特定元素の含量を「純度」に換算する計算方法

特定元素の含量を「純度」に換算する計算方法

試験成績書には、純度もしくは純度の指標となる値が掲載されている

化合物を購入すると、多くの場合、取り扱い説明書または試験成績書にその化合物の純度が記載されています(一部、純度規格項目のない製品もあります)。一般に有機化合物の純度測定で最も多く使用されている手法は、クロマトグラフィー法です。分子量が小さく揮発性が高いものはGC、分子量が大きく揮発性が低い(UVの吸収を持つ)ものはHPLCが主に適用されます。 

ただし、クロマトグラフィー法は万能ではありません。安定性の低い有機物・有機金属化合物や無機物の定量については得意ではないのです。このようなケースでは、元素分析を行って特定元素の含有量を定量し、その実測値と理論値 との差異を純度の指標とする方法がしばしば適用されます。この場合、試験成績書に記載されるのは、表記成分中の特定元素の含量であり表記成分の純度ではありません。

では、どうやって純度を知ればよいのでしょうか。この記事では、このような場合の特定元素の含量を純度に換算する方法について、いくつか例を挙げて紹介します。

純度換算の例① Bis(triphenylphosphine)dicarbonylnickel

Bis(triphenylphosphine)dicarbonylnickelは、分子式で表すとC38H30NiO2P2、トータル分子量は639.28です。この化合物中にカーボン(C)は38個含まれるので、C分子量は12x38=456です。

この値から、純度100%の場合のC量(理論値)を算出します。

456/639.28x100=71.3%

このCの理論量と試験成績書に記載されている実際のCの量(実測値)の差異が大きいほど、純度は100%から乖離していることを示しており、実測値/理論値の値を純度の指標とすることができます。

元素分析によるカーボン(C)量の規格値(※試験成績書最下部に記載)は70.0~72.8ですので、C量の実測値はこの範囲に入ります。

C含量の規格値は、C実測値/C理論値×100で以下の通り純度換算することができます。

(70.0/71.3)×100~(72.8/71.3)×100=98.2~102.1%(Cベースの純度)

このロットの実測値は71.1%ですので、71.1/71.3x100=99.7%になります。

純度換算の例② Allylpalladium(II) chloride dimer

Allylpalladium(II) chloride dimerは分子式で表すと、C6H10Cl2Pd2で、分子量は365.89です。分子中にPdは2個含まれるので、Pdの分子量は、106.42×2=212.84になります。

ここから、純度100%の場合のPd量(理論値)が求められます。

212.84/365.89×100=58.2%

このPd量(理論値)と試験成績書に記載されているPd量(実測値)の差異(実測値/理論値)を純度の指標とします。

元素分析によるパラジウム(Pd)量の規格値は56.7~59.6ですので、以下のように純度換算できます。

(56.7/58.2)×100~(59.6/58.2)×100=97.4~102.4%

このロットのPd量実測値が58.2%ですので、Pdベースの純度は58.2/58.2x 100 = 100%になります。

純度換算の例③ 2,2-Diphenyl-1-picrylhydrazyl

2,2-Diphenyl-1-picrylhydrazylに関しては、元素分析で炭素(C)、窒素(N)量を定量しています。

2,2-Diphenyl-1-picrylhydrazylの分子式は、C18H12N5O6で、分子量は394.32です。2,2-Diphenyl-1-picrylhydrazyl 中にCが18個、Nが5個なので、それぞれの分子量は12×18=216、14×5=70です。

純度100%と仮定した場合のCとNの理論量を計算すると、Cは216/394.32=54.8%、Nは70/394.32=17.8%になります。

理論値と実測値の差異を純度の指標にしてCベースの純度、Nベースの純度に換算すると、以下のようになります。

C基準の純度規格:51.5/54.8~58.1/54.8=93.9~106.0%
N基準の純度規格: 16.2/17.8~18.8/17.8=91.0~105.6%

純度換算の例④ FeF3(Iron(III) Fluoride)

FeF3(Iron(III) Fluoride)では、元素分析でFeの量を定量しています。

純度100%の場合、FeF3中のFeの含量(理論値)は、55.85/112.84×100 = 49.5%になります。

このFe量の理論値と実測値(元素分析定量値)の差異を純度の指標とします。Feの含量の規格値が46.5~50.7%ですので、Fe含量実測値/Fe含量理論値で純度換算できます。含量規格は以下のようになります。

46.5/49.5~50.7/49.5 = 93.9~102.4%

このロットのFeの実測値は46.8%ですので、純度に換算すると46.8/49.5x100 = 94.5%になります。

以上、有機物・有機金属化合物・無機物の純度の算出方法について、具体的な試薬を挙げて説明しました。

一言で純度といっても様々な定量方法があり、その方法によって値の意味合いが異なります。例えば滴定法や元素分析法では構造異性体も同様にカウントされてしまうため、クロマトグラフィーの純度とは必ずしも一致しません。またクロマトグラフィー法は有機物の純度定量法としては精度の高い方法ですが、汎用の検出器の場合、水分や無機物残渣は検出しません。製品選定にあたっては、試験成績書の定量規格と手法を確認し、ご自身のアプリケーションに合ったものを選んでください。