規格を満たせば同じ水質?JIS A4グレードの水を比較

規格を満たせば同じ水質?JIS A4グレードの水を比較

水質に関するJISとは?

実験や試験、分析では、再現性や信頼性を担保するために、不純物が取り除かれた、一定の水質の水が必要となります。そのため、公的機関による水質規格が定められており、試験や分析において、この規格に適合した水の使用が求められる場合があります。水質規格として、海外ではISO(International Organization for Standardization)やASTM(American Society for Testing and Materials)が用いられることが多いですが、日本ではJISが最もよく参照されています*1

JISは、日本産業規格(Japanese Industrial Standards、以下JIS)のことで、製品・サービス等の品質や分析方法等について定められた国家規格です。規格があることによって、放置すれば多様化・複雑化・無秩序化してしまう製品やサービス等が標準化され、互換性による経済・社会活動の利便性の確保、安全や健康の保持、環境の保全などが達成できます。水質規格は、一定の水質を担保する役割を果たしています*2

工業用水や工場排水の試験や分析用の水のJISである「JIS K 0557 用水・排水の試験に用いる水」では、電気伝導率や全有機体炭素(Total Organic Carbon、以下TOC)量などに基づき、水をA1、A2、A3、A4の4つのグレードに分類しています(表1)。A4グレードが最も水質が高く、A3とA4グレードの水が試薬の調製や微量成分の分析で用いられます*3。一般的にはA1~A3グレードが純水相当、A4グレードが超純水相当とされています。

表1 JIS K 0557により規定された水質別の規定

(出典元:日本規格協会. JIS K 0557-1998 用水・排水の試験に用いる水 より改変)

 

グレードが同じなら水質も同じ? JIS K 0557 A4グレードの超純水と蒸留水の水質を比較

それでは、JIS K 0557の最高グレードであるA4グレードの条件を満たしている水ならば、水質は同じなのでしょうか。

水質を比較・検証するために、蒸留器で精製したA4グレードの蒸留水※1と、超純水製造装置「Milli-Q IQ 7005機器分析タイプ」で精製したA4グレードの超純水※2を準備し、イオンクロマトグラフィーを用いてそれぞれのイオン濃度を測定しました*1

その結果、蒸留水と超純水はいずれもJISのA4グレードに該当するものの、含まれるイオンの量(電気伝導率)には非常に大きな差があることがわかりました(図1、表2)*1

 

※1 蒸留水は、水道水を前処理カートリッジ、イオン交換樹脂に通水後、蒸留とメンブレンフィルターで精製した。
※2 超純水は、Milli-QⓇ IQ 7005機器分析タイプによって、水道水をRO膜(Reverse Osmosis膜、逆浸透膜)と連続イオン交換法(Electric Deionization、EDI)および殺菌用LED 265 nm水銀フリーUVランプにより純水化した後、イオン交換樹脂・活性炭・有機物酸化分解用172 nm水銀フリーUVランプ、そして最後にメンブレンフィルターを通過させ、精製した。

図1 JIS K 0557 A4グレードの超純水(上)と、蒸留水(下)のイオンクロマトグラム

(出典元:メルク株式会社. 蒸留器と超純水製造装置で精製したJIS K 0557 A4グレード水質の比較. Application Note.)

表2 JIS K 0557 A4グレードの超純水および蒸留水中のイオン濃度

(出典元:メルク株式会社. 蒸留器と超純水製造装置で精製したJIS K 0557 A4グレード水質の比較. Application Note.)

 

 

同じA4グレードでも水質は異なる! 目的に応じた純水・超純水選びを

水質比較試験の結果、規格(JIS K 0557 A4グレード)を満たしていても、水質は同一とは限らないことがわかりました。そのため、精度が求められる実験では、規格を満たしているかだけではなく、試験の目的にあった水質であるかどうかを確認する必要があります。

このことは、イオンクロマトグラフィーを行うときにもいえます。イオンクロマトグラフィーの溶離液に用いる水は、JIS K 0127に規定があり、「分析目的に応じてJIS K 0557に規定するA2~A4又はこれと同等以上の水」とされています*4。しかし、A2~A4グレードの電気伝導率の規格をみると、いずれも0.1 mS/m以下(比抵抗に換算すると1 MΩ・cm以上)であり、3つの水質規格で同一の基準となっています。さらに、一般的に微量分析に用いられる超純水の比抵抗が18.2 MΩ・cmであることを考えると、これは非常に低い規格値といえます*1。そのため、イオンクロマトグラフメーカーは、イオンクロマトグラフィーには超純水製造装置で精製された超純水を使用することを推奨しています*5

実験や試験、分析で、再現性や信頼性を担保するためには、求める水質が安定して得られることが重要になります。比抵抗とTOCには相関がないことから、一定の水質の純水や超純水を精製するには、比抵抗計によるイオンの量の管理に加えて、TOC計による水質管理が必要になります。そのため、モニタリング可能な機能を備えている装置で、求める水質が得られていることをきちんと確認することが大切です*1

この機会にご自身の実験や試験、分析で求められる水質を見直し、JIS規格だけでなく、目的にあった純水・超純水選びができているか確認してみるのはいかがでしょうか。

 

参照元
*1 メルク株式会社. 蒸留器と超純水製造装置で精製したJIS K 0557 A4グレード水質の比較. Application Note.
*2 日本規格協会(JSA). “くらしのなかの標準化 JISってなに?”
*3 日本規格協会. JIS K 0557-1998 用水・排水の試験に用いる水
*4 日本規格協会. JIS K 0127-2013 イオンクロマトグラフィー通則
*5 メトローム イオンクロマとトグラフィのよくある質問日本版Q1-5

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