実例を紹介!限外ろ過技術の活用方法
限外ろ過の様々な用途
限外ろ過は「濃縮」「脱塩・バッファー交換」「精製・分画」「除タンパク」など、ライフサイエンス研究における様々な用途に使うことができます。ここでは、これらの活用方法について、実例を交えて紹介していきます。
限外ろ過で「濃縮」
まずは限外ろ過を用いた濃縮について。タンパク質の濃縮には凍結乾燥や沈殿など様々な方法があります。なかでも、限外ろ過による濃縮は、タンパク質の活性に影響を与えにくいという利点があります。血清、腹水やハイブリドーマ上清から精製した抗体を濃縮する用途でもよく使われます。
<方法>
PROSEP-AまたはPROSEP-Gで精製したウサギIgG抗体を、AmconUltra-15(NMWL:30 K)で濃縮しました。
<結果>
遠心時間ごとの液量の変化を下図左の折れ線グラフで、Amicon Ultraを使用して遠心した前後のIgG濃度を棒グラフで示しています。また、下図右は濃縮前後のサンプルをSDS-PAGEに流したものです。
PROSEP-AとPROSEP-Gのいずれを用いて精製したIgGも、20分間の遠心で 30〜40mLから2〜3mLまで濃縮されました。濃縮前のタンパク濃度は1 mg/mL程度でしたが、濃縮後は10mg/mL程度となりました。結果として、ロスなく約 10 倍に濃縮することに成功しました。
限外ろ過で「脱塩・バッファー交換」
次に、限外ろ過を用いた脱塩・バッファー交換について紹介しましょう。硫安沈殿やカラム精製の後には、脱塩やバッファー交換が必要となります。透析チューブを用いると数時間から一晩もの時間がかかる脱塩・バッファー交換ですが、遠心式限外ろ過デバイスを使えば作業時間を短縮することができます。
<方法>
500 mMのNaClを含むサンプル15 mLを、Amicon Ultra-15を用いて4000 ×gで30分間遠心しました(1回目)。さらに15 mLのバッファーを添加して、再度遠心をしました(2回目)。
<結果>
下の表は、5種類のサンプルを使い、遠心した際のタンパク質回収率と、NaCl除去率をまとめたものです。1回の遠心で90%以上のNaClが、2回の遠心で 99%以上のNaClが除去されました。その場合でも目的タンパク質の回収率は 90%を超えています。
限外ろ過で「精製・分画」
血液中のバイオマーカー探索などの網羅的解析をする際には、あらかじめサンプルを分画することがよくあります。成分の局在や性質で分画することもありますが、ここでは限外ろ過を用いた分画をご紹介いたします。
<方法>
血清にチトクロムcを混合したものをサンプルとして、NMWLを段階的に小さくしながらろ過を行いました。Amicon Ultra-4(NMWL:100kDa)を用いて 1500 ×gで40分間遠心しました。ろ液をさらに、Amicon Ultra-4(NMWL:50kDa)に入れて30分間遠心、そのろ液をAmicon Ultra-4(NMWL:30 kDa)に入れて30分間遠心しました。
<結果>
各分画を SDS-PAGE した結果(下図右)から、サンプルを薄めることなく分画できたことがわかります。少しずつ目の細かいふるいにかけることで、分子の大きさで分画することができました。
限外ろ過で「除タンパク」
最後に紹介するのは「除タンパク」です。血液中のバイオマーカーや食品中の残留農薬など、小さな微量成分を測定したい場合には、サンプル中に多く含まれるタンパク質をあらかじめ除く必要があります。限外ろ過を使えば手軽にタンパク質を除くことができます。
<方法>
農産物にメタノールを加えてすりつぶし、上澄み液を希釈してからAmicon Ultra-4(NMWL:30 kDa)でろ過し、主に脂溶性夾雑物を除去しました。
<結果>
ろ液中の薬剤濃度を測定した結果、LC/MS/MSで分析するのに十分な量の薬剤を回収することに成功しました。
※残留農薬測定の前処理に関するデータは、岩手県環境保健研究センター・畠山 えり子氏に提供いただきました。
以上、4つの限外ろ過技術の活用例を紹介しました。限外ろ過を上手に活用することで、時間を短縮し、より良いサンプルを作成することが可能になります。ぜひ選択肢に入れてみてください。
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