NMR測定の失敗リスクを回避するおすすめ実験器具と装置

NMR測定の失敗リスクを回避するおすすめ実験器具と装置

貴重な試料を無駄にしないための工夫

有機化学の研究には欠かせないNMR(核磁気共鳴)法。ライフサイエンスの分野でもタンパク質や核酸の立体構造の解析に必要です。しかし、原理や解析方法を知っていても、測定がうまくいくとは限りません。経験を積めば測定はうまくいきますが、サンプルの取り違えや調製失敗、低グレードの試料管を高周波数の装置で誤って使ってしまうなどの人為的なうっかりミスは起こるものです。

そんな失敗を少しでも減らし、実験を成功させるために、ミスが起こりにくい実験器具を選ぶのもひとつの方法です。「ColorSpec NMR試料管」は、識別しやすい色帯がついたNMR試料管(チューブ)です。

Aldrich ColorSpec NMR試料管

各試料管にはすべて色帯と同色のキャップがついています。試料管ごとに異なる色帯とMHz数が印字されているので、NMR試料管のグレードが一目でわかります。このおかげで、試料管を保管、測定、洗浄、乾燥する際に、グレードを間違えるというミスが起こりにくくなります。

また、単に色が違うだけでなく、試験管もグレードに合った仕様になっています。青と黄は両方とも肉厚0.43 mm、Type1 Class Bのホウケイ酸ガラス製、室温での測定用ですが、青はディスポーザルタイプです。赤は肉厚0.38 mm、Type1 Class Aのホウケイ酸ガラス製で、耐熱性があり加熱・冷却する場合にも使用できます。高スペックの真円度・反りにより、安定した回転と高分解が得られます。

詳しい仕様の違いは下の表とカタログページを参照してください。

表:ColorSpec NMR試料管の違い

  Disposable(青)/Thrift(黄) Precision(赤)
材質 ASTM Type 1 Class B ホウケウケイ酸ガラス(N51A) ASTM Type 1 Class A ホウケイ酸ガラス(パイレックス)
常磁性不純物によるシム調整への影響1 中(> 1200 ppm Fe2O3 小(400 ppm Fe2O3
急冷却・加熱 不可 可(120℃以内)
温度範囲 室温 230℃
試料体積の繰り返し再現性2 10% 0.50%
透過波長 320 nm 320 nm
推奨用途 600 MHz 以下での低分子量有機化合物の1D NMR 測定(分子量 1500未満) 厳密なシム調整が要求される測定(高磁場測定、ノンスピン、多次元、多核、DNP および生体試料など)

注1:シム調整への影響は磁場の強さによって異なります。Disposable/Thrift グレードは1D 低磁場測定に推奨します。
注2:試料体積の繰り返し再現性は、同一試料を各試料管の同じ高さまでとったときの体積のばらつきの最大値です。この値はTD-NMR のシグナル強度の再現性に影響します。

手洗い・オーブン乾燥不要の自動洗浄器で、手間を減らし精度を高める

測定が終わり、サンプルを回収したあとのNMRチューブの取り扱い方は、研究室や目的ごとに違います。また、ディスポーザブルタイプなら手間はかかりませんが、高価なNMRチューブの場合は毎回洗浄してオーブンで乾燥させる必要がありますよね。

NMRチューブ洗浄器は、NMRチューブをノズルにかぶせてセットするだけで、アセトンで自動洗浄を行ってくれる器具です。NMRチューブ洗浄器の構造は下のイラストのようになっています。洗浄器の側管にアセトンなどの洗浄溶媒を満たして吸引するだけで、NMRチューブの洗浄と乾燥が完了します。

NMRチューブ洗浄器の構造(Model A)

NMRチューブ洗浄器の基本的な使い方は以下の通りです。

<NMRチューブ洗浄器の使い方>

  1. 洗浄溶媒を受けるリザーバーフラスコをセットする。
  2. アスピレーターに接続する。
  3. NMRチューブをノズルにかぶせ、チューブキャップで洗浄器上部にフタをする。
  4. アセトンなどの洗浄溶媒をためる。
  5. アスピレーターで吸引して洗浄溶媒をフラッシュする。

イラストで紹介したのはAldrichのNMRチューブ洗浄器のModel Aですが、他にも形状の違う4種類の洗浄器があります。

NMRチューブ洗浄器のモデルの違い

※ Model Dは、100 mLの溶媒リザーバー付きで、溶媒を補充する回数が少なくて済みます。
※ Model Eはジョイント部分にすりガラスストッパーが付属しています。(Moldel Aはすりガラスなし)

洗浄中のチューブの破損を防ぎ、より安心して使えるのが、「SafetyBarb NMRチューブ洗浄器」(製品番号Z558362-1EAZ558370-1EA)です。

SafetyBarb NMRチューブ洗浄器

洗浄ノズルがPTFE製であるため、NMRチューブの破損を防ぎます。また、真空ラインとはSafetyBarbホースコネクタで接続します。洗浄器自身も分解して洗浄や部品交換が可能です。

以下に、SafetyBarb NMRチューブ洗浄器の使用法を示します。

<SafetyBarb NMR tube cleaner の使用法>

  1. インナーPTFE ニードルをステンレス製ルアーフィッティングに接続する。
  2. シリコーングリースをつけて、内管および外管のガラス洗浄器部品を組み立てる。
  3. シリコーングリースをつけて、チューブ洗浄器を24/40フラスコに取り付ける。
  4. SafetyBarbホースコネクタをチューブ洗浄器に取り付ける。
  5. SafetyBarbホースコネクタを真空ラインに接続する。
  6. PTFEニードルに、NMRチューブ1本をかぶせる。
  7. 容器に必要な洗浄溶媒を満たす。
  8. 減圧にし、NMRチューブを洗浄する。
  9. NMRチューブが十分に洗浄されるまで必要に応じて7~8の操作を繰り返す。

以上、NMR測定に便利な実験器具と装置を紹介しました。NMR測定に限らず、道具や装置を見直すことで実験の効率や結果は変わってきます。何気なく行っているルーティーンワークも、ときどきは手順や効率を見直して、改善方法を考えてみるとよいかもしれませんね。