HPLC/UHPLC用サンプルを効率的にろ過する方法
分析の前処理をもっと効率的に
クロマトグラフィーによる分析を行う際には、試料を前もって分析に適した状態に調製しておくことが必要です。特に高速液体クロマトグラフィー(以下、HPLC)や超高速液体クロマトグラフィー(以下、UHPLC)のように、高い圧力をかけて移動相溶媒を高流速でカラムに通すシステムにおいては、適切な前処理を行わないと詰まりや速度の低下の原因となり、高品質で一貫性のある結果を得ることができません。
この記事では、分析実験の前処理のろ過をより効率的に行える「吸引ろ過式サンプリシティフィルトレーションシステム」について、その特長と使い方を紹介します。大量のサンプルの前処理で親指が疲れてしまった方は必見です。ぜひ参考にしてみてください。
前処理のろ過が約9倍楽になる
HPLC/UHPLCでの分析時に用いるサンプルの多くは2 mLよりも少量のため、シリンジにサンプルを入れMillexフィルターなどのフィルターを通して前処理を行うことが一般的です。この場合、ろ過はひとつひとつ手作業になります。シリンジを押す指の力で圧力をかけてサンプルをろ過するため、粘度や粒子含有量が高いサンプルの場合、何度も繰り返していると指が痛くなります。また、1サンプルずつ行わなければならないため時間がかかり、均等な力を加えられないため回収率も低くなります。
1日に多くのHPLCサンプルをろ過する研究者にとって、このような手作業によるろ過は疲労につながります。つまり、この作業が効率化されれば、実験者が楽になるだけでなく試験効率や精度もアップするのです。ろ過は非常に単純なサンプル前処理技術ですが、回数が多いため、作業の最適化を測れば実験全体の効率もアップします。
メルクの「サンプリシティフィルトレーションシステム」は、吸引ろ過により最大8サンプルまで同時にろ過ができる装置です。手作業で行うシリンジろ過に比べて、サンプリシティシステムを用いたサンプルろ過に必要な手の力はごくわずかです。
手にかかる力の違いを調べるために、15人のユーザーに協力して実験を行いました。まず、15人を2つのグループに分け、約半数のユーザーは先にサンプリシティシステムを、残りの半数が先にシリンジフィルターを使用して24サンプルをろ過します。そのあとにもうひとつの方法でろ過を行った後、1から10の尺度で必要だった力の入れ具合を主観的に評価してもらいました。
下の図はその結果を示しています。
この結果より、サンプリシティフィルトレーションシステムを使った場合、手作業に比べて力の入れ具合が9分の1以下と評価されたことがわかります。
サンプリシティフィルトレーションシステムの使い方
それでは、サンプリシティフィルトレーションシステムがどのようなものかを具体的に見ていきましょう。サンプリシティフィルトレーションシステムは下の写真のような形をしています。
この装置の中にサンプルの入った容器を入れてレバーを倒せば、吸引ろ過が行われ、市販バイアル(12×32mm)にろ液を回収できます。
以下に、使い方を説明していきます。
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バイアルとフィルターホールディングリッド(カバー)をセットし、後部にポンプを接続します。
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バイアルをセットしたカバーのふたを開け、サンプリシティフィルターまたはサンプリシティフィルターG2用を装着します。
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0.2~1.7mLのサンプルをファネル部分に入れます。
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サンプリシティG2本体のレバーを倒すと吸引が始まります。
このように、サンプリシティフィルターを使えば、圧をかける作業が自動で行われるため、手で押す必要がありません。また一定の力で吸引できるため、手作業で行うよりも失敗がなく正確な実験を行うことができます。
食品サンプルをサンプリシティフィルターでろ過する
では実際に、サンプリシティフィルターシステムを用い、さまざまな食品サンプルを疎水性のPTFEフィルター0.45μm、PTFEフィルター0.20μm、親水性のPVDFフィルター0.45μm でろ過した結果を見てみましょう。
それぞれのフィルターの膜や試料の特性に応じて、もっとも効率的にろ過することができた各試料の最大濃度の差を用いて異なる速度で実施しました。一般に、同じ濃度の場合は0.45μmフィルターは、0.2μmフィルターよりも速くサンプルをろ過することができました。またろ過が難しいサンプルでも時間を長くかければ、0.45μmフィルターは0.2μmフィルターよりもはるかに高い濃度でサンプルをろ過することができました。
結果を以下に示します。
これらの結果から、蜂蜜のような粘度の高いサンプルやトマトジュースのように不純物が多いサンプルにおいても、3種類のフィルターですべて問題なくろ過することができました。
以上、前処理を効率化するサンプリティシステムについて紹介しました。サンプル前処理の迅速化は研究者の生産性を向上させます。また、クロマトグラフィーのデータ品質を向上させる可能性もあります。
特に、HPLCやUHPLC実験用に複数のサンプルを準備し、複数の実験を実行するラボでは、サンプリティシステムを採用すれば実験スタイルも変わるかもしれません。ぜひ、導入を検討してみてください。
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