身近に存在する揮発性有機化合物の影響、シックハウス問題を考える
VOCが引き起こすシックハウス症候群
VOCは実験のほかにも、溶剤として塗装、洗浄、印刷などの作業に幅広く使用されています。一方で、揮発性が高いため、目を刺激したり、呼吸や皮膚から体内に取り込まれやすく、なかには発がん性を示すものもあるのはご存知の通り。
化学実験以外ではあまり意識しないVOCですが、身近なところにも存在します。どんな化学物質がどんなところに使われているのか、例を挙げてみましょう。
<身近に使われているVOCの例>
- ホルムアルデヒド
合板、パーティクルボード、壁紙用接着材などに用いられるユリア系、メラミン系、フェノール系などの合成樹脂や接着剤、一部ののりなどの防腐剤 など - トルエン、キシレン、エチルベンゼン
合板、パーティクルボード、壁紙用接着材などに用いられるユリア系、メラミン系、フェノール系などの合成樹脂や接着剤、一部ののりなどの防腐剤 など - スチレン
ポリスチレン樹脂などを使用した断熱材など - パラジクロロベンゼン
防虫剤や芳香剤など - クロルピリホス
しろあり駆除剤 - フタル酸ジ-2-エチルヘキシル
壁紙、床剤などの可塑剤
このように、私たちの身の周りにはVOCがあちらこちらに存在しています。そして、この住宅の建材や日用品から揮発する化学物質などによるシックハウス症候群が問題となっています。これは、冷房や暖房の効率をよくするため、天井や窓などのジョイント部分の隙間を少なくする住宅の高気密化が進んだことも一因となっています。実験室では排気しながら作業を行いますが、高気密化住宅では室内に溜まってしまい、目がチカチカする、鼻水、のどの乾燥、吐き気、頭痛、湿疹などさまざまな症状を引き起こすのです。
住まいに存在する有害な13の化学物質
厚生労働省は、シックハウス問題に関する対応として、平成9年から14年にかけて国内の住まいを対象とした実態調査で室内濃度が高かった物質や海外で指針値が示されている物質など、健康への有害な影響のある以下の13の化学物質について「室内濃度指針値」を設定しました。
- ホルムアルデヒド
- トルエン
- キシレン
- パラジクロロベンゼン
- エチルベンゼン
- スチレン
- クロルピリホス
- フタル酸ジ-n-ブチル
- テトラデカン
- フタル酸ジ-2-エチルヘキシル
- ダイアジノン
- アセトアルデヒド
- フェノブカルブ
※以上は厚生労働省のこちらの資料などを参考にしています。
http://www.nihs.go.jp/mhlw/chemical/situnai/hyou.html
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/kankyo/kankyo_eisei/jukankyo/indoor/sickhouse_faq/sick_faq_02.html
しかし指針値設定から10年以上経過していることや、指針値が設定されていない化学物質が使用されるようになり、これによる健康への影響が懸念されるようになったため、シックハウス問題に関する検討会において指針値の追加、変更などの見直しが行われました。既存のキシレン、エチルベンゼン、フタル酸ジ-n-ブチル、フタル酸ジ-2-エチルヘキシルの指針値変更に加えて、新たに2-エチル-1-ヘキサノール、テキサノール、TXIB(2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールイソブチレート)の指針値が設定される予定です。
室内空気中化学物質の測定
シックハウス症候群を避けるためには、室内にどんなVOCがどのくらいの濃度で存在しているのかを実際に測定し、その原因を究明することが重要です。第21回シックハウス(室内空気汚染)問題に関する検討会資料では、採取法方法と測定方法を『「室内空気中化学物質の測定マニュアル」および「室内空気中化学物質の採取方法と測定方法(Ver.2)」』に基本的に従うとしています。シグマアルドリッチでは本法に記載されている捕集に相当する捕集管としてORBO-91LとORBO-91Tを発売しています。
大気捕集用の溶媒抽出用ORBOチューブは米国の国立労働安全衛生研究所などの測定法では広く使用されており、日本国内の作業環境測定でも多く使用されています。このうち、ORBO-91LやORBO-91Tは、シックハウス調査のさきがけとして衛生研究所、受託分析会社などを中心とした検討調査で使用されています。
ORBO-91Lは、粒子径やボアサイズがコントロールされた吸着材であるカーボンモレキュラーシーブのCarbosieve S-IIIを充填したチューブです。揮発性有機化合物(VOC)、有害大気、室内大気を対象としています。
ORBO-91Tは、ORBO-101のスチレンやピネンの高い回収率を備えた捕集チューブです。スチレン、テンペルを含むVOCを対象としています。
VOCは、さまざまな場面で欠かせない一方、健康に影響することがあります。実験室にありふれているため、扱いが雑になっていませんか?みなさんも、実験でホルムアルデヒドやトルエンをはじめとする化学物質を使用するときには、必要に応じてドラフトチャンバーを使用したり、マスクや保護メガネを着用して身を守ってくださいね。
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