ISOって何?食品微生物試験に関わる国際基準と概要

ISOって何?食品微生物試験に関わる国際基準と概要

国際基準、ISOとは

皆さんも、きっと一度は耳にしたことがあるはずの「ISO」。しかし、その定義や内容を正確に答えられる人は意外に少ないかもしれません。

ISOとは、スイスのジュネーブに本部を置く非政府機関 International Organization for Standardization(国際標準化機構)の略称です。そして、このISOが制定した規格をISO規格といいます。

ISO規格は国際的な取引をスムーズにするための基準で、日本品質保証機構(JQA)によれば次のように説明されています。

"何らかの製品やサービスに関して「世界中で同じ品質、同じレベルのものを提供できるようにしましょう」という国際的な基準であり、制定や改訂は日本を含む世界165ヵ国(2014年現在)の参加国の投票によって決まります。”

このISO規格、実は私たちの身の回りにもたくさん適応されていることをご存知だったでしょうか?例えば、非常口のマーク(ISO 7010)やカードのサイズ(ISO/IEC 7810)、ネジ(ISO 68)などがそうです。こんなに身近なモノにも当てはまるなんて、驚きですね。

そして、ISO規格はモノに対してのみ適応されるものではありません!組織の品質活動や環境活動を管理するための「仕組み」にも制定されているんです。ライフサイエンス分野では、食品の微生物試験もその対象の一つ。

こうした流れを受けて、微生物試験法が見直されはじめます。具体的には、2005年に「食品からの微生物標準試験法検討委員会」が設置されたことで、公定法にISO法が引用されていきました。

日本では、食品微生物試験は、独自に定められた公定法に照らし合わせて行わることが多いと思います。しかし、市場の国際化や食品の安全に対する消費者意識が高まってきたことで、少しずつ状況が変わってきました。つまり、「食品の検査結果」を、世界基準で見る必要が出てきたというわけです。

このように、今後、日本においても、ISOは食品の微生物試験を行うための基準として欠かすことのできない役割を果たしていくと考えらます。そこで今回は、食品微生物試験に必要なISOの概要について紹介していきます。

ここで一度、基本的な知識を確認しておきましょう!

食品微生物試験に必要なISOとは?

食品微生物の試験は「信頼」できるモノであることが絶対の条件。特に、その「試験方法」「結果」は重要です。そして、ISO規格はこの二つの過程を担保するという役割を果たしています。実際にどういったものが挙げられるか、簡単に見ていきましょう。

まずは「試験方法」に関わるISOから。

信頼度の高い結果を得るためには、国際的に認められた試験法に照らし合わせて試験を行う必要があります。食品の国際的な流通には、WTO/SPS協定(衛生植物検疫措置の適用に関する協定)が結ばれているのですが、ここでは規格基準への適否の判断に用いる試験法としてISOが採用されています。

一つだけではなくいくつかのISOが該当しますが、例えば、次の3つは代表的なものです。

  • 培地の調整や性能評価に関するISO 11133
  • 微生物試験の一般要求事項および手引きであるISO 7218
  • 試料調整や初期懸濁液および10倍希釈液の調整に関するISO 6887シリーズ

次に試験の「結果」に関わるISOです。

試験結果を信頼してもらうには、試験所が適切な試験結果を提供する能力があることを証明する必要があります。その手段のひとつが第三者によりその能力を審査、認定される試験所認定制度。そこで採用されているのがISO/IEC 17025「試験所及び校正機関の能力に関する一般事項」なんですね。こうした基準を設けることによって、しっかりと「結果」の信頼性が担保されるというわけです。

では、以上に出てきたISO 11133およびISO 17025について、もう少し詳しく見ていきましょう。

食品微生物検査で、特に理解を深めておきたいISO規格です!

方法の指針 食品微生物試験に必要なISO 11133とは

微生物試験では、寒天培地や液体培地を用いた「培養法」が基本です。そのため、培地の取り扱いは、特に重要な管理事項のひとつとなります。

ISO 11133はこの「培養法」において、試験結果の信頼性を確保するために重要な基準です。つまり、培地の調整、管理、性能評価に関わる指針なんですね。

培地の性能評価では、発育性、選択性、特異性が評価されますが、培地ごとに培養条件、評価用菌株、リファレンス培地、評価基準などが規定されています。

具体例は次の図の通りです。ちなみに、ここでは評価菌株の保存・維持、保存培地の調整、定量テストにおける接種量などについても言及されています。こうしたことをクリアすることで、はじめて試験の信頼性が担保されるというわけです。

能力の指針 食品微生物試験に必要なISO 17025とは

一方、試験所や校正機関の「能力」を示すために一般的に要求される規定事項が、ISO 17025です。これは、その規模に関わらず、試験や校正を行うすべての施設を対象としています。

このISO 17025は、大きく分けて「管理上の要求事項」と「技術的要求事項」で構成されます。「管理上の要求事項」は、どのような業界でも使用できる、顧客に提供する製品・サービスの品質を継続的に向上させていくことを目的とした品質マネジメントシステムISO 9001とほぼ同じ内容。その意味で、試験所や校正機関でより実践的に使用できるよう、ISO 9001でカバーされていない「技術的要求事項」を追加したものと考えていいでしょう。

では、「管理上の要求事項」とはどういうものか、より詳しくみていきましょう。これについては「試験所・校正機関は、その活動範囲に対して適切なマネジメントシステムを構築し、実施し、維持すること」と明記されており、試験結果の品質を保証するために必要なポリシー、システム、プログラム、手順および指示を文書化することが求められています。また、文書は最新版が分かるようにし、改定や配布状況を把握できるようにすることも必要です。

一方、「技術的要求事項」では、正確性と信頼性を決定する因子(人的要因、施設および環境状況、試験・校正の方法および方法の妥当性確認、設備、測定のトレーサビリティ、サンプリング、試験・校正品目の取り扱い)について書かれています。

その一例が、試験担当者の技能証明。試験担当者の技能が試験結果を左右するため、適切な教育、トレーニング、経験を積んでいるかなど、いくつかのポイントでISOの基準を満たすことが不可欠です。試験施設についても同様です。例えば、クロスコンタミを防ぐために試験エリアを隣接するエリアから独立させ、結果に影響する可能性がある施設および環境条件について記録しておくことなどが規定されています。

この記事では、食品微生物検査に必要なISO 11133およびISO 17025について簡単に紹介しました。メルクでは、ISO 17025を取得し、ISO規格に対応した製品をご用意しています。「食品検査・食品微生物関連ソリューション」に関するこちらのウェブサイトでもISOについてわかりやすく紹介してますので、ぜひ一度アクセスしてみてください!

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