得られました。

表1:SMCアッセイの構築事例とELISA法との比較

原理的にはサンドイッチ法以外のSMCアッセイの構築も可能であり、適用範囲の拡大が見込まれます。高感度のバイオマーカーを測定する必要があれば、ぜひ一度検討してみてください。

 

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