蒸留水を製造するときのポイントと基礎知識

蒸留水を製造するときのポイントと基礎知識

蒸留水の基礎

皆さんが日々研究で使用されている蒸留水。この記事では、改めてその基礎知識についておさらいして行きます。「そんなの知っている!」とあなどるなかれ。当たり前のことだからこそ、しっかりと抑えておきたいポイントを解説して行きます。

まず、水中から不純物を取り除いた水を「純水」と呼びますが、蒸留によってできた純水は「蒸留水」と呼びます。蒸留は、きわめて古くから使われている方法で、揮発性や沸点などの物性の違いを利用します。不純物を含む水を沸騰・気化させた後、蒸気を冷却して得られます。蒸留水製造装置は日本で歴史的に古くから使われている実績が多い装置です。

蒸留は、水に含まれる4種類の不純物(無機物、有機物、微粒子、微生物)を除去できる点が最大の利点です。一方、沸騰・気化という原理上、水の沸点に近い成分や水より沸点が低い成分の分離が困難であることや、冷却部が大気開放になっていることから、精製時に大気中の不純物(二酸化炭素、有機物、微生物など)を吸い込んでしまい、水質劣化が起こる場合があるので注意が必要です。なお、近年ではこれらの対策が施された蒸留器も存在します。

蒸留水製造装置の原理

運用上は、製造スピードが遅いという特徴があります。お鍋に水を入れて沸騰させるシーンを想像してみてください。お鍋の中の水が空っぽになるまで沸騰し続けるためには、長い時間が必要ですよね?蒸留水製造装置も同様です。一般的な蒸留水の製造スピードは1 時間あたり1.8L です。あまり水を使わない場合は問題ありませんが、比較的量を使う場合は、水が足りずに「水待ち」になってしまうことがあります。「水」はすべての実験や分析の基本なので、水量が足りないということは比較的ストレスがたまりやすいようです。

色々な蒸留水製造装置

蒸留法では水の沸点に近い成分や水より沸点が低い成分の分離が困難で、また蒸留の際に沸騰した水が粒子状のまま蒸気中に飛散(飛まつ同伴)され、蒸留水の純度を低下させてしまうことがあります。

そのため、蒸留1回だけで精製を行う蒸留水製造装置は少なく、あらかじめイオン交換樹脂で処理するタイプの蒸留水製造装置が大半を占めています。このタイプの装置で気をつけなければならないことは、イオン交換樹脂をきちんと交換することです。交換をしないと、蒸留しているボイラー内やヒーターにスケールとも呼ばれる缶石が付着し、水質低下・蒸留効率(速度)の低下やヒーターの過熱破損の原因となります。1日10Lの製造量の場合、2-3ヶ月での交換が必要です。

ちなみに缶石とは、給水中に含まれている不揮発性溶解質および不溶解性物質の濃度が水の蒸発によって増加し、これらが析出して伝熱面に付着したもののこと。成分は主にカルシウムおよびマグネシウムの硫酸塩,炭酸塩,ケイ酸塩および水酸化塩で、熱伝導を悪くするのでとてもやっかいなんですね。

ヒーターに付着した缶石

話を戻しましょう。蒸留水を多量に製造する場合は、イオン交換樹脂の交換頻度が高くなるため、蒸留の後段にイオン交換樹脂を配置します。この場合、ヒーターには缶石が付着することが前提ですので、SUS のような過熱破損しにくい材質のヒーターを用います。付着した缶石は除去しないと蒸留効率は低下しますので、年1 回程度の定期的な洗浄が必要です。
蒸留の前段にイオン交換樹脂を配置した場合と後段に配置した場合では、メンテナンス性の違いに加え、精製される蒸留水の水質も異なります。

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