今いちど見直したい、純水や超純水による実験器具の洗浄

今いちど見直したい、純水や超純水による実験器具の洗浄

器具の洗浄には純水や超純水を使うことが重要

ライフサイエンスの実験や試験、分析では、水質が結果を左右することがあります。そのため、水道水に含まれる有機物や微粒子、イオンなどを、イオン交換樹脂やフィルターなどで物理的、化学的に取り除いた「純水」や「超純水」を使用するのが一般的です。

さらに、実験や分析に用いる水以外に注意したいのが、器具の洗浄水です。ビーカー、メスフラスコ、薬さじなどが十分に洗浄されず、薬剤やサンプルなどの付着物が残存すれば、実験結果にも影響が及びます。目に見える程度の付着物であれば取り除くのは容易ですが、精度が求められる実験ではわずかな不純物もできる限り排除する必要があります。水道水には、カルシウムイオンやマグネシウムイオン、塩化物イオンなども含まれているため、器具洗浄の最後には、純水や超純水を使ってすすぐことが一般的です。

図1は水道水、純水および超純水をイオン量と有機物量によって位置づけしたものです。横軸は右に行くほど水中のイオンが少ないことを示しており、縦軸は数字が1に近いほど有機物量が少ないことを示しています。この図からもわかるように、水道水には、純水や超純水と比べると、多くのイオンや有機物が含まれます。洗浄の最後に器具を純水、または超純水で十分にすすぐことによって、器具表面の不純物を減らせることが期待できます。

図1 水道水、純水および超純水のイオン量と有機物量での位置づけ
(出典元:メルク『超純水と純水の定義』)

精密な実験の器具を超純水で洗浄すべき理由

微量元素分析などの特に精密な実験の場合には、器具の洗浄にも、純水より純度の高い超純水を使うことが望まれます。超純水は、純水に紫外線処理やイオン交換などを施すことで、高度に精製された水です。水質の指標となる「比抵抗値(電解質の総量の指標:イオンが多く含まれるほど値が低くなる)」が、純水では1~10 MΩ・cm程度に対して、超純水は18 MΩ・cm以上であり、それだけ電解質が取り除かれていることがわかります。また、超純水では紫外線照射により有機物を分解することで、全有機体炭素(Total Organic Carbon、以下TOC)値を5 ppb以下にまで抑えることが可能です。

超純水の特徴的な性質の一つが、「他の物質を取り込みやすい」ということです。そのため超純水は、別名「ハングリーウォーター」とも呼ばれます。この性質から、超純水で洗浄することで、目に見えないイオンや有機物までも最大限に取り除くことが期待できます。これを利用して、超純水は半導体などの精密機器の製造過程でも使われています。

半導体の製造では薬品を利用したエッチングによる配線を行い、余分な薬品は水で洗い流します。洗浄の工程で使われる水の品質は大変重要で、洗浄水に少しでも不純物が含まれれば配線をショートさせたり、配線の不備を招いたりします。洗浄水の水質が製品の品質を左右し、ひいては生産コストにも影響します。そのため、半導体の洗浄過程では高度に精製された超純水が欠かせません

このように半導体の製造過程で使用されている超純水の性質は、ライフサイエンスなどでも、精密な実験で用いる器具の洗浄に活かされます。超純水で洗浄することによって、器具表面に残ったわずかな不純物までも最大限に取り除くことができるのです。

超純水による効果的な洗浄方法

実験結果に影響を及ぼさないためには、器具の洗浄水の質だけではなく、洗浄方法にも注意する必要があります。図2は、超純水による洗浄回数や洗浄方法を変えて、容器に残存するTOCを測定した結果のグラフです。「超純水2回洗浄」は容器を超純水で2~3回すすいだのみで、容器上部にまでは十分に超純水が行きわたっていないものです。「超純水5回洗浄」は超純水で5回以上すすぎ、さらに容器上部まで超純水を満たしたものです。「容器を介さない超純水」とは、超純水製造装置内でのTOC値を指します。

この図からもわかるように、十分に超純水ですすいだ容器(超純水5回洗浄)では容器に残存するTOC値を低く抑えることができます。

図2 超純水での洗浄回数による容器に残存するTOCの変化(メルク調べ)

「半導体工業における純水の役割とその廃液処理技術」 林 一樹.
Journal of Society of Inorganic Materials, Japan 12, 559-564 (2005)

超純水で洗浄した器具の保管方法

さらに気をつけたいのが、洗浄後の器具の保管方法です。図3は超純水の採水後の比抵抗値の変化を表したグラフです。超純水は空気中の二酸化炭素やイオンなども容易に取り込むため、採水直後には18.2 MΩ・cmであった比抵抗値が、60分後には約4 MΩ・cmまで下がっていることがわかります。せっかく超純水で洗浄してもそのまま器具を空気にさらして放置しておけば、空気中から取り込まれた不純物が器具表面に残る原因になります。

図3 超純水採水後の比抵抗値の変化
(出典元:メルク技術資料『超純水を使用するために守るべき10のルール』p.5)

これを避けるためには、洗浄後の器具を超純水、または高純度の硝酸を加えた超純水で封入して保管するとよいでしょう(図4)。こうすることで器具の内部が空気と接するのを防ぐことができます。使う直前には、再び超純水ですすいでから使用してください。

図4 洗浄後の容器に、超純水もしくは高純度の硝酸を添加した超純水を封入して保管する
(出典元:メルク技術資料『超純水を使用するために守るべき10のルール』p11)

超純水・純水製造装置を見直すことも重要

普段の何気ない洗浄を効率的に行うために、超純水・純水製造装置をよく検討することも重要です。以下のような特徴をもつ超純水・純水装置の使用を検討してみるとよいでしょう。

  • 精製量が多いもの
    洗浄には大量の水を使います。精製量が多いものを選ぶと、洗浄にも十分な量の純水や超純水を供給することができます。「純水や超純水が足りずに洗浄できない」という事態を防ぐためにも、精製量を確認することが重要です。

  • フットペダルがある
    フットペダルがあると、両手を使って効率よく器具の洗浄をすることができます。ハンズフリーで採水操作ができるのでムダなく水を出すことができ、コスト削減にも繋がります。

また、器具が多い場合には、洗浄機を使えば、手間と時間を省いて効率よく洗浄を行うことができます。洗浄機と超純水・純水製造装置を組み合わせた洗浄機システムの使用も検討するとよいでしょう。

このように、純水や超純水の特性を改めて考えて洗浄方法を工夫したり、洗浄装置を見直したりすることで、より効率的に洗浄を行えるかもしれません。普段何気なく行っている洗浄方法を一度検討してみるとよいでしょう。

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