シリカとは?純水装置の大敵となる理由
日本の水にシリカが多く含まれる理由
私たちが生きていく上で、必要不可欠な存在である水。蛇口をひねれば、当たり前のように水道水が出てきますが、この水の源は雨水です。地表や地下を流れる際に、土壌中の様々な成分が雨水に溶け込みます。
水には「軟水」と「硬水」があり、硬度は、水に含まれるカルシウムとマグネシウムといったミネラルの量によって定義されます。日本の水道水が「軟水」であるのに対し、欧州ではほとんどが「硬水」。日本は島国であるとともに、国土の約73%を山地が占める山国であるため、川の長さが短く水流が早いこともあって水に含まれる成分が少ないとされています。欧州では、地下水や河川水が、石灰質の豊富な地層を時間をかけて流れてくるため、ミネラル成分が水に溶け込んで硬水になるのですね。
一方で、日本は火山国であるため、土壌には花崗岩、石英粗面岩などケイ酸が多く含まれています。このケイ酸の正体が「シリカ」。シリカとは二酸化ケイ素(SiO2)、もしくは二酸化ケイ素によって構成される物質の総称です。
図1は、欧州と日本の水の導電率、硬度、シリカを比較したものです。
日本の中でも特にシリカ濃度が高い地域があります。
- 東京、茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉の1都5県にわたる利根川流域
- 千葉県内房
- 静岡県沼津、三島、富士周辺
- 長野県の温泉地周辺
- 香川県から愛媛県今治市までの海沿い
- 北九州から鹿児島県の鹿児島本線沿い
- 長崎県島原周辺
シリカが純水装置の大敵である理由
「純水」を製造するためには、不純物を取り除く必要があります。シリカは不純物の中でもやっかいな物質の一つで、「缶石」を作りやすいという性質を持っています。
缶石とは、給水中に含まれている不揮発性溶解質および不溶解性物質の濃度が水の蒸発によって増加し、これらが析出して伝熱面に付着したもののこと。成分は主にカルシウムおよびマグネシウムの硫酸塩、炭酸塩、ケイ酸塩および水酸化塩です。缶石は水処理装置の水質低下や蒸留効率(速度)の低下、さらにはヒーターの過熱破損の原因となります。
シリカはイオン交換方式でも除去されますが、イオン以外の不純物は除去できず、逆に、イオン交換樹脂からの溶出物で純水を汚染してしまうといった注意点もあります。
シリカ除去に関しては、イオン状シリカはイオン交換方式で除去することができますが、弱イオンであるシリカは樹脂の飽和が近づくと、他の強イオンがイオン交換されてしまい、それまで捕捉されていたシリカを一気に放出することがあります(図2)。逆イオン交換反応によりシリカの漏洩が起こるのです。この現象によって、イオン交換樹脂を通す前の水よりも、通した後の水のほうがシリカ濃度が高くなります。メンテナンスを怠ると、大変なことになってしまうんですね。
次に、イオン交換方式で処理した純水のシリカ濃度の推移を見てみましょう(図3)。横軸は純水処理量、縦軸はシリカ濃度を示しています。
シリカ濃度(図3の▲)は8,000L程度から上昇が見られ、10,000Lでは、処理前(図3の◆)と同等、さらに処理が進むとそれを上回ることがわかります。
研究室で純水装置を使用していて、「ボイラーの中が白くなってしまう」「ヒーターに白い付着物がついてしまう」「イオン交換樹脂の交換頻度が多い」などの症状があったら、それは水道水中のシリカ濃度が高いことが原因かもしれません。
シリカ濃度が高くても水道水は選べませんが、シリカ除去に最適な純水処理方式を使用した純水装置もあります。上記のような症状が目立つようでしたら、新しい方式の純水装置の導入も視野に入れてみてはいかがでしょうか。
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