逆相HPLCカラムを行う前に知っておいてほしいこと

逆相HPLCカラムを行う前に知っておいてほしいこと

8種類のオクタデシルシリルカラムを比較

オクタデシルシリル(以下、ODS)カラムは、逆相クロマトグラフィーでよく用いられるカラムです。汎用性が高く分析化学の領域で広く用いられています。

ODSカラムの製造にはさまざまな製法があり、メーカーごとにカラムの特性が少しずつ異なります。よって、正確に実験を行うためには、カラムのメーカーやブランドに対応して移動相の溶媒や水の割合を変える必要が生じます。

この記事では8種類のODSカラムを取り上げ、ベンゼン誘導体を溶出するのに必要なメタノール、アセトニトリル、およびテトラヒドロフランと水からなる移動相を比較検証しています。カラムの検討や実験条件の設定の参考にしてください。

カーボン含量の比較

ODSカラムは、メーカーやブランドによってカーボン含量が違います。例えば、SUPELCOSIL LC-Siシリカ(170 m2/g)上にジメチルオクタデシルシラン3.4 μmoles/m2を修飾したものと、Spherosil® XOA 600シリカ(549~660 m2/g)に同様の修飾をしたものとでは、前者が約12%、後者が約34%と、カーボン含量に約3倍の違いがあります。

表1にSUPELCOSIL LC-18と7種の他社製ODSカラムのODS充填剤の特性を示しました。

表1 各メーカーにおけるODS充填剤の特性

※カラム寸法:Partisil 250 x 3.9 mm、μBondapak 300 x 4.6 mm、その他はすべて150 x 4.6 mm
※カラムの測定条件:移動相;メタノール-水、66:34 (v/v)、流速;1 mL/min

表1から、カーボン含量が最も低いカラムはSpherisorb ODSで7.33%、最も高いカラムがLiChrosorb RP-18の20.13%であることがわかります。

このようにブランドによってカーボン含量がさまざまなのは、シリカ基材の表面積や基材の被覆率が異なることに起因します。特定の分析対象物を溶出するのに必要な水系移動相中の有機溶媒濃度は、ODSパッキングのカーボン含量に左右されます。カーボン含量が異なるカラムを使う場合は、カラムの性質に合わせて実験条件を検討していきましょう。

移動相条件の比較

次に、SUPELCOSIL LC-18と7種の他社製ODSカラムを用い、6種の標準物質を一連の移動相条件(30、40、50、および60%有機溶媒)で溶出しました。溶出には、異なる3種の有機溶媒を用いました。

6種のベンゼン誘導体を各ODSカラムから溶出させるのに必要なメタノール、またはアセトニトリル濃度をそれぞれ図1に示します。

図1 各ODSカラムからベンゼン誘導体を溶出させるのに必要なメタノール(A1)およびアセトニトリル(A2)濃度

※k'値 = 3.0(k'は容量因子。ある化合物がHPLCカラムの中の固定相と移動相の間に分配される割合)

メタノール-水およびアセトニトリル-水移動相を用いた場合、ベンゼン誘導体はODSカラムから同様のパターンで溶出しました。いくつかの化合物に例外はありましたが、Spherisorb、Chromosorb、μBondapak、SUPELCOSIL、LiChrosorb、Partisil、Nucleosil、Zorbax BP-ODSの順で、より多くのメタノールまたはアセトニトリルが必要になりました。

図1を見ると、カラムによって必要なメタノールやアセトニトリル濃度が大きく異なることがよくわかります。例えば、トルエンの分析のカラムをSpherisorbからSUPELCOSILに変更する場合は、有機成分を5~7%増やさなくてはなりません。同様に、Zorbax BP-ODSからSUPELCOSILに変更すると、有機成分を約10%減らす必要が生じます。

分析時間が一定になるよう移動相溶媒を調整する

それでは、カラムを変える場合はどのように移動相の溶媒を調整すればよいのでしょうか。これを検討するために、各ODSカラムでバルビツール酸塩類(7種類)の分離実験を行い、バルビツール酸塩類の分析時間がほぼ一定になるような移動相を決定しました。得られたクロマトグラムを図2に示します。

図2 バルビツール酸塩類の分析時間がほぼ一定になるように調整した移動相溶媒組成

図2から、移動相溶媒組成を調整すれば、ODSカラムを別のODSカラムに変更しても同様に実験できることがわかります。この中で特に注目したいのがD1(一番下)のSUPELCOSIL LC-18カラムの分離能の高さ。SUPELCOSIL LC-18は良好なピーク形状が得られるカラムであることがわかります。

図2の中の右側に記しているのは、これらのピーク形状を得るために用いた移動相溶媒の組成です。ただし、各メーカーのすべての充填剤ロットを試したわけではないため、一例として条件検討の参考にしてください。

以上、ODSカラムの特性についての検証を紹介しました。安定した正確な結果を得るためにも自分が実験に用いているODSカラムの特性を理解し、最適な条件を検討してみましょう。

同じカテゴリの人気記事ランキング

下記フォームでは、M-hub(エムハブ)に対してのご意見、今後読んでみたい記事等のご要望を受け付けています。
メルクの各種キャンペーン、製品サポート、ご注文等に関するお問い合わせは下記リンク先にてお願いします。

メルクサポート情報・お問い合わせ

*入力必須

    お名前 *

    メールアドレス *

    電話番号 *

    勤務先・所属先 *

    お問い合わせ/記事リクエスト内容 *

    このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleのプライバシーポリシー利用規約が適用されます。