アガロースゲル電気泳動後のDNA抽出
アガロースゲルからのDNAの回収
電気泳動で分離したDNAをクローニングなどに使用するときは、DNAフラグメントをゲルから回収して抽出する必要があります。ゲルからDNAを抽出・回収し、精製する操作にはいくつかの種類があり、それぞれの手法の長所と短所を理解して行う必要があります。ただし、いずれの方法も、回収率はそれほど高くなく(30~70%)、DNAサイズが大きいほど回収率は下がります。また、回収したDNA中に不純物の混入が多いと次に行う実験がうまくいかない可能性があるため、注意が必要です。 この記事では、キットを使って迅速にDNAを回収する方法を紹介します。
シリカメンブレンカラムによる抽出キット
GenEluteTM ゲル抽出キットは、DNAフラグメントを含むアガロースゲルを溶かし、シリカメンブレンカラムを用いて遠心によってDNAを高純度で精製するキットです。標準または低融点アガロースゲルから50 bp〜10 kbpの線状DNA断片とプラスミドを迅速に精製するために設計されています。また、アガロースゲルだけでなく、ポリアクリルアミドゲルからDNAを精製するためにも使用できます。精製したDNAはシークエンス、クローニング、制限酵素処理、ラベリングなどに利用可能です。 DNAを抽出する手順は複数のプロセスがありますが、ここでは簡単に実験の流れを紹介します。
<GenEluteTM ゲル抽出キットの流れ>
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目的のDNAフラグメントをアガロースゲルのスライスから抽出し、ゲルを可溶化する。
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DNAをシリカ膜に結合させる。
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遠心分離または真空洗浄によって汚染物を除去する。
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シリカ膜に結合したDNAを溶出する。
アガロースゲルからのDNA抽出用スピンカラム
次に、アガロースゲルの融解や酵素消化の必要がないDNA抽出用のスピンカラムを使った簡易な方法を紹介します。 DNA抽出用スピンカラムの底部には一連の膜とフィルターが埋め込まれています。アガロースゲルから切り取ったDNAバンドをスピンカラムに入れ、10分間の遠心分離を行うと、アガロースおよび溶媒が分離層に残り、DNAが選択的に通過するため、DNAをcollection tubeに移動させることができます。10 μgまでのDNAを精製でき、精製したDNAはライゲーション、PCR、制限酵素切断、標識およびハイブリダイゼーションなど多くの用途に使用することができます。
<マイナスEtBrスピンカラムを使ったDNAの回収手順>
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GenElute Minus EtBr Spin Column を collection tubeに入れる。
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100 μLの1×TEバッファー(10 mM トリス、pH 8.0、1 mM EDTA) または水をスピンカラムに加え、スピンカラムを予洗いする。予洗したカラムは乾燥させなないこと。使用のかなり前に予洗したり、または予洗の溶液を10 秒以上遠心することは避ける。3. フタをして、最高速度 (12,000~16,000 x g) で 5~10秒間遠心する。
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洗浄溶出液を捨てるか、スピンカラムを新しいcollection tube に移す。
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アガロースゲルから該当するバンドを切り取り、予洗いしたカラムにゲルスライスを入れる。
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スピンカラムを最高速度で10分間遠心する。精製された DNAは collection tube 内にあり、すぐに使用することができる。DNAは 2~8℃ または-20℃で保存できる。
<実験のコツ>
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全ての操作は室温で行うこと。
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最良の結果を得るためには、DNAバンドのできるだけ近くでゲルスライスを切り取る。
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ゲルスライスをスピンカラムに入れる前に、液体に浸して柔らかくすることで、DNAの回収率を大幅に高めることができる。
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ゲルスライスは、マイクロ遠心チューブ内で乳棒ですりつぶしたり、かみそりの刃またはメスで細断したり、注射器を通すことが可能なため、アガロースを細片に分解することにより、DNAのより効率的な放出を可能にし、回収率を劇的に向上させられる。
以上、キットを使用したアガロースゲルからのDNAの抽出法を紹介しました。電気泳動で分離したDNAの断片の回収は、DNA組み換え実験では必須の操作です。より純度の高いDNAを回収できるよう、操作に慣れていきましょう。x-tractaゲル抽出ツールを使うと、片手で簡単にゲルを切り出すことができるのでおすすめです。
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