経験者が伝授するポスドクの応募方法

経験者が伝授するポスドクの応募方法

納得のいくポスドク先を選ぶために

博士課程の次の進路として、ポスドクの道を考えている人は多いと思います。納得のいく研究室を選択するためには、早くから準備をしておくことが重要。しかし、何を基準に選んでいけばいいのでしょうか。

困った時は、経験者に聞くのが一番です。この記事では、先輩研究者への取材からわかったポスドクの応募先の選び方と、応募や面接で気をつけるべきポイントについて紹介します。

ポスドクの応募先の選び方

  1. 研究室のスタイルを重視して選んだN先輩の場合

    「もっとも重視したのは、ラボの大きさです。私の場合は、大きすぎないラボが理想でした。ボスとディスカッションしたいと思ったとき、すぐにできるくらいの規模がよいと考えたのです。数十人もいるようなところは避けて、10人くらいの規模のラボを探しました」

    多くの場合、研究室メンバーのだいたいの数は、ウェブサイトなどを確認すればわかるようです。ラボ全体の雰囲気を知るためにも、ぜひチェックしておきたいところ。

    ちなみにN先輩は、同じテーマを複数人に与えて競争させるようなラボは自分に合わないと考え、避けたそうです。大規模なラボで、同僚たちと競争しながら腕を磨いていくスタイルが合う人もいるし、小規模でもじっくりとボスと話しあいながら自分のペースで進めていくスタイルが合う人もいます。自分がどんなタイプなのかを考えて、ラボを選ぶことも重要ですね。

  2. 自分がやりたいことができるかどうかで選んだT先輩の場合

    「やりたい研究があったので、それを実行できる研究室を選びました。とりわけ、ボスが大御所で研究費が潤沢にあるラボの場合は、自由に研究させてもらえる可能性が高いと思います。また、ポスドクを数年続けた後には自分のラボを持ちたかったので、独立を応援してくれそうなラボを中心に探しました」

    独立を応援してくれるラボかどうかは、どのようにして判断するのでしょうか。

    「ラボから独立した先輩ポスドクの、その後の仕事を調べます。もともとの研究を継続されている場合は、独立を応援するタイプのラボだろうと考えました」

    明確な方向性と強い意志をもってラボ探しをしたT先輩。今振り返ると、反省する点もあったのだとか。

    「自分の中でやりたいことを明確にしてからラボを選択すると、回り道することなく実現に近づくことができます。しかし、それは裏を返せば、可能性を狭めてしまうことにもなります。つまり、想定外の経験から未来の可能性が広がることもあるんですね。私の場合、やりたいことを絞りすぎてしまったので、もっと思い切って新しいチャレンジをしてもよかったかなと思っています」

    T先輩は現在ニューヨークに自分のラボを構え、自分の研究をスタートさせています。学生のうちから明確に自分の将来を見据えて行動するのがよいのか、それとも、可能性を狭めずに飛び込むのがよいのか。どちらの方が自分の力を発揮できそうかを考えてみる必要がありそうですね。

  3. 積極性と人の縁がポスドク先につながったM先輩の場合

    M先輩は学生の頃から、どのような研究室に行きたいのかを周りにアピールしていました。その甲斐あって、希望する分野の研究者が指導教官に会いに来たとき、話をする機会を作ってくれたのだそうです。

    「採用されてから知ったのですが、当時、その研究室にはポスドクの応募メールがたくさん来ていて、そのほとんどを無視していたのだとか。ですが、僕の場合は、指導教官がその研究室のボスとたまたま知り合いで、その縁から面接にたどりつき、採用につながりました。縁の大切さを痛感しました」

    たとえ、このようなつながりがなくても、学会や講演で見かけたときに積極的に話しかければ、縁を作ることができます。また、一度メールを送って返事がなくても、二度、三度と送ることで、情熱が通じて面接までこぎつけるケースもあるのだとか。「想い」は秘めているだけでは伝わりません。積極的にアピールしていくことも重要ですね。

    また、ポスドク応募の際、複数のリファレンスを求められますので、推薦書を書いてもらえる様なネットワークをきちんと持っておくことも重要です。

ポスドク応募から採用されるまで

  1. 応募時に気をつけること

    応募したい研究室を見つけたら、研究室を統括する研究者にメールを書き、ポスドクに雇ってもらいたい旨を伝えます。たとえ、ホームページなどに「ポスドク募集中」と書いていなくても、あきらめずに、まずは聞いてみるとよいでしょう。取材をしていると、学振が取れなくても、論文が出るのが間に合わなくても、熱意や将来性を買われて採用されたというケースもありました。とにかく、行動してみることが重要なようです。

    では、応募のメールにはどのようなことを書いたらよいのでしょうか。

    O先輩は次のように言います。「メールには、現在自分が取り組んでいる研究の詳細を書きました。そして、卒業したら、そちらのラボに行きたいという希望をストレートに綴りました。また、いつ卒業して、いつから行けるのかというスケジュールも明確に伝えました」

    一方、S先輩は次のように語ってくれました。「履歴書を送り、自分が取り組んでいきたい研究を明確に記述しました。『この研究はそちらの研究室のこういう方向性と一致するはずだ。だから、働かせてほしい』という表現で、お互いにメリットがあることを強調して売り込みましたね」

    どのようなメールが面接にたどり着きやすいのか。もちろん、相手がポスドクを探しているタイミングに滑り込む必要があります。研究やスタイルの相性など、運に左右されることもあるでしょう。しかし、少なくとも、自分の考えややりたいことを明確に伝えることで、ミスマッチが起こるのを最小限に抑えることができるのではないでしょうか。

    また、分野や研究室(研究所)によって、「能力」を優先するか「人とのつながり」を優先するかそのスタイルは様々です。希望の行き先がある場合は、事前調査を推奨します。

  2. 面接で気をつけること

    面接は応募先の研究室のボスと1対1で話す場合もありますし、所属機関の教授や関係者たちに囲まれて行われる場合もあります。どんな状況でも自分の考えや希望をしっかり伝えられるように準備をしておきましょう。

    また、面接は審査されるだけではありません。自分の希望と応募先の条件が合致しているかどうかを見極める機会でもあります。貴重なポスドク期間を有意義に過ごすためには、遠慮せずに質問して疑問点を明らかにしていくことも重要です。

    面接時には、今まで行ってきた研究内容のプレゼンも行うのが一般的です。プレゼンでは、論文を読めばわかる内容を繰り返すのではなく、どのような手法を使えるのかということや、最終的に目指していることは何かなど、研究者としての姿勢や思いも伝えていきましょう。

  3. 欧米のラボの場合

    欧米の研究室では面接のスタイルが日本と少し違います。ボスと面接をするだけでなく、ラボのメンバー全員と1対1で個人面接をします。夜はみんなでディナーを囲み、次の日に帰るというのが一般的なスケジュールです。メンバーが多い場合は面接が2日がかりになるときもあるのだとか。

    欧米の場合、面接で気をつけることは、笑顔でいることだそうです。たとえ英語がうまく話せなくても、紙に鉛筆で言いたいことを書いたり、身振り手振りで訴えるなどの方法で、コミュニケーションを積極的に取ることが重要です。ナイーブな様子を見せていると、ストレスを抱えてダメになってしまうのではないかと思われ、マイナス要素になってしまうという意見もありました。

以上、ポスドクに応募するときの注意点を紹介しました。普段から自分のヴィジョンを持ち、情報を集めていれば、チャンスが訪れたときに素早く行動できるはず。この機会にぜひ、考えてみてはいかがでしょうか。

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