世界中で用いられる水分測定法「カールフィッシャー法」とは

世界中で用いられる水分測定法「カールフィッシャー法」とは

ライフサイエンスの世界にある法則名の由来と不思議

ライフサイエンスの研究では、様々な法則、手法が用いられています。例えば、ランベルト・ベールの法則、ボイル・シャルルの法則、鈴木・宮浦カップリング。ライフサイエンスの世界でよく目にするこれらの法則や手法には、発見者の名前が付けられていることがほとんどです。

ランベルト・ベールの法則は、「光の吸収において、物質に入射する光の強度と透過光の強度との比の対数は、物質の厚さに比例する」というランベルトの法則と、「溶液による光の吸収は濃度に比例する」というベールの法則を組み合わせたもの。最初にこの法則を発見したピエール・ブーゲ氏のことはあまり知られていません。このランベルト・ベールの法則は、比色法の原理です。比色法とは、試薬等を用いてサンプルを発色させ、その発色度合いから濃度等を測定する方法で、食品化学、環境分析、生化学などの分野で活躍しています。

ボイル・シャルルの法則は、一定の温度下での気体の体積が圧力に逆比例するというボイルの法則、一定の圧力下で、気体の体積の温度変化に対する依存性を示したシャルルの法則、気体の性質に関するゲイ・リュックサックの法則を組み合わせたものですが、ゲイ・リュックサック氏の名前が抜け落ちています。

鈴木・宮浦カップリングは日本の研究者の名前に由来しています。皆さんがご存知のようにパラジウム触媒を利用したクロスカップリングで、鈴木章先生はノーベル化学賞を受賞しました。

では、分析化学における滴定法のひとつであるカールフィッシャー法はどうでしょうか。「カール氏とフィッシャー氏が発見した方法を組み合わせたもの」と思われる方もいるかもしれませんね。こちらはその名の通り、ドイツの化学者、カール=フィッシャー氏が1935年に発表した水分測定法です。この発表以降、カールフィッシャー法による水分測定は世界中で用いられるようになりました。

カールフィッシャー法の原理

カールフィッシャー法による水分測定は、下記反応式のように、水とヨウ素による二酸化硫黄の酸化に基づいています。

2H2O+I2+SO2⇔H2SO4+2HI

カール=フィッシャー氏は、ヨウ素、二酸化硫黄、ピリジン、およびメタノールを混合し、調製した溶液を発表しました。現在では不快臭のあるピリジンは使用されなくなり、代わりに無害なイミダゾールが使用されています。

カールフィッシャー法はよく用いられ技術的に確立されている方法ですが、実際の反応原理については完全には明らかにされていませんでした。その一方で反応過程の議論や溶媒の改良などにより、反応機構の研究は進められてきました。主要な反応は、次のように2段階になります。

  1. CH3OH+SO2+RN⇔[RNH]SO3CH3
  2. [RNH]SO3CH3+H2O+I2+2RN⇔[RNH]SO4CH3 +2[RNH]I (R=塩基)

1970年代には塩基は緩衝剤の役割を果たすことが分かり、最近の研究結果では、反応のほとんどが亜硫酸アルキルの酸化によるものだということが明らかになっています。

カールフィッシャー法の特長とメリット

カールフィッシャー法は測定時間が短いうえ、以下の点で他の水分測定方法よりも優れているとされています。

  • 試料準備の容易さ
  • 他の揮発性物質が存在しても問題がない
  • 試料対象の広さ(個体、液体、気体)
  • 検量線が不要で、水分値を求めることが可能
  • 微量水分を正確に定量できる

カールフィッシャー法はその汎用性、正確性、簡便性により、化学、石油、自動車、電子、医薬品産業などあらゆる場面で用いられています。また、ISO、ASTM、DIN、米国薬局方、ヨーロッパ薬局方、日本薬局方、JISなど世界各国の代表的な公定法で広く採用されている信頼性の高い手法でもあります。

水分測定の目的は様々です。例えば、エンジンオイル中の水分は燃焼不良に、医薬品中の水分は活性値に、食品中の水分は保存性や味覚に影響を及ぼすことがあるので、わずかな水分も正確に測定しなければなりません。ですから、試料の性質に応じた最適なカールフィッシャー試薬を選ぶ必要があります。

適切な試薬を選択することは、正確で再現性のある測定結果を得るために最も重要です。メルクでは幅広い研究の要求に応えるために、約600種類の製品ラインナップと最適な測定法を公開していますので、ぜひ参考にしてみてくださいね。

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