【DEPC処理水ユーザー必見】RNA実験は超純水製造装置/Biopak®が決め手!

【DEPC処理水ユーザー必見】RNA実験は超純水製造装置/Biopak®が決め手!

RNA実験ではRNaseにご用心

遺伝子発現の解析では、RNAを抽出して定量・定性分析を行います。RNAを定量する代表的な方法は、逆転写反応を施した上で定量PCR(quantitative PCR: qPCR、またはリアルタイムPCR)です。RNAの定性分析には、RNAの分子量に応じて電気泳動で分離するノーザンブロッティングや、固定された組織や細胞内でRNAの局在を特定するIn situ ハイブリダイゼーション(ISH)などがあります。最近では、次世代シーケンサーを利用してRNAを網羅的に解析するトランスクリプトーム解析があります。

これらRNAを扱う実験で注意しなければならないのは、RNA分解酵素であるリボヌクレアーゼ(ribonuclease: RNase)の存在です。RNaseは細胞内だけでなく、私たちの皮膚にも存在するため、RNAを扱う実験をするときはグローブを常に着用することが求められます。また、RNaseは環境にも多く存在するため、実験器具や試薬だけでなく超純水もRNaseフリーのものを購入するか、事前にRNaseを不活化するように処理する必要があります。

DEPC処理水の特徴

水のRNaseを不活化するDEPC処理

ジエチルピロカーボネート(diethylpyrocarbonate: DEPC)を用いて水のRNaseを不活化する方法が知られています。DEPCは、RNaseの活性中心にあるヒスチジン残基を修飾することで不可逆的にRNaseを不活化します。DEPCはオートクレーブ処理すると二酸化炭素・エタノールに分解され、オートクレーブ後の水はRNaseが不活化されたDEPC処理水が得られます。

DEPCを使ってRNase不活化のDEPC処理水を作製する手順は以下になります。

  1. 密閉できる容器に超純水を 1000mL入れ、DEPCを 1mL添加する(最終濃度 0.1%になるように DEPCを添加)。
  2. 容器をよく振り、DEPC を溶解する。
  3. 37℃で 2 時間以上置いておく(室温でオーバーナイトでも可)。
  4. 容器のふたを緩め、オートクレーブ(121℃ ,20 分)をかけて DEPC を不活性化する。
  5. オートクレーブ後、室温で保存する。

DEPC処理のデメリット

DEPCを用いたRNase処理は長らく使われ続けていますが、いくつかの欠点があります。
まず、DEPC自体に発がん性が指摘されており、取り扱いには十分注意する必要があります。また、DEPC処理水を作成するのに試薬調製やオートクレーブなど、複数の工程があるため、RNaseフリーの水が必要なときにすぐに使えないという欠点もあります。さらに、溶液中のDEPCはオートクレーブで分解できるものの、完全にDEPCを除去できなかった場合にはその後の実験に影響を及ぼす可能性があります。なお、DEPC処理水は、Trisバッファなどのアミン基を含む溶液では使用できないという制限があります。

メルクのアプリケーション POD-Pak/Biopak®

限外ろ過膜でRNaseを除去する

RNaseフリーの水を用意する方法として、DEPCを用いるのではなく、超純水からRNaseを物理的に除去する方法もあります。メルクのBiopak®は、メルク製の超純水製造装置の採水口に装着する限外ろ過膜です。Biopak®の中にはポリスルホン製の中空糸形状の繊維が無数にあり、分子量約13,000以上の高分子を分離します(図1)。この仕組みにより、RNaseはもちろんのこと、DNaseやエンドトキシンなどを除去します。限外ろ過膜の詳しい説明はこちら

図1 :中空糸形状

メルク超純水製造装置/Biopak®で処理した超純水と効果

Biopak®のメリットは、Milli-Qのような超純水製造装置があればすぐにRNaseフリー水を採水でき、試薬調整やオートクレーブなどの手間がかからないことです。また、発がん性のあるDEPCを使わないため、作業者が安全に実験をすることができます。水に化学薬品を添加しないので、他の試薬との干渉の心配もありません。さらに、限外ろ過膜は、単にRNaseを不活性化するのではなく、水からRNaseを除去することができ、RNaseフリーの超純水を得ることができます。

なお、Biopak®は目安として3か月ごとに交換する必要がありますが、交換手順は簡単で、ランニングコストは市販のDEPC処理水やRNaseフリー水よりも安価で済みます(表1)。

表1:市販の生化学、分子生物試験用水との価格比較

メルク超純水製造装置/Biopak®の超純水はDEPC処理と同等の性能

では、メルク超純水製造装置/Biopak®の超純水の実力はいかがでしょうか。
次の実験で検証しました(1)

超純水にRNase Aを添加し、3つ分けてそれぞれ以下の操作をしました。

  1. DEPCで処理しオートクレーブ滅菌したもの(DEPC Treatment)
  2. Biopak®にて限外ろ過処理したもの(Ultrafilteration)
  3. 何も処理しなかったもの(No Treatment)

その後、リボソームRNAを各溶液に加え、20分間インキュベートした後、変性条件下でアガロースゲル電気泳動を行いました(図2)。

図2:メルク超純水製造装置/Biopak®の超純水における性能検証フロー

その結果を図3に示します。

DEPC処理水(DEPC Treatment)とBiopak®で処理した超純水(Ultrafiltration)は、リボソームRNA は分解されずにバンドがしっかりと確認できます。対照として、RNase溶液を未処理(No Treatment)のままにしておくと、リボソームRNAは分解されました。このことから、Biopak®によるRNase除去の効率は、DEPC処理によるRNase不活化と同等であることが確認されました。

図3: DEPC処理水、BioPak超純水、未処理水による16sと23sリボソームRNAバンド

まとめ

DEPC処理水と、超純水製造装置/Biopak®超純水を比較したものを表2にまとめました。

  メリット デメリット
DEPC処理水 ・RNaseを不活化できる ・薬品が必要
・細胞毒性や発がん性あり(取扱い注意)
・無毒化にオートクレーブ必要
・DEPC水を作るまでさまざまな工程があり、すぐに使えない
・DEPCは、処理後に完全に除去されないことがあり、残留物が試料や実験に影響を及ぼす可能性があるため、十分な注意が必要
・Trisバッファなどのアミン基を含む溶液では使用できない
・市販品は高価
メルク超純水
(BioPak搭載)
・RNaseフリーの超純水を装置からすぐに採水できる
・試薬調整やオートクレーブなどの手間がかからない
・安価
・DEPCを使わないので安全
・超純水製造装置が必要
・Biopak®は約3か月に一度、交換する必要

表2: DEPC処理水と超純水製造装置/Biopak®超純水のメリットとデメリット

メルクの超純水製造装置/Biopak®のRNaseフリーの超純水は、DEPC処理水と比較して、安全かつ安価であり、使用したいときに直ぐに採水することができる点などでRNA実験には最適です。

 

参考資料

1)Mabic S, Kano I. 2003. Impact of Purified Water Quality on Molecular Biology Experiments. 41(4):
https://doi.org/10.1515/cclm.2003.073

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