ライフサイエンス研究者におすすめする8冊の本
研究の知識を深め世界を広げてくれる本
この記事では複数の研究者への取材をもとに、定番の専門書から研究室のトラブルを回避しモチベーションをアップさせる本まで、ライフサイエンスの研究者におすすめの本を紹介します。まずは、定番の本から!
- 『細胞の分子生物学』(『THE CELL』)
ライフサイエンス全般をカバーする基本中の基本の分厚い本。第5版の発行時から新たに出たデータなどを加えて改定された第6版の邦訳版が2017年に発売されました。イラストも多くわかりやすいので、これからライフサイエンスの研究を始めようとしている人や、大学院入試の勉強に最適です。ライフサイエンスのほとんどの領域をカバーしているので辞書代わりにもなり、長く使える1冊です。英語力をつけたい人は原版(『THE CELL』)を読むとよいでしょう。
『細胞の分子生物学』より、さらに専門的な本を読みたいという人には次の3冊がおすすめです。
- 『ギルバート発生生物学』(『Developmental Biology』)
発生生物学のバイブルとして多くの研究者に愛読されている『Developmental Biology』の邦訳が2015年に発売されました。英語で読むのはハードルが高かったという人は日本語版から挑戦してみてはいかがでしょうか。美しい写真とわかりやすい図で発生生物学を体系的に理解できます。
- 『分子細胞免疫学』(『Cellular and Molecular Immunology』)
世界中で好評を得ている免疫学テキスト。第9版の邦訳が2018年3月に出ています。300枚以上のフルカラー画像で免疫のメカニズムや工程を視覚的に理解できます。基本的な情報から最先端の知見まで網羅。今回の改訂版から、本を買うと日本語・英語版の電子書籍も付いてきます。
- 『スタンフォード神経生物学』(『Principles of Neurobiology』)
神経科学分野の第一線で活躍する研究者が、スタンフォード大学で行った授業をもとに執筆した名著。多岐にわたる複雑な神経科学の研究や原理が、分子レベルの研究からわかりやすく解説されています。邦訳は2017年に刊行されています。
自分の分野に該当する人はもちろん、そうでない人も他分野の専門書を読むことは重要です。アイデアはどこから生まれるかわかりません。領域を超えたところに、宝の鉱脈があるかもしれないのです。また、最近では複数の専門分野にまたがる研究から新しい成果が表れており、自分の分野の知識だけでは通用しなくなっています。
どの本も分厚く、難解な箇所があちこちにあります。ひとりで読むとくじけてしまうという人は、有志を集めて「輪読会」を開くのもおすすめです。輪読会では、参加者それぞれにページの担当を割り振り、その回の当番の人が読んだ内容を解説します。半年~1年で1冊読み終えることを目安に計画してみましょう。
研究生活のトラブルを回避しモチベーションを上げてくれる本
来る日も来る日も実験をし続けているのになかなかデータを取れずに落ち込んだり、研究室内の人間関係がうまくいかずに悩んだり……そんなときに研究者の先輩たちが読んで元気になった、モチベーションをアップさせてくれる本を紹介します。
- 『ラボ・ダイナミクス―理系人間のためのコミュニケーションスキル』
研究室内のトラブルを回避し対人関係を円滑にするコツが書かれた1冊。アメリカの事例が多いので、留学する人は大いに参考になるでしょう。もちろん、日本の研究室でも参考になることが多く書かれています。研究室の人間関係に悩んでいる人や、自分のラボを運営しプロジェクトを進めている研究者は、ぜひ読んでみてください。
- 『精神と物質―分子生物学はどこまで生命の謎を解けるか』
ジャーナリスト立花隆がノーベル生理学医学賞受賞者である利根川進に20時間にわたってインタビューした内容をもとにまとめた1冊。華やかな成果の裏にある泥臭い研究者の生活が生々しく書かれていて、自分もがんばろうと励まされる1冊です。
- 『アイデアのつくり方』
広告代理店の仕事を行う著者によるアイデアの発想法。研究者向けというわけではありませんが、行き詰った研究を脱却するヒントが満載です。<アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせ以外の何ものでもない>という本書の主張を自分の研究テーマに当てはめて考えてみるのも面白いでしょう。
- 『イシューからはじめよ』
ビジネス本のベストセラーですが、実は研究者にも役に立ちます。何かに取り組むときにどうやって課題を設定すればいいかという方法論や、問題を解決するための枠組みをわかりやすく解説してくれる1冊です。
以上、ライフサイエンスの研究者におすすめの本を取り上げました。ここで紹介したように、自分の専門に偏らず、ライフサイエンス全般や、哲学やビジネス分野など別の視野を取り入れれば新たな世界が広がるはず。得た知識は必ずどこかで役に立ちますよ!
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