PCR産物を精製して高純度のDNAを得る簡単な方法
PCR産物を便利なキットで精製しよう
PCRで増幅したDNA溶液(PCR産物)を用いてシークエンスを行う場合、PCR反応液に含まれるプライマーやdNTPなどシークエンス反応に影響を与える物質を除去する必要があります。どれだけ高純度のDNAを回収できるかで、その後の実験の質が決まってきます。 この記事では、PCR産物の精製に便利なキット2つとその使い方を紹介します。 1つ目は、シリカメンブレンカラムによるPCR産物の精製キット「GenEluteTM PCRクリーンアップキット」です。 GenEluteTM PCRクリーンアップキットは、DNAフラグメントを含むアガロースゲルを溶かし、シリカメンブレンカラムを用いて延伸によってDNAを精製するキットです。PCR反応後のプライマー、dNTP、DNAポリメラーゼなどを除去し、10 μgまでのDNAを精製できます。このキットはシリカ結合法とマイクロスピン法の長所が組み合わせれており、高価なレジンや有毒な有機溶媒(フェノール、クロロホルムなど)を使用する必要もありません。回収率は最大95%で、精製したDNAはシークエンス、クローニング、制限酵素処理、マイクロアレイなどに利用可能です。 それでは、どのように使えばいいか、プロトコールを見ていきましょう。
<キット以外に用意する試薬および器具>
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マイクロ遠心分離機
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マイクロチューブ
<プロトコール>
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試薬類をそれぞれよく混合し、沈殿の有無を確認する。試薬に沈殿が生じている場合は、沈殿が溶解するまで 55~65 °C で加温し、室温に戻してから使用する。
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キット付属の Wash Solution Concentrate の全量を48 mLの100% エタノールで希釈する。希釈後の Wash Solution はエタノールの蒸発を防ぐため、使用後は密栓すること。
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GenElute Miniprep Binding Column(青いOリングが ついているカラム)をキット付属の回収用チューブに差し込む。各ミニプレップカラムに 0.5 mL の Column Preparation Solutionを加え、12,000 x g で30 秒~1分間遠心分離後、
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PCR反応液に対して5倍量のBinding Solutionを加えて混合する。混合液をカラムに移し、カラムを最高速度(12,000~16,000 x g)で 1分間遠心分離後、カラム通過液を捨てる(回収用チューブは捨てない)。
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結合カラムを回収用チューブに戻す。希釈済みのWash Solution 0.5 mLをカラムに加え、最高速度で 1分間遠心分離。カラム通過液を捨てる(回収用チューブは捨てない)。
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カラムを回収用チューブに戻す。Wash Solution を加えずにカラムを最高速度で 2分間遠心分離し、余分なエタノールを除去する。カラム通過液および回収用チューブを捨てる。
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カラムを別の2mL 回収用チューブに移し、50 μL のElution Solution または水を各カラムの中央部に加える。室温で 1分間静置する
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DNAを溶出するため、カラムを最高速度で 1分間遠心分離する。
PCR増幅産物が含まれた溶出液は、ただちに使用するか、または-20 ℃で保存することができます。 次に、ピペッティングだけで精製できる特殊なチップを使った方法を紹介します。
ピペッティングでPCR産物を精製する方法
Diffinity RapidTipを用いると、反応液をマイクロピペッターでチップ内部に吸い込むことで不純物を除去することができ、1分間のピペッティングで混合するだけで、反応溶液中のDNAを精製できます。このチップだけで、すぐにその後のアプリケーションに使用できる高品質な状態まで精製することが出来るため、大変便利で実験時間の短縮にもつながります。 チップは、精製したDNAの用途に応じて2タイプあります。
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Dinity RapidTip dNTP、プライマー、プライマーダイマーを除去する。25 μLのPCR反応液から100 bp~10 kbのDNAフラグメントを抽出できる(回収率90%以上)。精製したDNAはシークエンス、SNP解析、マイクロアレイなどに利用可能。
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Dinity RapidTip2 DNAポリメラーゼ、dNTPやプライマー、ライマーダイマーを除去する。50 μLのPCR反応液から100 bp~10 kbのDNAフラグメントを抽出できる(回収率90%以上)。精製したDNAはシークエンス、SNP解析、マイクロアレイ、TAクローニングなどに利用可能。
ここではDinity RapidTip2を用いるプロトコールを紹介します。
<プロトコール>
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マイクロピペッターの吐出量を60 μLに設定し、Dinity RapidTip2 を装着する。
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チップの先端を 50 μLのPCR反応液に入れ、最初の吸い込みで約半量のPCR反応溶液を吸い込み、混合せずに5秒間そのままにして粒子にPCR反応液を浸潤させる。その後残りの半量を吸い込み、吐出する。
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60 秒間、反応液を混合する(吸い込みと吐き出しを約15セット分)。このとき、ピペッティングは通常よりも遅い速度で行うこと。吸い込み後は、チップ内部に反応液が完全に行き渡るまで待ってから混合し、チップ内部の粒子が懸濁した状態になるまで、よく混合する。
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混合が終わったら、新しく用意した滅菌チューブに、Dinity RapidTip2 で精製した反応液を入れる。液量の損失をできるだけ防ぐため、マイクロピペッターの排出機構を利用してチップ内部に残った反応液を完全に吐出する。
精製した PCR 増幅産物は、その後のアプリケーションにすぐに使用することが出来ます。精製されたかどうかを確認する場合は、精製前後のサンプルを隣り合うレーンにアプライし、アガロースゲルなどで電気泳動を行ってください。 以上、PCR反応後のDNA精製の方法を紹介しました。実験全体のスケジュールを考えながら、ときにはキットを使って時間の短縮化も行い、効率よく研究を進めていきましょう。
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