実験のパフォーマンスを向上させる!効率的なろ過のコツ

実験のパフォーマンスを向上させる!効率的なろ過のコツ

効率的なろ過を行う5つのポイント

普段何気なく行っている「ろ過」作業ですが、ちょっとした工夫や知識で、その効率は大幅に変化します。貴重なサンプルを無駄にせず効率よくろ過できれば、実験のパフォーマンスはぐんと向上するはずです。そのためにおさえるべきポイントが以下の5つです。この記事では、それぞれについて詳しく解説していきます。

  • プレフィルトレーションの活用
  • 最適なろ過容量の選択
  • フィルターの化学適合性の確認
  • サンプルの吸着への配慮
  • 洗いによる溶出ピークの低減

目詰まりを防ぐ!プレフィルトレーションの活用

精密ろ過をする際、「せっかくろ過を始めたのに目詰まりしたため、やり直した」という経験はありませんか?「サンプルから沈殿を取り除こうとしたらフィルターが目詰まりして困ってしまった…」「急いで滅菌済み培地を調整したかったのに、残渣が目詰まりを起こして時間をロスしてしまった…」など、失敗談を挙げればきりがないかもしれません。

では、一体どうすれば、目詰まりを回避できるのでしょうか?目詰まりを防ぎ、ろ過を効率よく行うための大原則は「大きな粒子を先に取り除く」ことです。そのためには、精密ろ過をする前の「プレフィルトレーション」がおすすめ。プレフィルトレーションとは、目詰まりの原因になる大きな粒子を、予め別のフィルターでろ過して、取り除くことを指します。このようなひと手間をかけることで、快適なろ過を実現できます。「急がば回れ」というわけですね。

試料のプレフィルトレーションには、おおむね1 μmを超えるサイズの粒子をトラップ可能な繊維製のデプスフィルターがよく用いられます。デプスフィルターは、対象物を表面だけでなく内部でも捕捉します。ろ過圧条件などに依存するため精密ろ過そのものには利用できないので注意しましょう。ナイロンネットフィルター、ポリプロピレンフィルター、グラスファイバーフィルターなどがあります。

例えば、沈殿が生じやすい培地をろ過する場合は、AP20タイプのグラスファイバーフィルターと孔径0.22 μmのメンブレンの組み合わせがよく利用されます。

また、プレフィルトレーションと精密ろ過を1枚のメンブレンで実現できるメンブレンフィルターもあります。例えば、メルクのミリポアエクスプレスは、1枚のメンブレン内部の構造が一次側(ろ過サンプルが最初に触れる面)から二次側(ろ液がメンブレンから出ていく側)の方向に小さくなるように工夫されています。この構造により、粒子の多いサンプルでもろ過が効率的に行われ、「高流量フィルター」としての威力が発揮されます。例えば細胞抽出液のように、様々なサイズの粒子が高濃度に混在しているサンプルの精密ろ過に非常に有効で、時間とコストの節約につなげることができます。

最適なろ過容量の選択

ろ過サンプルの容量に見合ったサイズのフィルターを選択することも、効率よくろ過を行う際に非常に重要なポイントです。

膜面積の大きなフィルターを使うメリットは、ろ過圧を抑えつつ素早くろ過ができることです。しかし、不必要に大きな膜面積のフィルターを用いると、ホールドアップ量(フィルターに取り残されるサンプル)の増大とともに、吸着による目的物の減少が起こります。そのため、ろ過サンプルの容量にあった、最適なサイズのフィルターを選択する必要があります。下の表は、サンプル量ごとのフィルターサイズの目安です。是非、参考にしてください。

表1 サンプル量と適切なフィルターサイズ

Sample Volume Filter Size Hold up Volume Filtration Area
< 1 mL 4 mm 10 μL 0.1 cm2
1-10 mL 13 mm 25 μL 0.65 cm2
10-100 mL 25 mm 100 μL 3.6 cm2
10-100 mL 33 mm 80 μL 4.5 cm2

フィルターの化学適合性の確認

サンプルとフィルターの化学適合性も非常に重要です。適合性の低いフィルターを使うと、溶媒がメンブレンを溶かしてしまう等のダメージにより、適切なろ過が行われなかったり、溶出によるサンプルの汚染が起こる可能性が高くなったりという問題が生じます。ろ過を実際に行う前に、下の表に示すような化学適合性表を参考に、最適なフィルターユニットを選択しましょう。(ここで示す化学適合性表は一般的な目安を記しています。実際に使用する際には、製品に添付されているユーザーガイドなどで、より正確な情報を確認してください。)

表2 様々なメンブレンとハウジング素材の化学適合性

  PoLar Organic Solvents Aqueous Basic Solutions Acid Salt Solution Surfactants
ACN MeOH EtOH 3N
NaOH
NH4OH Na2CO2
Solution
1N
HCI
Brine SDS Tween 20
Housing Materials
HDPE E E E E E P E E P P
RP E E E E P E E E N N
Memberanes
PTFE E E E E E E E E N E
PVDF G E E E E E E E N P
Nylon E G E E P E E E N P
PES P E E E P N E N N N

(E=Excellent, G=Good, P=Poor, N=No Date)

サンプルの吸着への配慮

フィルターを通過する際に、サンプルの一部が失われたり汚染されたりする可能性を皆さんは普段意識しているでしょうか? サンプルとメンブレンの化学的性質によって、サンプル中の物質が非特異的にフィルターに吸着すると、再現性に乏しく不正確な結果が生じます。特にろ過サンプルが低濃度の場合には、非特異的吸着に気をつけてください。

このような非特異的吸着の起こりやすさは、メンブレンの材質とサンプルに含まれる物質の化学的性質に依存します。相性のいい組み合わせ(例:タンパク質と親水性PVDFメンブレン)では非特異的吸着はほとんど起こりませんが、相性が悪い組み合わせ(例:核酸とグラスファイバーフィルター)では非特異的吸着に注意しましょう。

例えば、グラスファイバーフィルターは、タンパク質、ペプチドやオリゴヌクレオチドを吸着しやすい特性がありますし、ナイロンフィルターは非常に高いタンパク質吸着性を持っています。サンプルの吸着を抑えるには、親水性PVDF製のデュラポアや、PES(ポリエーテルスルホン)製のミリポアエクスプレスといった低吸着フィルターメンブレンが適しています。

洗いによる溶出ピークの低減

吸着とは逆に、ろ過したサンプルが溶出によって汚染されてしまう可能性もあります。溶出(抽出)とは、メンブレンやハウジングから、特定の物質が溶媒やサンプル中へ溶けだすことを指します。サンプルとフィルターの化学適合性が十分高い場合でも、フィルターユニットとそこを通るサンプルの化学的性質の組み合わせによって、溶出が起こることがあります。

溶出を減らすコツは、サンプルと化学適合性の高いフィルターユニットを選択することだけではありません。多くの場合、溶媒、あるいは(余裕がある場合には)サンプルで一度フィルターを洗うことで、溶出を低く抑えることが可能です。

以上、サンプルを効率よくろ過するための5つのコツについて、詳しく紹介してきました。このようなちょっとした効率化の積み重ねが、パフォーマンスの向上につながります。まずはろ過の手順やフィルターの選択から、意識してみてはいかがでしょうか。