ペプチド固相合成で用いる樹脂について(Fmoc法とBoc法)

ペプチド固相合成で用いる樹脂について(Fmoc法とBoc法)

ペプチド固相合成用樹脂とは

ペプチド固相合成において、最初のアミノ酸のC末端の保護基として機能するのが不溶性樹脂担体です。反応させたいアミノ酸を樹脂に結合させ、その樹脂上でカップリング試薬やアミノ酸誘導体を用いて次のアミノ酸を縮合させていきます。目的のペプチドができあがったらC末端から樹脂を切断します。

ペプチド合成の完了後は、残存するN末端保護基、全ての側鎖保護基、C末端保護基、樹脂などを強酸処理によって除去します。酸処理を繰り返し行うBoc法だけでなく、塩基処理で進めるFmoc法においても強酸処理がなされます。

ペプチド配列やN端保護基のタイプに応じて、目的のペプチド合成に用いる樹脂は異なります。この記事ではFmoc法とBoc法でペプチド固相合成を行う時の注意点と様々な合成用樹脂を紹介します。

Fmoc法によるペプチド固相合成用樹脂の選び方

  1. ヒドロキシメチルをベースにした樹脂
    システインやヒスチジンなど、ヒドロキシメチルをベースにした樹脂(Wang樹脂、HMPA樹脂、HMBA樹脂)は、C末端にシステインやヒスチジン、およびプロリン残基を有するペプチドに対しては用いないほうがよいでしょう。エステル化により、ペプチド合成中やペプチド精製中に、保護基の除去を妨害する可能性があるからです。これらのアミノ酸は、強力な条件下で使用するとラセミ化しやすいため、C末端にシステインやヒスチジン、およびプロリン残基を有するペプチドの調製にはトリチルをベースにした樹脂を使用する必要があります。
  2. トリチルをベースにした樹脂
    NovaSyn TGT樹脂あるいは2-クロロトリチル樹脂などのトリチルをベースにした樹脂は、C端固定にFmoc-アミノ酸カルボニル基の活性化を必要せず、アミノ酸のラセミ化、およびジペプチド生成を完全に防ぐことができます。また、C末端にプロリン、メチオニンおよびトリプトファン残基を有するペプチドの調製にも、トリチルをベースにした樹脂が推奨されています。

ベンジル基をベースにしたリンカーに結合したプロリンを含むジペプチドは、Fmoc基脱保護の間に、ジケトピラジン生成が進行しやすく、樹脂担体からペプチド鎖が損なわれる可能性があります。一方、メチオニンおよびトリプトファン残基は、切断反応の間にリンカーで生成したカチオンによってアルキル化され、担体へのペプチドの再結合を起こします。このようなときも、トリチルをベースにした樹脂を用いれば、これらの副反応を抑えることができます。

Fmoc法とBoc法のプロトコール参照表

以下に、Fmoc法とBoc法のペプチド固相合成用のリンカーおよび誘導体化樹脂の性質、担持および切断プロトコール参照表を載せておきますので、ぜひ実験の参考にしてみてください。

  1. Fmoc法ペプチド固相合成用樹脂
  2. Boc法ペプチド固相合成用樹脂
  3. 固相有機合成に用いるリンカーや誘導体化樹脂

以上、固相ペプチド合成に用いる樹脂について紹介しました。ペプチド固相合成を始める前に、この表などを活用して、目的とするペプチド鎖を得るのに適したリンカーや樹脂を選びましょう。

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