効果検証!タンクの水質を守るエアベントフィルター
外気からの汚染を防ぐエアベントフィルター
研究室では純水と超純水の両方が必要になることがよくあります。そこで使用されるのが、純水装置と超純水装置で構成される超純水システムです。超純水はいきなり水道水から作られるわけではありません。まずは水道水を純水に変え、それから純水を超純水に変えるのです。
純水・超純水製造装置では、純水装置の精製速度が超純水装置の精製速度より遅いため、純水を一時貯留するためのタンクが必要となります。純水は空気に触れると水質が下がるため、タンクは常に密閉されていることが理想です。しかし、タンクに水が出入りする際、大気とタンク内の圧力を等しくするために開放部分が必要となります。(開放部を作っておかないと、タンクが膨らむか凹んで破損の原因となります)
研究室の空気には二酸化炭素、微生物などが存在し、また揮発性有機化合物が含まれることもあります。空気中の炭酸ガスがタンク内の純水に溶解すると、重炭酸イオンとして存在することになります。重炭酸イオンはタンク内純水の水質を劣化させるとともに、超純水装置における陰イオン交換樹脂の寿命にも影響を及ぼします。また、研究室の環境には、微生物や有機物が空気中に漂っています。それらの混入も、純水の水質を低下させます。
そうした外気からの汚染を防ぐために必要不可欠な存在が、空気を抜くエアベントフィルターです。ウィルスや花粉をブロックするマスクのようなもの、とイメージするとわかりやすいでしょう。人間のマスクに様々な種類があるように、エアベントフィルターにも種類があります。ここでは、活性炭を含むエアベントフィルターの効果を検証していきます。
検証① 活性炭は有機物の混入を防ぐことができるのか
一般的なエアベントフィルターは、微生物や微粒子を除去するためのフィルターと二酸化炭素を除去するためのソーダライムからなります(フィルターだけの場合もあります)。しかし、このエアベントフィルターでは純水への有機物の混入を防ぐことができません。そこで、図1のようにエアベントフィルターに活性炭を用いることで有機物を除去できるか、検証してみました。
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方法
活性炭を含むエアベントフィルターおよび含まないエアベントフィルターをそれぞれ装着した30Lタンクに、Elix(逆浸透膜+EDI連続イオン交換)水を供給。8時間に1回の頻度でタンク内の水を排水・給水し、排水時にタンク内の純水のTOC(超純水の有機物量)をタンク出口にて測定しました。 -
結果
活性炭入りエアベントフィルター(図2の▲)を用いた場合、タンク内純水のTOC濃度は活性炭を用いなかったエアベントフィルター(図2の■)と比較して60-100倍低いことがわかりました。つまり、活性炭を含むエアベントフィルターは、外気由来の水質汚染を防ぐ効果が高いということです。
検証② エアベントフィルターは水質低下を防ぐことができるのか
では、エアベントフィルター自体は超純水の水質にどのくらい影響を及ぼすのでしょうか。一般的な超純水システムを用いてタンクに活性炭入りエアベントフィルターを設置し、エアベントフィルターの効果を検証してみました。
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方法
Elix 10→60Lタンク→ Milli-Q の超純水システムで精製される超純水を試水として用い、TOCを測定。操作中2日間のみ故意にタンクのふたを開け、エアベントフィルターを用いない状況を起こしました。超純水の採水・分析は1日2回、午前と午後に約20Lずつ行い、採水後、タンクに残留した純水のうち、さらに20Lの排水を行いました。 -
結果
図3にて矢印で示している4ポイント・2日間が、故意にタンクのふたを開けて超純水システムを運転した日です。他の日に比べ、タンクのふたを開けている日の午前のみ、超純水のTOCが高いことがわかります。
午前の場合、超純水装置への供給水はタンク内に一晩放置されていたElix水、午後の場合は、同日午前の分析後にタンクに供給されたElix水です。午前に採水した超純水の供給水は午後の採水時に比べて外気と接触している時間は長く、午後はタンクを開放した影響が小さいため、超純水のTOCの変化がほとんどないものと考えられます。
装置にエアベントフィルターがついていない場合は、タンクのふたを開けっぱなしにしている状態に近くなります。すなわち、エアベントフィルターは最終的に得られる超純水水質にまで影響を及ぼす、超純水システムにとって非常に重要な役割を担っているのです。
タンクの水質を守るために欠かせないエアベントフィルター。エアベントフィルターは水と接しておらず、また目につきにくいタンク上部に設置されているため、定期的に消耗品の交換をされている方でも意外と交換を忘れてしまうこともあります。エアベントフィルターが定期的に交換されているかチェックしてみてください。
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