研究を支える陰の立役者、超純水製造装置の進化の秘密

研究を支える陰の立役者、超純水製造装置の進化の秘密

日々の実験や分析に欠かすことができない純水や超純水。たとえ微量であっても、水に含まれる不純物は実験や分析の結果に大きな影響を与えます。そのため、確実に不純物を除去し、水質を一定に保つことができる超純水製造装置が求められます。

今でこそ実験や分析に適した超純水を簡単に得ることができますが、高性能な超純水製造装置ができるまでには長い試行錯誤の歴史がありました。今回は、超純水製造装置の代名詞といえるMilli-Q®の進化を軸に、超純水製造装置の歴史をご紹介します。

第1世代 超純水製造装置、第2世代 Milli-Q®の誕生

超純水製造装置の基礎は、1960年代から70年代にかけて築かれました。まず、1967年に「Super-Q™」という超純水製造装置が開発されました。そして1974年、現在超純水製造装置の代名詞となっているMilli-Q®が誕生。

Milli-Q®の名前の由来は、当時の社名Millipore(ミリポア)の”Milli”とQualityの頭文字”Q”を合わせたものです。

Milli-Q®は、

  • 活性炭が有機物、
  • イオン交換樹脂が無機イオン、
  • フィルターが微粒子と微生物

を除去することで、超純水を精製します。

この構造は超純水精製の基礎であり、現在使われている装置でも基本的な構造は変わりません。

図1 1974年に誕生したMilli-Q®

 

1967年の超純水製造装置の誕生以降、Milli-Q®は水質面からユーザーの研究をサポートするために、着々と高性能化を進めてきました。

 

第3世代 ディスポワンカートリッジ開発による超純水水質の向上

1987年に発売された「Milli-Q® SP」では、超純水水質の速やかな立ち上がりを実現しました。従来の装置では、カートリッジフィルターの入れ物(ハウジング)とカートリッジフィルターが分離しており、間に隙間があったため、採水前に水質を上昇させるための循環が必要でした。

そこでMilli-Q® SPは、この隙間をなくし、前作業なしで高水質を保つために、ハウジングとカートリッジフィルターを一体化させた画期的な装置として開発されたのです。水質の素早い立ち上がりが可能となったこの様式は、超純水製造装置の標準となり、今に至っています(図2)。

図2 Milli-Q®︎ SPとMilli-Q®︎ SP TOC、従来型との比較

第4世代 有機物量低減用紫外線ランプの採用

1990年に発売された「Milli-Q® SP TOC」には、世界初の有機物酸化分解用紫外線ランプが搭載されました。

これにより、有機物を低減するとともにTOC表示機能を搭載しており、高速液体クロマトグラフィー(High Performance Liquid Chromatography、以下HPLC)、液体クロマトグラフィー質量分析(Liquid Chromatography/Mass Spectrometry、以下LC/MS)の精度向上に役立ちます(図2)。有機物酸化分解用紫外線ランプは今では一般的となっていますが、実は日本で開発された技術です。

紫外線(UV)照射により、超純水中の有機物の残存量が紫外線なしの場合の約5分の1にまで低減できることが実験から示されています。HPLC、LC/MS測定で有機物酸化分解効果を調べた実験でも、紫外線なしの場合よりも紫外線ありの場合の方が、より低いバックグラウンドを得られることが分かりました*1(図3)。

図3 HPLC、LC/MSにおける有機物酸化分解用紫外線の効果

(出典元:下位典子, 熊谷浩樹, 石井直恵, Ichiro Kano. 分析用水の水質がLC、LC/MS分析に及ぼす影響とその検証. Application Notebook. 2002. vol.15. Fig.1

第5世代 TOC管理機能搭載

このように、HPLC、LC/MS分析で紫外線による有機物酸化分解が有効であることが示されましたが、当時の超純水製造装置の水質管理は比抵抗値のみで行われていたため、HPLCなどで分析するまで有機物量が分かりませんでした。

この問題は、1996年発売の第5世代の新機種「’96 Milli-Q®」に全有機体炭素(Total Organic Carbon、以下TOC)計が搭載されたことで解決し、超純水製造装置内で有機物量が確認できるようになり、効率的な水質管理が実現しました。

精度管理・装置管理にもメルクは尽力しています。

超純水製造装置の付属の比抵抗計や温度計、TOC計が正しく測定して表示するかを確認する「キャリブレーションサービス」や、設計や稼働時などの適格性を確認する「バリデーションサポートサービス」についても1990年代後半から提供を続けており、対応機種も拡大。精度の向上に寄与しています。

第6世代 アプリケーション別フィルターの登場:多岐にわたる用途に一台で対応可能に

1996年の新機種発売以降、機器分析やバイオ、高度細胞培養といったそれぞれの用途に応じたアプリケーション対応型超純水製造装置の開発が進みました。一方で、用途に応じて複数の超純水製造装置を導入すると場所をとり、ラボの有効活用の妨げになるというジレンマがありました。

その悩みを解決したのが、2006年に登場した「Milli-Q® Advantage」です。たった1台の装置に、用途別の最終フィルターを組み合わせることで、さまざまな目的・用途に応じた超純水が精製可能になりました。さらに、採水口が独立式となったことで、遠隔部採水が可能になり、稼働性アップも同時に実現しました。

そして2008年には、用途別の超純水に加え純水も精製可能な「Milli-Q® Integral」が発売されました。さらなるコンパクト化が実現され、ラボの有効活用に貢献できる装置となりました。(図4)

純水と超純水の違いや、純水の種類については、「純水にも種類がある!いろいろな水の違いを学ぼう」をご覧ください。

図4 Milli-Q® Integral

第7世代 水質が良いのは当たり前。使いやすさ・サステイナビリティ向上にも貢献

2010年代以降は、水質が良いのはもはや当たり前という時代になり、使いやすさやサステイナビリティ向上への貢献も求められるようになりました。

例えば2018年に発売された「Milli-Q® IQ 7003/05/10/15」。この装置は、1滴〜2 L/分という幅広いレンジで採水が可能になり、カラータッチスクリーン、定量採水機能、高水質維持タンクの導入など、使いやすさの面から研究者をサポートする多くの機能が搭載されています。

図5 Milli-Q®IQ 7003/05/10/15

加えて、従来の超純水製造装置では有機物酸化分解用紫外線ランプに水銀が使用されていましたが、同機種は完全水銀フリーであることも大きな特徴です。

水銀は健康や環境に有害な化学物質であることから、2013年に「水銀に関する水俣条約」が採択され、水銀を用いた製品の製造や使用、廃棄に至るまでの適正な管理が定められました。今のところ、理化学機器はこうした水銀規制の対象外ですが、サステイナビリティの観点から水銀使用を控えるべきという世界的な動きに合わせ、メルクは完全水銀フリーの超純水製造装置を開発しました*2

最後に、メルクの超純水製造装置の進化の歴史を簡単に振り返りたいと思います(表1)。

表1 超純水製造装置の進化の歴史

  新しい技術 新しい技術による変化
第1世代 超純水装置の誕生 不純物を含まない超純水を手軽に精製できるようになったことで、研究の現場に大きく貢献
第2世代 Milli-Q®の誕生 Milli-Qが超純水の代名詞となり、論文などで説明が不要となり、研究活動の省力化に貢献
第3世代 ディスポワンカートリッジの開発 超純水水質の速やかな立ち上がりを実現し、研究活動のさらなる効率化を可能に
第4世代 有機物量低減用紫外線ランプの採用 HPLCやLC/MSといった分析の精度向上に寄与
第5世代 TOC管理機能搭載 HPLCなどで分析する前に超純水装置内で水質良否が判断できるようになり、効率的な水質管理が実現
第6世代 アプリケーション別フィルターの開発
一体型純水・超純水製造装置の開発
1台の超純水装置から様々な用途に対応する超純水の精製が可能になり、同時に、超純水に加え純水も精製できる一体型装置となったことで、研究室のスペースの有効活用に貢献
第7世代 使いやすさの徹底追及
水銀フリーUVランプの開発
カラータッチスクリーンなどさらなる使いやすさを追求した機能が搭載社会的に求められるサステイナビリティの向上に寄与

このようにメルクは、超純水製造装置の標準になっている機能を次々と開発・搭載してきました。超純水製造装置の進化はユーザーのフィードバックを開発に生かしてきた歴史であり、メルクは今後もお客様と二人三脚でMilli-Q®の開発を続けていきます。

 

参照元

1 下位典子, 熊谷浩樹, 石井直恵, Ichiro Kano. 分析用水の水質がLC、LC/MS分析に及ぼす影響とその検証. Application Notebook. 2002. vol.15.
2  M-hub 環境に配慮した水銀フリーの超純水製造装置

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