DNAフラグメントとプラスミドのライゲーション(クローニングの基礎と実験のコツ)

DNAフラグメントとプラスミドのライゲーション(クローニングの基礎と実験のコツ)

ライゲーションのコツ コントロール反応を用意する

DNAリガーゼを使ってDNA断片同士をつなぐ反応をライゲーションと呼びます。この記事では末端処理したDNAフラグメントとプラスミドベクターのDNAを連結するライゲーションのコツを解説します。 目的のDNAがプラスミドベクターに組み込まれているかどうかを判断するためには、コントロール反応も同時に行います。コントロール反応を行わないと、実験の最終段階でコロニーを形成しなかった場合や目的のDNAが得られなかった場合に、制限酵素処理がうまくいっていないのか、ライゲーションがうまくいっていないのか、トランスフォーメーションがうまくいっていないのか、問題点を特定することができなくなります。

たとえば、次のような2種類のコントロール反応を用意します。

A 目的のライゲーション: DNAフラグメント+ベクター+リガーゼ

B コントロール1:ベクター+リガーゼ

C コントロール2:リガーゼなしでベクターのみ

ベクターの制限酵素処理が成功していれば、ベクターは線状になってしまうので、単独ではコロニーを生じさせることができません。よって、リガーゼの働きでDNAフラグメントと連結し環状ベクターになったAのみでコロニーが生じます。 もし、リガーゼもDNAフラグメントもないCでコロニーが生じてしまった場合は、ベクターの制限酵素処理がうまくいかず元のベクターが残っていたと考えられます。この状態でAを増やしても目的のDNAをうまく得ることはできません。

では、Bでコロニーが生じ、Cでは生じなかった場合はどうでしょうか。この場合は、制限酵素で一度線状になったベクターが、末端処理がうまくいってなくて、再び環状化してしまったことが考えられます。 このようなことが起こらず、Aの目的のライゲーションのみでコロニーが生じ、BとCでは生じない、またはごく微量の場合は、ここまでの実験は成功です。 コントロールも含めた一般的なライゲーション反応液の組成を次に示します。

■目的のライゲーション DNAフラグメント+ベクター+リガーゼ

  • プラスミドベクター……1 μL

  • DNAフラグメント……3 μL

  • 10×ライゲーションバッファー……2 μL ※

  • T4 DNAリガーゼ1 U/μL……1μL

  • ヌクレアーゼフリーの水……13 μL

■コントロール1 ベクター+リガーゼ

  • プラスミドベクター……1 μL

  • DNAフラグメント……なし

  • 10×ライゲーションバッファー……2 μL ※

  • T4 DNAリガーゼ1 U/μL……1μL

  • ヌクレアーゼフリーの水……16 μL

■コントロール2 リガーゼなしでベクターのみ

  • プラスミドベクター……1 μL

  • DNAフラグメント……なし

  • 10×ライゲーションバッファー……2 μL ※

  • T4 DNAリガーゼ1 U/μL……なし

  • ヌクレアーゼフリーの水……17 μL

10×ライゲーションバッファーの組成は以下の通りです。

※10×ライゲーションバッファーの組成

  • トリス塩酸バッファー pH 7.6……0.5 M

  • 塩化マグネシウム……100 mM

  • ジチオトレイトール(DTT)……100 mM

  • ATP……10 mM

  • ウシ血清アルブミン(BSA)……500 μg/mL

<注意点>

  • ヌクレアーゼフリーの水で調製すること。

  • 分注して-20℃で保存可能。冷凍することでBSAが析出することがあるが、37℃で溶解してから使用すれば問題ない。

次にライゲーションのプロトコールを紹介します。

ライゲーションプロトコール

  1. 各チューブに上記の量の水とバッファー、ベクターを入れる。

  2. 目的のライゲーションのチューブにDNAフラグメントを添加する。

  3. リガーゼを目的のライゲーションとコントロール1のみに添加する。リガーゼは物理的ダメージに弱いため指で穏やかにタッピングするなどして混合する。

  4. 室温で1~2時間または16℃で一晩インキュベートする(65℃で20分間インキュベートする方法もある)。

ここまででライゲーションは完了です。ライゲーション完了後は、大腸菌に形質転換し、タンパク質発現を行ったり、培養してDNAコピーの作成に用います。

ライゲーション実験のヒント

  • ライゲーションバッファーを凍結融解すると溶液中のBSAが沈殿することがあります。その場合はボルテックスや指の間や37℃で一時的に温めて再溶解します。

  • ライゲーションバッファーにはATPが含まれるため、何度も凍結融解を行うと劣化することがあります。バッファーストックを少量に分注して保管し、3回以内の凍結融解で使用しましょう。

  • ライゲーション時、リガーゼを添加する前に反応液を37℃で数分間処理することで、再環状化したベクター(1つの制限酵素で処理したベクター)の付着末端を開く、または直線状化することができます。熱処理後は、室温に戻してからリガーゼを添加します。

  • ライゲーションをサポートするために、ライゲーション前のPCR産物をプロテイナーゼKで処理することもあります。プロテイナーゼKはPCRクリーンアップキットで除去できます。

  • ライゲーションにベクターは20~30 ngを使用し、一般的には、ベクターとフラグメントは1:2または1:3のモル比で行います。ベクターに対して10倍以上にならないようにします。

ベクター:フラグメント比=1:3のとき、必要となるフラグメント量の計算例を以下にしめします。比率を変えるときはフラグメント比の数字の3を別の数値に変更します。 ライゲーション実験には慣れと経験が必要ですが、しっかりとコントロールをとり、ひとつひとつプロセスの成否を確かめながら進めていくことで成功率を上げることができるでしょう。