光熱水費高騰の危機! 研究室のインフラ「水」を守るには

光熱水費高騰の危機! 研究室のインフラ「水」を守るには

2020年から光熱水費、とりわけ電気代の高騰が続き、幅広い研究分野に影響を及ぼしています。その中でも「水」はほとんどの実験に必須のインフラであり、研究室の開設にあたっては真っ先に水系を立ち上げるという方も多いのではないでしょうか。純水は電気を使わなければ用意することができず、今後も経済的な負担が増していくと実験の継続危機に陥るかもしれません。この記事では、世界的な光熱水費高騰の背景やその影響について解説し、こうした世情における非加熱式純水製造装置導入のメリットについてご紹介します。

先の見えない光熱水費の高騰、なぜ?

世界的な光熱水費高騰の原因として、化石燃料の価格高騰が挙げられます。例えば、天然ガスの価格は2020年9月からの2年間で約5倍に上昇しました。新型コロナウイルスの感染拡大によって停滞した世界の経済活動が回復に転じてきているために、化石燃料の需要増加に対して供給が追いつかなくなり、価格が高騰しています。さらに、2022年2月に開始したロシアのウクライナ侵攻に対してEUやアメリカが経済制裁を実施し、ロシアからの化石燃料の輸出が制限されたことで、より一層の価格高騰が引き起こされました。

また、円安も光熱水費高騰の原因の一つです。円安により、日本の発電資源として大きな比重を占める石炭や天然ガスの輸入価格が上昇しました。日本の火力発電では天然ガスを燃料として使用することが多く、化石燃料自体の価格や輸入価格の高騰が重なって電気料金の値上げに繋がりました。

このような状況を受け、日本政府は2023年1月から「電気・ガス価格激変緩和対策事業」を開始し、2024年4月使用分まで延長しています(2023/12/10時点)。しかし、2023年10月に勃発したパレスチナとイスラエルの武装勢力間衝突が天然ガス市場に大きな影響を与える可能性もあり、引き続き予断を許さない状況です。

多くの大学・医学系研究機関で支出額が増大、経営圧迫にも

各大学の令和4年(2022年)度決算報告からは、光熱水費の負担増加が研究活動等に影響を与えていることが垣間見えます。東京大学では、エネルギー資源の高騰や新型コロナウイルス感染症の影響で抑制されていた活動が回復したこと等の影響を受け、物件費(減価償却費を含む)が前年度に比べて78億円(約5.0%)増加しました。京都大学では、計15億円規模の全学的な追加支援や、今後の光熱水費の高止まりを見据えた部局戦略積立金の特別積立など、外部環境に応じた柔軟な支援・対応が始まっています。慶應義塾大学や早稲田大学をはじめ多くの私立大学でも支出が増加しており、その要因のひとつとして光熱水費の増加を挙げています。

光熱水費の増大による収支への影響や実害が生じてきている状況を踏まえ、国立大学協会および全私学連合は、2024年度予算において大学の基盤的経費である国立大学法人運営費交付金および私立大学等計上費補助金の拡充を求めています。

医学系研究機関を取り巻く状況はさらに厳しく、国立大学病院では2023年度の光熱費が2021年度比で約129億円の負担増となることが国立大学病院長会議によって報告され、より一層の財政支援を国に求める方針を明らかにしました。

政府も光熱水費の高騰に対策を講じる

文部科学省は、2024年度概算要求において、国立大学法人運営費交付金の要求・要望額を全体で前年度比305億円(約2.8%)増の1兆1089億円としました。この中には、教育研究基盤設備の整備等の費用として、前年度比342億円(約328.8%)増となる446億円が盛り込まれており、グリーン社会の実現やデジタル化の加速等を進めるための設備など、教育研究活動の維持・継続に必要な環境整備を推進しています。また、国立大学法人等の施設整備に対して950億円を要求しており、「第5次国立大学法人等施設整備5か年計画(令和3年3月文部科学大臣決定)」に基づいて太陽光パネルなどの創エネルギー設備や、高効率空調の整備など、省エネルギー対策の取り組みの加速化を目指しています。私立大学に対しては、私立大学等経常費補助の要求・要望額を3071億円としたほか、私立学校施設環境改善整備費として78億円を要求し、LED照明への交換などのエコ改修を支援するとしています。

また、内閣府は、エネルギー価格高騰の影響を受けた事業者の支援を通じた地方創生を図るため、2023年11月に「物価高騰対応重点支援地方創生臨時交付金」(重点支援地方交付金)を創設し、約5000億円の追加交付を閣議決定しました。この困難な情勢において、国としても大学や医学系研究機関に対して可能な限りの支援を実施しています。

研究における光熱水費高騰の影響と、水・電気の重要性

光熱水費が高騰し支出が増大している今、研究者のみなさんはどのように考えているのでしょうか。
研究活動における水・電気の役割や重要性についてあらためてお話を伺いしました。

旭川医科大学医学部薬理学講座 中山 恒教授
研究に使用できる予算が逼迫しています。照明を落とす、パソコンの電源を不使用時には切る、実験機器類を効率的に使用する、居室の冷暖房を極力使用しないようにする、といった対策を講じています。研究費予算は試薬、器具、備品等の購入に使いますが、大型機器の購入は難しいですね。
当研究室では、実験のために均質な試薬を常時調製する必要があり、水は極めて重要な存在です。

北見工業大学工学部地域未来デザイン工学科バイオ食品工学コース 齋藤 徹教授
光熱水費の高騰による影響は特にありませんが、水はそれ自体が研究対象であり、実験用水でもあるため、必須の存在です。

理化学研究所 市橋 泰範氏
研究費予算が縮小する一方で、消耗品は値上がりしているため、対策として節約の徹底と外部資金の獲得を目指しています。水は根源的に重要な存在であり、水がなければ研究を進めることはできません。

新潟大学脳研究所システム脳病態学分野 田井中 一貴教授
研究費予算は人件費の比重が最も高く、残りは主に消耗品に使っています。電力消費量の大きい機器を使っていないこともあり、現状では大学が支援する光熱水費の範囲に収まっています。しかし、このまま高騰が続いて差分を支払う必要が生じる場合は厳しいかもしれません。新潟大学では、光熱水費を間接経費として支払っているため研究室として負担することはありませんが、今後は大学経営にもダメージが及ぶ可能性もあります。仮に各研究室での負担が求められるようになれば、ディープフリーザーやMRIなどを使う研究室には多大な負担となり、研究の内容によっては著しい差が付くかもしれません。
また、バイオ系の研究において、水は基盤的な材料として不可欠で必須のインフラです。

すでに節約や節電を意識している・現時点では影響がないなど現場の声は様々ですが、研究活動にとって水が必要不可欠であることは一貫して強調されています。

「非加熱式純水製造装置」に買い換えるという選択

実験に用いる純水は電気を使わなければ用意することができないため、どうしてもある程度のコストがかかってしまいますが、非加熱式純水製造装置を導入することで節約・節電が期待できます。

例えば、Elix® Essentialシリーズは、熱や冷却水を使わないRO+EDI®方式による非加熱式純水製造装置であり、ロングライフEDI®(連続式イオン交換)と逆浸透(RO)膜の組み合わせにより節電節水で純水を精製します。EDI®はイオン交換樹脂の再生が不要なため、メンテナンスの手間とランニングコストの削減が実現可能です。また、純水製造スピードが早いので待ち時間が短いというメリットもあります。

加熱式純水製造装置に比べて年間電気コストは16分の1であり、導入費用は3年程度で回収できる見込みです(図1)。

図1. 非加熱式純水製造装置の年間コスト

RO+EDI®方式によって製造した純水は、蒸留水と比較すると安定して無機イオン、有機物が少なく、純水中の微生物が気になる場合はUV殺菌灯を設置することもできます(図2)。

図2. 様々な水の水質比較

このような、コストが大幅に削減できる点や安定した水質を実現できる点といったメリットから、非加熱式純水製造装置はシェア拡大を続けていて、2021年度には全体の約6割を占めるまでに成長しています

光熱水費の深刻な高騰が続くこの時世で、研究に欠かすことのできない水を安定して供給し続けるために、非加熱式純水製造装置の導入を検討してみてはいかがでしょうか?

グリーンプログラム

メルクでは「グリーンプログラム」と題して、蒸留水製造装置(加熱式純水製造装置)から対象の非加熱式純水製造装置に買い換えると、プログラム希望販売価格を適用するキャンペーンを展開しています。
対象となる非加熱式純水製造装置はElix® Essentialシリーズ、Milli-Q® IXシリーズ、超純水製造装置Milli-Q® SQ 240で、蒸留水製造装置から対象商品に買い換えた場合、装置とアクセサリー類を最大20%割引いたします。詳しくはこちらのページをご覧ください。

蒸留水製造装置から環境に優しい純水製造装置にしませんか??“グリーンプログラム”

参照元
*科学機器年鑑 2022年版. 株式会社アールアンドディ. 2022.

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