純水とは?性質や使用用途、活用シーン、精製方法を徹底解説!
実験や試験で日常的に使う純水。実は一口に純水と言っても、精製方法や水質はさまざまです。
身近すぎて普段あまり意識することはないかもしれませんが、水は実験や試験の信頼性と再現性を確保する上で非常に重要なものです。不純物が含まれていることによって、実験結果に大きな影響を与える場合もありますので、目的に合った水選びをすることが大切です。
この記事では、純水の性質や使用用途、精製方法による水質の違いについてご紹介します。
純水とは?
純水は、実験や試験を行う方にとっては非常に身近な存在かもしれませんが、そもそも純水とは何なのか、なぜ実験で純水を使うのかなど、言われてみればわからないという方も多いのではないでしょうか?
純水とは、水道水中の不純物を精製することで取り除いた水のことを指します。精製方法に指定はなく、どんな方法でも、精製を行えば純水といえます。残った不純物の量にも決まりはありません*1。
とはいえ、不純物を除去する処理を行なっているので、水中の不純物が析出してできる「スケール」が水道水よりも残りにくいというメリットがあります。
また、水はさまざまな物質を溶かし込みやすいという性質がありますが、不純物が除去された純水ではその性質がより顕著になります。
そのため、純水を使って容器や器具の洗浄などを行うことで、目に見えないイオンや有機物を、水道水よりも効率的に取り除くことができると期待されるのです。
純水と超純水の違い
超純水は、純水と同じく実験用水として不純物が取り除かれた水ですが、純水と違って、水中のイオン量を表す単位である比抵抗が18.2 MΩ・cm(25℃)以上という基準があります*1。
精製方法にも、指定があり、逆浸透膜(Reverse Osmosis膜、以下RO膜)、イオン交換樹脂、活性炭、紫外線、限外ろ過膜などを組み合せて精製されます。
純水の使用用途
純水は、不純物が少なくスケールが残りにくい、物質を溶かし込みやすいという特徴があることから、理化学分野だけでなく、ボイラー用水や飲用水の製造など、さまざまな用途に使用されています(表1)。
純水の使用用途 | 目的 |
---|---|
ボイラー用水 | ボイラー内の腐食やスケールの生成を防ぐため |
食品・飲料の製造 | 味や匂いなどの品質を均一化するため |
理化学実験 | 結果の再現性を得るため |
実験器具等の洗浄 | 不純物をできる限り除去するため、不純物の再付着を避けるため、水垢を避けるため |
(出典元:日本規格協会. JIS B 8223:2015 ボイラの給水及びボイラ水の水質、日本ミリポア株式会社ラボラトリーウォーター事業部. 水は実験結果を左右する!超純水超入門 データでなっとく,水の基本と使用のルール. 羊土社. 2005. より作表)
純水の主な使用用途の一つとして、理化学実験が挙げられます。水中の不純物が測定に影響を与える場合も多いことから、再現性を担保するためには常に一定の水質が求められるためです*1。
また、厳密な実験の場合、実験器具の表面に残ったわずかな不純物も最大限取り除く必要があることから、器具の洗浄に純水や超純水が使われることもあります。
ただし、先ほどもお伝えした通り純水には明確な水質の規格がないため、使用の目的に合わせて水質には留意する必要があります。
純水の種類と精製方法
純水は水道水に対して何らかの精製処理を行った水のことを指し、水質は精製方法により異なります。精製方法に明確な定義はありませんが、ここでは一般的な純水の種類とその精製方法をいくつかご紹介します。
蒸留水
物質の揮発性および沸点の違いを利用して、不純物を含む水から気化した水だけを回収する方法(蒸留)によって精製されます(図1)。
原理上、水の沸点に近い成分の分離は難しく、特に、水よりも沸点が低い物質の場合、混入しやすいという短所があります。
水より沸点の高い物質は全般的に除去できる一方で、精製速度が遅い、蒸発蒸気と一緒に原水が飛散する飛沫同伴と呼ばれる現象によって水質が劣化する、精製において多量の熱エネルギーと冷却水を必要とするなどのデメリットがあります*1。
逆浸透水(Reverse Osmosis水、以下RO水)
半透膜(水は透過させるが、イオンや分子はほとんど透過させない膜)を隔てて、濃度が低い溶液(希薄溶液)と濃度が高い溶液(濃厚溶液)とが接するとき、希薄溶液側の水は、浸透圧と液面差による圧力が釣り合うまで、濃厚溶液側へ移動します。これを、浸透作用と呼びます。
しかし、濃厚溶液に浸透圧以上の圧力をかけることで、濃厚溶液側から希薄溶液側へ水分子と低分子物質のみを透過させることができます。RO水は、この逆浸透と呼ばれる原理を利用することで、水道水中の不純物を除去しています(図2)。
逆浸透は、水道水中の主な4種類の不純物(無機物、有機物、微粒子、微生物)をそれぞれ94〜99%取り除くことができる効果的な方法です*1。
イオン交換水
有機基材にイオン性官能基を化学的に結合させたイオン交換樹脂を用いて、水中のイオンを除去することによって精製されます(図3)。
イオン交換樹脂としては、スルホン酸を表面に持つ陽イオン交換樹脂や、四級アンモニウムイオンを持つ陰イオン交換樹脂などが用いられます。イオン交換によってイオンが除去された水は、脱イオン水とも呼ばれます。
イオン交換は、イオンを効率的に除去できる一方で、イオンの吸着容量に限界があり、イオンを十分に除去できず、水質変動を生じてしまうことがあるので、注意が必要です。
また、イオン交換樹脂自体が有機物であるので、酸化分解や機械的破砕などによって有機物の溶出が生じることもあります。微生物を含む、電荷を持った有機物が吸着されやすく、有機物汚染による水質劣化も問題になります。
イオンの除去能力が低下したイオン交換樹脂は、酸やアルカリなどの薬液を用いて、官能基を再生して繰り返し使用することができますが、こうした有機物汚染による精製能力の低下は、官能基の再生を行っても元に戻ることはありません*1。
Elix水
Elix水は、RO膜と連続イオン交換(Electric Deionization、以下EDI)によって精製されます。
EDIは陽イオン交換膜と陰イオン交換膜を交互に積層したイオン交換樹脂の両端に電極で直流電流を流すことで、イオンを連続的に除去する精製方法です。RO膜は、先ほどお伝えした通り、主な4種類の不純物(無機物、有機物、微粒子、微生物)をそれぞれ94〜99%取り除くことができる高性能な膜ですが、それに加えて連続イオン交換を行うことで、イオンも効率的に除去することができます。
精製水
医薬品の性状および品質の適正を図るために必要な規格や基準、標準的な試験法などが定められた公的な規範書である日本薬局方において、精製水はイオン交換、蒸留、逆浸透または限外ろ過などを単独あるいは組み合わせたシステムにより、『常水』より製したものであり、導電率は2.1 μS/cm以下(25℃)、有機体炭素は0.50 mg/L以下と定義されています*2。
純水と同様に精製方法に厳格な規定はありませんが、定められた水質を順守する必要があります。
また、医薬品業界以外では、精製水を純水と同義で使用している場合もあります。
目的にあった純水を選ぼう
販売されている純水装置の多くは、精製法を単独あるいは組み合わせたシステムによって、水道水中の不純物を除去しています。
しかし、これまでにご紹介した通り、すべての精製法にはそれぞれ長所と短所があり、除去できる不純物の種類や量に違いがあるため、得られる水質は方法によって大きく異なります*1。
不純物が含まれていることによって実験結果に大きな影響を与える場合は、水選びは特に重要です。
身近すぎて普段は意識することが少ないかもしれませんが、実験や試験に用いる水は、信頼性と再現性に関わる重要なもの。この機会に、実験に用いる純水を見直してみてはいかがでしょうか。
参照元
*1 日本ミリポア株式会社ラボラトリーウォーター事業部. 水は実験結果を左右する!超純水超入門 データでなっとく,水の基本と使用のルール. 羊土社. 2005.
*2 厚生労働省. 第十八改正日本薬局方. 2021
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