正しい分析には適した水を!医薬品等の試験に用いる水

正しい分析には適した水を!医薬品等の試験に用いる水

正しい分析には適した水を

実験や分析で使う水には、精製水、蒸留水、超純水などさまざまな種類があり、水質が結果に影響してしまうことがあります。とくに、医薬品では厳格な法規制に対応した正確な分析が求められるため、その選択は重要です。医薬品が世に出てくるまでには、安全性や品質を確認するためにさまざまな分析が行われますが、そのときに使われる水は、日本薬局方で規定されている「医薬品等の試験に用いる水」です。この記事では、「医薬品等の試験に用いる水」について検証します。

医薬品等の試験に用いる水とは?

日本薬局方は、医薬品の性状および品質などを定めた医薬品の規格基準書です。100年以上の歴史があり、医薬品の開発、試験技術の向上に伴って改訂が重ねられ、現在では、第十七改正日本薬局方が公示されています。

ひとつ前の平成23年3月24日に告示された第十六改正日本薬局方では、精製水など製薬用水各条の抜本的改正に加え、通則20「医薬品の試験に用いる水」に関する改正も行われました。

図1に第十五改正日本薬局方と第十六改正日本薬局方の改正のポイントをまとめています。第十五改正日本薬局方までは、医薬品の試験には製薬用水各条に規定された「精製水」を用いることが基本とされていました。

第十六改正日本薬局方では「医薬品等の試験に用いる水は、試験を妨害する物質を含まないなど、試験を行うのに適した水とする」と改められました。試験によって求められる水質が異なるため、一律の「精製水」規格ではなくなりましたが、一方でどの程度の水質を試験に用いるか試験毎に検証が必要となりました。なお、第十七改正日本薬局方は第十六改正日本薬局方と同様です。

図1 第十五改正日本薬局方と第十六改正/第十七日本薬局方の比較

HPLC試験に精製水を使っても大丈夫?

医薬品の試験に最もよく用いられるHPLC試験を例に、試験に適した水質の検討を行ってみましょう。ここでは、第十五改正日本薬局方で医薬品の試験に用いる水として規定されていた精製水グレードの水とHPLCで一般的に使用されている超純水を比較検証しました。

精製水グレードの水と超純水の精製には、Milli-Q Integral機器分析タイプを使用しました。Milli-Q Integralは純水装置と超純水装置が一体型となっている超純水システムです。逆浸透膜とEDI連続イオン交換(Elix方式)により精製されたElix水の水質は、1-10MΩ・cm程度、TOCは50-100ppb程度です。超純水は、イオン交換樹脂、活性炭、185/254 nm UVランプ、0.22 μmメンブレンフィルターによって精製され、水質は比抵抗18.2 MΩ・cm、TOC 5 ppb以下となっています。

このようにどちらも日本薬局方精製水の規格は満たしているものの、水質の異なるElix水と超純水をグラディエント溶出前に1時間カラムに通水して濃縮し、UHPLCを用いて分析しました。

表 日本薬局方精製水規格とElix水、超純水の水質

 

Elix水ではゴーストピークが確認された!

UHPLCの分析結果をみると、精製水グレードのElix水ではゴーストピークが確認され、(U)HPLCに使用するために十分な水質ではないことが確認されました(図2A)。一方、超純水では1時間の濃縮後であるにもかかわらず、ごくわずかなピークのみしか観察されず、非常に高純度であり(U)HPLCに適した水質でした(図2B)

図2 UHPLCでの分析結果(クロマトグラム)

データ提供:アジレント・テクノロジー株式会社

つまり、第十五改正日本薬局方で医薬品の試験用水として規定されていた精製水グレードでは、HPLCやUHPLCなどの試験においては水質が不十分である可能性が示されました。医薬品の試験によく用いられるHPLC試験では、超純水の使用が適しているといえます。

みなさんは、実験や分析でどの水を使っているでしょうか?正しい結果を効率よく得られるように、水質の違いを意識しましょう。M-hubではこれまでにも「水」について取り上げていますので、参考にしてくださいね。

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