純水比較―Elix水と蒸留水のランニングコストはどちらがお得か

純水比較―Elix水と蒸留水のランニングコストはどちらがお得か

水を制する者は実験を制す

水はサイエンスの実験や分析において、陰ながら重要な役割を果たしています。いくら試薬や装置にこだわっても、水の扱いや選択を間違えると、実験に失敗したり、正しい結果が出なかったりすることも大いにあります。いつもは装置任せの「水」について、正しい知識を身につけて、実験の成功率を高めましょう。まずは、水の分類を表す下の図を見てください。

この図からわかるように、水の純度は、中に含まれるイオン量や有機物の量で決まります。右側に行くほどイオン量が少ないことを示しています(抵抗が大きくなり、導電率は低下します)。また有機物量は上に行くほど少ないことを示しています。超純水はイオン量も有機物量も最も少ない水です。純水は超純水と水道水の中間になります。

また、図にあるように、蒸留水やイオン交換水も純水に分類されます。逆浸透膜(RO)を用いてイオンを除去したRO水や、イオン交換膜とイオン交換樹脂を組み合わせて精製するRO-EDI水も純水の仲間です。

進化した純水「Elix水」とは

従来、純水といえば蒸留水が最も一般的でした。蒸留水は、ご存じのように、不純物を含む水から揮発性の有無や沸点の違いを利用して、水を気化させて回収する方法です。ただし、蒸留の際に、沸騰した水が粒子状のまま蒸気中に飛散され、蒸留水の純度を低下させてしまうことがあります。また、冷却器からでてくる水は水滴となっているため、実験室の空気と極めてよく接触し、空気中の不純物を再度吸収して純度が低下することも起こります。そのため、1回蒸留を行っただけでは実験には使えないことが多いのです。

純水の精製方法は蒸留水のほかにも、イオン交換樹脂を用いて、水に含まれる鉄・ニッケル・カルシウムなどの金属(陽)イオンを水素イオンに、塩素イオン・炭酸イオン・ホウ酸イオンなどのアルカリ成分(陰イオン)を水酸化物イオンに置き換えて精製するイオン交換水や、逆浸透(RO)膜と呼ばれる膜を利用して、原水側に浸透圧以上の圧力をかけ、水だけを通過させて不純物を取り除くRO膜法などがありますが、この2つを進化させてさらに純度を高めた純水が「Elix水」です。

Elix水はRO膜と連続イオン交換(Electric DeIonization:EDI)によって、純水化が行われます。ROは水中の不純物である無機物を97%、有機物に関しては99%程度除去することができる高性能な膜ですが、さらに、EDIで処理を行うことで、余計なイオンを除去することができます。

EDIはイオン交換樹脂を陽イオン交換膜と陰イオン交換膜で交互にはさみ、その両端の電極で直流電流を通すことによりイオンの除去を連続的かつ効果的に行う電気透析の原理を応用したシステムです。電流を流すと、原水中のイオンは陽極もしくは陰極にひきつけられますが、その際に、陽イオン交換膜と陰イオン交換膜の2種類の膜がイオンを選択的に透過させるため、イオンが濃縮される層と排除される層に分かれます。通水しながら電流を流すことで、イオンを濃縮し、外へ排除することができるのです。

イオン交換樹脂は、イオンが電極へ移動しやすくする良導体としての役割とイオン交換樹脂上の官能基にイオンを保持しイオン交換膜へ運ぶ役割を担っているため、官能基が飽和することなく長期間に渡ってイオンの除去を行うことができます。また、EDIは通電をするため細菌増殖を抑制する効果もあります。

蒸留水とElix水を比較する

では、このような方法で精製したElix水と蒸留水を比較してみましょう。Elix水の水質(導電率、TOC)を表に示しました。導電率は数値が高いほどイオン量が多いことを示します。TOC(Total Organic Carbon:全有機体炭素)は有機物量を示し、こちらの数値が高い方が有機物量、つまり不純物が多い水になります。Elix水はイオン交換樹脂を通した蒸留水に比べても、不純物が少ないことがわかります。

表1 純水の精製方法と水質の関係

次に、純水精製に必要なエネルギー量を比べてみましょう。蒸留は相変化を利用するため、エネルギーを大量に必要です。一方、ElixはRO膜を利用してろ過するため、加圧を行うためのエネルギーが必要です。また、Elix方式では、原料となる水のみが必要とされるのに対し、蒸留法では水蒸気を水に戻す冷却過程も水が必要になるため、必要な水の量も大きく異なります。2つの方式で純水を精製した場合に必要な電気量と水道水量の比較を行ったのが次の表です。電気量、水道量ともに、蒸留法よりもElix方式の方が少ないことがわかります。金額に換算してみると、なんと1年間で10倍程度の開きがありました。Elix純水装置のランニングコストは蒸留装置よりも小さいことがわかります。

表2 蒸留法とElix法の電気・水道代比較の一例

純水=蒸留水のようにイメージしがちですが、純水精製技術も日々進化しています。純水を使用する際には、その精製方法と水質の特徴を理解した上で、適切な純水精製技術を選定・使用することが重要です。純水装置を新たに導入するときや、使用中の純水装置・蒸留器からの更新をするときには、Elix方式の装置も検討候補のひとつに入れてみてはいかがでしょうか。