分析クオリティの決め手「標準物質」とは
「標準物質」は「ものさし」。その選択はとても重要です!
皆さんは、普段、標準物質をどのように選んで使用していますか?深く考えず、物質名だけで選んでいたり、ルーティンワークで常に同じものを使用していて、見直したことはないという方も多いのではないでしょうか?
分析や測定の結果は様々な要因に左右されますが、測定結果のクオリティは、ほとんどの場合、標準物質によって決まるといっても過言ではありません。
なぜなら、「標準物質」とは、分析や測定において定性や定量分析、さらには分析法の評価や装置の校正を行う際に使用する基準となる物質であり、例えるなら「ものさし」のようなものだからです。
たとえば何かを測るとき、「ものさし」となる標準物質がなければ、測ることができませんし、また、標準物質の純度や濃度が正しくなかった場合、測定結果も誤った結果へとつながってしまいます。
そのため、結果の信頼性を確保するためにも、「ものさし」である「標準物質」の選択はとても重要なのです。
混乱する「標準物質」のバリエーション
標準物質は、通常の試薬とは異なり、必ず、十分な純度、均質性、安定性をもち、装置のキャリブレーションや分析の評価など、分析/測定のプロセスで、それぞれの使用目的に適するように設計されています。
自分が行う分析の目的から適切な標準物質を選択する事が重要ですが、市場には様々な種類、グレードの「標準物質」があり、時折混乱を招いています。
では、どのような種類やグレードがあるのか見てみましょう。
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NISTやNMIJなどの国家計量計測機関の標準物質
国家計量機関の頒布する国家標準。米国国立標準技術研究所(NIST)や日本では計量標準総合センター(NMIJ)などから供給されています。それぞれにどのような用途に用いるかが決められています。 -
各国の薬局方標準品
各国の薬局方の医薬品各条または一般試験法において規定された標準品のことです。基本的に各薬局方で規定された医薬品の品質評価などに用いることを想定されて製造されています。 -
試薬メーカーなどが製造する標準物質
自社の規格で製造し値付けした製品やISO17025およびGuide34(ISO17034)のもとで製造した認証標準物質(CRM)など様々な標準物質が混在しています。たとえば、メルク/シグマアルドリッチで標準物質グレードと定めている製品に関しても、「Certified Reference Material(CRM)」「Reference Material(RM)」「Analytical Standard」とグレードがわかれています。
例)アフラトキシンB1の検索例
標準物質のグレードとその違い
では、標準物質グレード「Certified Reference Material(CRM)」「Reference Material(RM)」「Analytical Standard」は何が違うのでしょうか?それぞれの大まかな特徴と違いを簡単まとめてみました。
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認証標準物質(ISO):Certified Reference Material(CRM)
ISO17025およびGuide34(ISO17034)のダブルの認定のもと製造した認証標準物質であり、標準物質のなかでは最高水準の規格です。安定性、均質性の確認に加え、必ずトレーサビリティがとれること、そして不確かさが確認され付与されていることが条件に含まれています。 -
標準物質(ISO):Reference Material(RM)
こちらもISOで定義された標準物質にそった製品です。CRMと同様に安定性や均質性の確認はしていますが、トレーサビリティや不確かさの付与がないものがあります。 -
標準物質:Analytical Standard
自社で設定した規格で製品の確認を行い分析証明書を作成しています。
なお、標準物質の規格グレードではない、試薬グレードの物質は規格を見ると高純度の製品も沢山ありますが、基本的に定量用を目的としては作られておらず、場合によっては分析証明書等がない場合もあるので注意が必要です。
パラメーター | NMI Standard/国家計量標準 | 公定規格書に規定された標準品 | 認証標準物質/CRM | 標準物質/RM | 標準試薬/Analytical Standard | 試験研究用試薬/Research Chemical |
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純度 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | △ |
アイデンティティ | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | △ |
含有量 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | △ | |
安定性 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | △ | |
均質性 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | ||
不確かさ | 〇 | 〇 | ||||
トレーサビリティ | 〇 | 〇 | △ |
分析をはじめるとき、メソッドを変更するときに、最初に探す必要があるのが「ものさし」である「標準物質」。一口に標準物質といっても、このように多くの規格やグレードが混在しています。分析の信頼性確保につなげるためにも、標準物質を選択する際には適切な標準物質を選択できているか一度立ち止まって確認してみてください。
なお、現在メルク/シグマアルドリッチでは、業界最大級の4万品目を超える標準物質を取り扱っています。主に4つのサイトで製造を行っており、これら4つの拠点は全て、最高水準を表す「ISO17025」と「Guide34」のダブルの認定を取得しています。お探しの標準物質が見つかるようにサポートしていますので、ぜひご参照ください。
<無料PDFダウンロード>適切な標準物質の選択方法とは?
当PDFでは、標準物質の重要なトピックである、計量トレーサビリティや標準物質のグレード、分析証明書、標準物質のフォーマットと用途など、目的に合った標準物質を選択する際に考慮する事項についてさらに詳しく解説しています。
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