徹底比較!水垢付着・シリカ除去に最適な純水処理方式

徹底比較!水垢付着・シリカ除去に最適な純水処理方式

水垢、シリカの原因は純水の水質にあり

耐候性試験で気をつけなければならない純水の水質。これに頭を抱える技術者の方も多いのではないでしょうか。

耐候性試験とは、サンプルに太陽光に近似した人工光源の照射を行い、降雨に模擬した水の噴射を行うもの。自然環境に起因する劣化への耐性を短時間に評価するために必要な実験です。

この耐候性試験では、純水を使用します。しかし、純水の水質によって、サンプルに白い水垢が付着し、サンプルの判定時に色素や光沢度に影響を及ぼし正しい試験結果を判定できないことがあります。

この水垢の主要な構成成分こそシリカ。サンプルへの水垢の付着を防止するためには、純水中のシリカを安定的に除去する必要があります。純水の処理方式は様々な種類がありますが、この記事では、イオン交換方式、逆浸透膜(RO)-イオン交換方式、RO-EDI方式の3種類を取り上げ、シリカ除去に関して詳しく比較していきます。

シリカ除去に最適な純水処理方式は?

それでは、さっそく見ていきましょう。以下、除去に不向きなものを△、向いているものを◎で表しています。

  1. イオン交換方式……シリカ除去△

    イオン交換方式は水中のイオンを除去する一般的な方法です。しかし、イオン以外の不純物は除去できず、逆に、イオン交換樹脂からの溶出物で純水を汚染してしまうといった注意点もあります。

    水垢の原因であるシリカ除去に関しては、イオン状シリカはイオン交換方式で除去することができますが、弱イオンであるシリカは樹脂の飽和が近づくと、他の強イオンがイオン交換されてしまい、それまで捕捉されていたシリカを一気に放出することがあります(図1)

    図1 陰イオン交換樹脂に吸着されたイオン状シリカの放出

    イオン交換方式は、イオン交換樹脂の飽和とともに水質が変動し樹脂飽和時に強イオンによる逆イオン交換でシリカの漏洩が起きるため、シリカによる水垢の問題を解決することができません。

  2. 逆浸透膜(RO)-イオン交換方式……シリカ除去△

    逆浸透膜(RO)-イオン交換方式は、図2のようにイオン交換の前段にイオン除去率90%以上のRO膜を用いる方式です。RO膜はイオン以外にも有機物、微粒子、微生物を除去し、後段のイオン交換樹脂の長寿命化と安定をもたらす純水処理方法です。

    図2 逆浸透膜(RO)-イオン交換(DI)純水装置

    しかし、RO膜は長期間の運転で除去率が低下すると、イオン状シリカが漏洩することがあります。

    RO膜の透過水量を100L/時に調整し、RO-イオン交換方式で処理した純水の導電率とシリカ濃度の推移を見てみましょう(図2)。横軸は純水処理量、縦軸はシリカ濃度とイオン量の目安となる導電率を示しています。

    図3 RO-イオン交換方式によるシリカ除去

    イオン量の目安である導電率(図3の□)は10,000L弱から上昇し始めているのがわかります。しかし、シリカ濃度(図3の▲)は導電率が上昇し始める前の8,000L程度から上昇が見られ、10,000Lでは、処理前の逆浸透水(図3の◆)と同等、さらに処理が進むとそれを上回ることがわかりました。この結果から、RO-イオン交換方式では、安定的なシリカ除去は難しいことがわかります。

  3. RO-EDI方式……シリカ除去◎

    EDI(Electric DeIonization:連続イオン交換)は、電気透析のように、陽極・陰極の2枚の電極間に陽イオン交換膜と陰イオン交換膜を交互に配置し、膜間に陽イオン・陰イオン交換樹脂を混合した混床イオン交換樹脂を封入した構造です(図4)。

    図4 EDIの概念図

    電気的な力で連続的にイオンを除去するため、イオン交換樹脂が飽和することなく、安定してシリカを除去することができます。イオン交換方式とRO-EDI方式の水質を比較したものが図5です。

    導電率について、イオン交換方式(図5の□)では、純水処理が進むにつれ上昇していきますが、RO-EDI方式(図5の■)では値がほとんど変動しません。シリカ濃度についても同じことが言えます。

    図5 EDI の水質安定性

    前述の2つの純水処理に比べ、RO-EDI方式は、低シリカで安定した水質を保つ純水を採水できます。つまり、耐候性試験への供給水としてRO-EDI水を使用すれば、サンプルに水垢が付着することなく、色素や光沢度などにおいて正しい試験結果を判定できるのです。

RO-EDI水は、JISの厳しい規定もクリアできる

従来の純水処理方式(イオン交換およびRO-イオン交換)では、JISおよびISO3696で要求される水質を常にクリアすることが難しいとされています。しかし、安定した水質の純水を供給できるRO-EDI方式は、シリカによる水垢の問題は解決することでき、耐候性試験の結果の安定性・信頼性に貢献することができます。

耐候性試験に用いる純水は厳しく規定されています。以下のJIS B 7753、JIS B 7754、JISK5600-7-7についての解説文と、ISO3696の図を参考にしてください。

<JIS B 7753 サンシャインカーボンアーク灯式の耐光性試験機及び耐候性試験機>

水質:使用する水のpHは6.0-8.0とし、用途に応じて次に規定する水を用いる。

  • 噴霧用の水
    試験片に付着物が生じない水で、電気伝導率5µS/cm以下、かつ、全固形物1ppm以下であることが望ましい。(シリカ成分は、試験結果に影響するので取り除くことが望ましい。)
  • 試験槽冷却用の水
    試験槽内壁などに、さびを生じさせない程度の清浄な水。
  • 加湿器用の水
    水あか又はさびを生じさせない水。

<JIS B 7754 キセノンアークランプ式耐光性及び耐候性試験機>

水質:使用する水のpHは6.0-8.0とし、用途に応じて次に規定する水を用いる。また、必要に応じて脱イオン装置などを用いる。

  • 噴霧用の水
    試験片に付着物が生じない水(噴霧用の水は、試験結果に影響するので、試験材料に応じて電気伝導率を適宜選択することが望ましい。)。
  • 試験槽冷却用の水
    試験槽内壁などに、さびを生じさせない程度の清浄な水。
  • 加湿器用の水
    水あか又はさびを生じさせない水。
  • キセノンアークランプの冷却用の水
    キセノンアークランプ(水冷式)およびフィルターに付着物が生じない水。
  • ウィック吸湿用の水
    ウィックの吸湿性を低下させたり、給水管に目詰まりが生じたりしない程度の清浄な水。

<JISK5600-7-7 塗料一般試験方法-第7部:塗膜の長期耐久性-第7節:促進耐候性(キセノンランプ法)>

水質:使用する水のpHは6.0-8.0とし、用途に応じて次に述べる水を用いる。

湿潤に使用する蒸留水またはイオン交換水は、2µS/cm以下の電導度で、蒸発残分が1ppm以下の、ISO3696の2級に該当しなければならない。水の再使用は、試験板の表面に析出物が生じる危険性があるので、ろ過してISO3696の2級の水になるまで用いてはならない。このような析出物は誤った結果をまねく。

ISO3696 Grade 2

一口に純水といっても、処理方式により水質は大きく異なります。研究室で使用している純水装置で白い水垢が目立つようであれば、RO-EDI方式の純水装置の導入も視野に入れてみてはいかがでしょうか。