環境分析で暮らしを守る、メンブレンフィルターの役割
環境分析が暮らしを守る
実験でなにかとお世話になるメンブレンフィルター。実は産業廃棄物処理の現場でも活躍しています。産業廃棄物を処理するとき、日本では「廃棄物の処理および清掃に関する法律」の下、環境への有害物質の排出を管理しています。そこで重要なのが、産業廃棄物からの有害物質を適切に処理できているかを確認する分析。その前処理のため、メンブレンフィルターが使われているのです。
私たちは毎日1人925 gのごみを捨てています。これらは一般廃棄物と呼ばれ、平成28年度の総排出量は4,317万トン(東京ドーム約116杯分)でした。それ以上に多いのが、工場やビルの建設現場などから出てくるごみ=産業廃棄物です。
環境省が発表した「産業廃棄物の排出及び処理状況等について」によると、平成27年度の産業廃棄物は約3億9,119万トン。このうちの3%が最終処分、つまり、埋立処理や海洋投入されています。もちろんそのまま環境中に放り出すわけではありません。この最終処分方法について、海や川等の有害物質による汚染を未然に防ぐために、産業廃棄物からの有害物質の溶出量の基準値および分析方法が定められています。基準値を超えている場合、基準値以下にするために、適切な処理(溶解や不溶化処理等)が義務付けられています。
精度よく安定した分析を行うために
分析により産業廃棄物からの有害物質の溶出量が基準値以下であれば、「有害物質が適切に処理されている」と判断され、最終処分できるようになります。このとき、分析結果が不正確であれば、有害物質が流れ出てしまうかもしれません。つまり、精度が高く安定した分析を行うことが、海や川などの環境を守ることにつながるのです。そして、どの分析でも共通して言われていることですが、精度良く安定した分析を行うために最も重要なのは、実は試料の調製・前処理なのです。
たとえば、図1は産業廃棄物に含まれる金属等の検定方法(環境庁告示第13号)にある分析試料の前処理のフローです。ここでは、溶出の為の溶媒としての水は、廃棄物由来の金属だけを検出するために、JIS K0557の示すA4、A3の純度のものが求められますので、超純水Milli-QやElix水が使われています。
さらに、不溶物や分析に影響する微粒子を除くためには、1.0 μm以上の粒子を完全に捕捉することができる孔径1.0 μm(φ 47または90 mm)のメンブレンフィルターが必要です。メルクでは、親水性ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製のオムニポア、セルロース混合エステル製のMF-ミリポアを提供しています。
オムニポアは親水性ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製メンブレンフィルターです。親水化処理によりほとんどの有機溶媒や酸・アルカリの水溶液に使用可能なので、これまでのようなフィルター素材(親水性、疎水性)の使い分けが不要です。非特異的吸着が少ないため、タンパク質溶液の除粒子にも最適です。
<用途例>
- 液体、溶媒の粒子分析
- DMSO ろ過滅菌
- 藻類、プランクトンなどの顕微鏡観察
- HPLC移動相の除粒子
- 水溶液/溶媒の除粒子
- タンパク質溶液の除粒子
MF-ミリポアは、生物学的に不活性な酢酸セルロースと硝酸セルロースの混合物から構成されておりその歴史も古く、多くの分析、研究で使われています。
<用途例>
- 血液や血清の清澄化
- 添加物、抗生物質、注射剤、組織培養培地のろ過滅菌
- 大気中のアスベスト、砒素、木綿ダスト、金属、殺虫剤、塵埃などのモニタリング
- セルハーベスト、セルウォッシング
- コロニーハイブリダイゼーション
- 薬品、燃料、作動油の汚染分析
- ビール、ソフトドリンク、水、ワインの微生物分析
メルクミリポアのウェブサイトには、様々なタイプのフィルターが紹介されています。実験の用途に合わせて、ぴったりのフィルターを選びましょう。「分析前処理に使う精密ろ過フィルターの選び方」の記事も参考にしてくださいね。
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