結合組織の消化に生かされる、粗精製コラゲナーゼとは

結合組織の消化に生かされる、粗精製コラゲナーゼとは

コラーゲンを分解する酵素、コラゲナーゼ

コラゲナーゼとは、タンパク質の一種であるコラーゲンを分解する酵素のことで、ライフサイエンス実験では、主に細胞を分散させる際に使います。

コラゲナーゼは動物性コラゲナーゼと細菌性コラゲナーゼの2つに大きく分けられます。動物性コラゲナーゼはマトリックスメタロプロテアーゼとよばれる酵素群の一つで、発生、分化、器官形成、血管新生、炎症、がんの湿潤転移などで重要な役割を担っています。

一方、細菌性コラゲナーゼは、酸素を必要としない嫌気性細菌のクロストリジウム属細菌(Clostridium histolyticum)から分泌される粗精製のコラゲナーゼです。

精製したコラゲナーゼのType IおよびType IIは、それらの天然コラーゲンおよび合成基質に対する特異性、比活性が異なります。非変性コラーゲンタンパク質内の3本のらせん鎖の2本を切断するコラゲナーゼIの活性は、Collagenase Digestive Unit(CDU)測定で算出されます。また、コラゲナーゼIIの活性は、FALGPA と呼ばれる短い合成ペプチドを基質として測定されます(FALGPA:N-[3-(2-Furyl)acryloyl)]-Leu-Gly-Pro-Ala, 製品番号F5135)。

こうした測定から、粗精製のコラゲナーゼIやIIに比べ、精製したコラゲナーゼ IやIIのどちらも組織消化の効果が低下することが知られています。

粗精製のコラゲナーゼは実際にコラゲナーゼ以外にいくつかの酵素を含む混合物で、それらの作用によって組織を消化します。近年では、手のひらの腱膜などにコラーゲンが異常に沈着することで起こる難病「デュピュイトラン拘縮」にも、クロストリジウム属細菌由来のコラゲナーゼを有効成分とする薬剤が使われています。

コラゲナーゼによる組織消化における注意点

多くのコラゲナーゼ製品は、ラット精巣上体脂肪からの脂肪細胞のリリース、ラット肝臓からの生細胞のリリース、インスリンを作る膵臓のランゲルハンス島のリリースなど、ラットのいくつかの組織について適用試験が行われています。

コラゲナーゼによる組織消化において、下記2点を前もって確認しておきましょう。

  • 組織ドナーの周期について。(組織の消化において処理時間に大きな影響を与えます)
  • 消化バッファーにカルシウムイオンが5mMの濃度で含まれているかどうか。

また、下記の物質はコラゲナーゼ活性を阻害するので注意してください。

  • EGTAやEDTAなどのキレート剤
  • β-メルカプトエタノール
  • システイン
  • 8-ヒドロキシキノリン-5-スルホン酸

活性の高いコラゲナーゼは過剰な細胞死を引き起こす可能性もあります。このような場合、コラゲナーゼの量を減らしたり、BSAや血清(それぞれ<0.5%, 5-10%)を添加したりして細胞を安定化させます。

さらに、コラゲナーゼとクロストリパインやアミノペプチダーゼなどの異なる天然のプロテアーゼの組み合わせによって、異なる哺乳動物組織のコラーゲン消化を互いに補っていると考えられています。そのため、研究者によっては、クロマトグラフィー精製コラゲナーゼとトリプシンやスブチリシンなどのプロテアーゼを混合して組織の消化を検討する場合もあります。

試験研究用に利用されているコラゲナーゼ

クロストリジウム属細菌(Clostridium histolyticum)から分泌される粗精製のコラゲナーゼに関して、1953 年にMandle, I.、MacLennan, J. D.およびHowes, E. L.により発酵と精製のプロセスが示され、シグマ アルドリッチは世界で先駆けてそれらを採用し、改良を加えてより高活性の製品を製造してきました。コラゲナーゼによる組織消化の特性はそれぞれ異なるため、表1のように様々なコラゲナーゼ製品が開発されています。

各ロットについてラットの組織の消化試験を行い、いくつかの製品ではさらに哺乳動物細胞で細胞毒性が見られないことを確認し、それらには「細胞培養テスト済み」と表記しています。主要なコラゲナーゼはろ過滅菌(0.2μmフィルターろ過)した製品もラインナップ。また、CDUとFALGPA測定法に加え、タンパク質分解酵素活性を見るためにカゼイナーゼやクロストリパイン、トリプシン活性を測定しているコラゲナーゼ製品もあります。

カゼイナーゼは哺乳動物組織の消化をアシストするタンパク質分解活性において最も重要です。クロストリパインは実験上の組織消化プロセスで消化にほとんど貢献しないとされているため、粗精製のコラゲナーゼ製品内のクロストリパインは少ないほうが望ましいでしょう。

組織消化のトラブルシューティング(表2)も併せて掲載しておきますので、ぜひ参考にしてみてください。

参考文献

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2. Seglen, P.O., Methods in Cell Biology 13, 29 (1976)
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