イオン交換水とは?水質の特徴や、他の精製方法との違いをチェック!

イオン交換水とは?水質の特徴や、他の精製方法との違いをチェック!

実験や試験では純水や超純水が日常的に使われます。超純水には、電気の流れにくさを示す指標である比抵抗値が18.2 MΩ・cm(25℃)以上という一般的な基準がありますが、実は純水にはそうした基準はなく、広く何らかの精製処理を施した水のことを指しすため、さまざまな種類があります*1

その中で一般的なものの一つが、イオン交換水です。名前は聞いたことがあるけれど、蒸留水やRO水など他の純水とどう違うのかわからない……という方のために、この記事ではイオン交換水の特徴や作り方を徹底解説します。

 

イオン交換水とは?

イオン交換水とは、イオン交換樹脂を用いて水中の陰イオン・陽イオンを除去した水のことを指し、脱イオン水とも呼ばれます。イオン交換樹脂は、有機基材にイオン性官能基を化学的に結合させたもので、イオン交換樹脂の上に存在する官能基が水中のイオンと置換されることでイオンを除去します*1

 

イオン交換水の特徴

イオン交換水には明確な水質基準はありませんが、一般的に、イオンを除去する脱イオン処理によって、電気導電率が1 μS/cm程度以下に下げられた水を指すことが多いです。

電気導電率とは、電気の流れやすさを示す指標であり、水中に存在するイオンの量が少ないほど、値も小さくなります*1

 

イオン交換水と蒸留水の違い

イオン交換水も蒸留水も純水に分類されますが、それぞれ精製方法が異なります。

イオン交換水は、イオン交換樹脂を用いて水中のイオンを除去するのに対し、蒸留水は、物質の揮発性と沸点の違いを利用して、不純物を含む水から気化させた水を回収することで精製します。
そのため蒸留では、水の沸点に近い成分の分離が難しいという問題があります*1

一般的に、イオン(無機物)に関しては、イオン交換水の方が蒸留水よりも純度が高くなります。

図1 純水の精製方法と水質

 

イオン交換水の使用用途

単純なイオン交換樹脂により精製したイオン交換水では、原理上、イオンの除去しかできず、他の不純物は精製後も残ってしまうため、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)やガスクロマトグラフィー(GC)、各種質量分析などの非常に高い純度の水が必要とされる実験や測定計測には適していません*1
そのため、イオン交換水の用途としては、あまり高い純度が必要とされない洗浄や、加湿器やウォーターバスなどへの供給水、バッテリー液などが挙げられます。

 

イオン交換水の作り方

イオン交換水は、カートリッジ純水器(イオン交換機、イオン交換水製造装置)イオン交換水製造装置などを用いてイオン交換を行うことによって精製します。

イオン交換は、イオン官能基を持つイオン交換樹脂を用いて水中のイオンを除去することで、純水を精製する方法です。イオン交換樹脂は陽イオン交換樹脂(カチオン交換樹脂)と、陰イオン交換樹脂(アニオン交換樹脂)などがあります。

陽イオン交換樹脂は水中の陽イオンを効果的に除去するのに対し、陰イオン交換樹脂は水中の陰イオンを効果的に除去します。スルホン酸を表面に持つ陽イオン交換樹脂や、四級アンモニウムイオンを持つ陰イオン交換樹脂などがその代表です(図1)。

これらのイオン交換樹脂を利用して、不純物を取り除きます*1

図2 イオン交換の原理

 

イオン交換水を作る際の注意

カートリッジ純水器(イオン交換機、イオン交換水製造装置)では、イオン交換樹脂上の官能基が水中のイオンと置換されることで、不純物を除去します。
そのため、原理上、イオン以外の不純物の除去を行うことはできません。

加えて、イオン交換樹脂上の官能基が飽和すると、イオン除去能力が低下して、水質の変動や劣化が懸念されます*1

図3 カートリッジ純水器(イオン交換機、イオン交換水製造装置)で精製したイオン交換水の水質

また、イオン交換樹脂そのものが有機物であることから、使用していく中で酸化分解や、機械的な破壊、そして重合鎖や官能基の流出などが起こり、有機物が溶出してしまうという問題もあります。

さらに、イオン交換樹脂の特性上、電荷を持った有機物が吸着して、有機物汚染が起こることもあります。特に、負に帯電している微生物については、イオン交換樹脂に吸着され、微生物の温床になってしまう場合があるので、注意が必要です*1

このように、イオン交換樹脂は使用する度にイオンの除去能力が低下することから、定期的なメンテナンスが不可欠になります。

一般的に、イオンの除去能力が低下したイオン交換樹脂は、酸やアルカリなどの薬液に浸すことで官能基を再生することができ(イオン交換樹脂の再生)、繰り返し使用することができます*1

しかし、イオン交換樹脂の完全な再生は、大量の薬液が必要となるため困難で、さらにイオン除去性能は再生をすればするほど低下してしまいます*1,2。また、廃液の処理も、手間がかかるという問題があります*1

なお、再生に用いる薬液によってイオン交換樹脂が汚染される可能性もありますので、超純水の精製では毎回新しいイオン交換樹脂に交換して、イオン交換樹脂の再生利用は行いません。

こうした欠点を補うために、イオン交換樹脂単独ではなく、他の精製技術と組み合わせて水中の不純物を取り除く装置が多くあります。

例えばメルクのMilli-DIは、イオン交換樹脂に加え、活性炭とデプスフィルターで処理することにより、イオン交換樹脂だけでは除去が難しい溶解有機物や微粒子を除去します。

イオン交換樹脂カートリッジは使い捨てのため再生の手間はかからず、廃液も出ませんので、日常のメンテナンスも簡単です。

 

装置が簡便なイオン交換水。メリットとデメリットを知って、正しく使おう

イオンを効率的に除去でき、装置が比較的簡便なカートリッジ純水器(イオン交換機、イオン交換水製造装置)は、日常の実験や測定を支える心強い味方です。

しかし一方で、イオン以外の不純物の除去は難しい、官能基が飽和することにより性能が低下するなど、注意すべき点もあります。

実験で使う水は、実験結果に影響する物質が取り除かれている必要があります。イオン交換水を使う場合も、イオン交換によって精製される水質の特徴を知り、正しい用途で使うことが大切です。

 

参照元

*1 日本ミリポア株式会社ラボラトリーウォーター事業部. 水は実験結果を左右する!超純水超入門 データでなっとく,水の基本と使用のルール. 羊土社. 2005.
*2 半導体基盤技術研究会. 超純水の科学. リアライズ社. 1990.

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