世界の注目を集める日本発の太陽電池「ペロブスカイト太陽電池」とは

世界の注目を集める日本発の太陽電池「ペロブスカイト太陽電池」とは

太陽電池とは

太陽電池とは、光を受けると動ける電子が発生する光電変換と呼ばれる現象を利用した、光エネルギーを電気エネルギーに変換する素子です。太陽光から電気を作り出す太陽電池は現在、半導体の基板材料にシリコンを使うタイプが主流ですが、これに対してペロブスカイトと呼ばれる特殊な結晶構造の材料を使うペロブスカイト太陽電池が注目を集めています。

太陽電池は環境にやさしい発電方法として一般に広く普及していますが、その仕組みまで説明できる人はなかなかいないかもしれません。

太陽電池の中でどういったエネルギー反応が起きているのか、どのような構造を持っているのか。太陽電池の種類とともに基本構造についてみていきましょう。

無機系太陽電池の基本構造

腕時計や電卓、住宅用太陽電池、ソーラーパネルを大量に用いたソーラー発電所に利用されているのが無機形太陽電池です。シリコン系太陽電池や化合物半導体系太陽電池のように無機物を原料としていることから、無機系と呼ばれています。

p型半導体とn型半導体との接触面、p-n接合面に光が吸収されると、電荷分離が起こって電子とホール(電子の抜け殻、正の電荷をもつ)が生成し、それを集電極に導くことで両極間に起電力が生じるという現象を利用したものです。

かつての高価だった結晶系シリコンに代わり、比較的安価なアモルファス系シリコンと結晶シリコンを組み合わせた太陽電池が主流になりつつあります。というのも後者は安価なだけでなく、これまでの結晶系シリコンの発電効率15~20%であるのに対し、シリコンハイブリッド型は20%を超えるからです。

有機系太陽電池の種類と基本構造

有機系太陽電池とは、機能性高分子や有機色素などの有機物を原材料とする太陽電池です。現在研究が行われている有機系太陽電池には色素系増感太陽電池と有機薄膜太陽電池との2種類があります。

  1. 色素系増感太陽電池

    発明者の名前を冠してグレッツェルセルとも呼ばれ、光触媒として有名な酸化チタンと色素を組み合わせた電荷分離層を持っています。酸化チタンは、もともと紫外線しか吸収できませんが、酸化チタンの表面に色素が吸着することで、可視光にも感度を持つようになります。 このことを、「色素増感」と呼びます。

    まず色素が光エネルギーを吸収して電荷分離を起こし、その電子が酸化チタンに移り、集電極へと伝わります。酸化チタンナノ多孔膜に注入された電子は、負極、外部回路を通って正極に達します。正極の表面で、電子は電解液中のヨウ素に渡され、ヨウ化物イオンができます。このヨウ化物イオンは色素によってまた還元されます。この一連の流れが繰り返されることで太陽電池として作用することになります。

    この色素増感太陽電池が、ペロブスカイト太陽電池のルーツとなっています。

  2. 有機薄膜太陽電池

    光エネルギー吸収により励起され電子を与える有機材料(p型半導体材料)と p 型半導体材料との界面・接合面から電子を受け取る有機材料(n型半導体材料)の接合により形成される p-n 接合型太陽電池です。

    有機薄膜太陽電池に光を当てると、電子供与体(ドナー)が光を吸収して励起され、励起子が生成します。それが電子供与体と電子受容体の界面に移動して、そこで電子供与体から電子受容体に電子が流れて電荷分離状態を形成します。

    すなわち、電子供与体は電子を電子受容体に渡して自身はホールとなるとともに、電子受容体は電子を受け取って陰イオンとなり、ホールが透明電極基板側に、電子がもう一方の電極に流れることにより、外部回路に電流が流れて太陽電池となります。

    有機薄膜太陽電池の特徴は、電子供与体である導電性プラスチックのポリチオフェン誘導体、および電子受容体のフラーレン誘導体という二種類の有機半導体が接合して電荷分離層をつくることです。

    さらに電荷分離層の正極側には、正の電荷をもつホールを正極に受け渡すホール輸送層として、ポリスチレンスルホン酸でドープした導電性プラスチックのポリエチレンジオキシチオフェンが用いられています。

ペロブスカイト太陽電池の登場

ペロブスカイト太陽電池は、桐蔭横浜大学の実験室で誕生し、シリコン太陽電池にせまる22%の変換効率も印刷法で作る素子で達成している、現在最も注目される太陽電池です。

ペロブスカイト化合物を太陽電池に用いる研究が始まったのは2005年のこと。ヨウ化鉛(PbI2)とヨウ化メチルアンモニウム(CH3NH3I)を混合することで得られるヨウ化鉛メチルアンモニウム((CH3NH3)PbI3)の褐色の化合物が、酸化チタン多孔膜を光電極とする色素増感太陽電池の増感剤として機能することを発見したのが研究の始まりです。

ペロブスカイトとは、一般式ABX3で表される構造を持つ一連の材料をさします。例えば、チタン酸バリウム(BaTiO3)や、地球下部マントルの主要構成鉱物(MgSiO3)もペロブスカイト化合物です。電気的、磁気的特性を有する特殊な物質群として知られています。

ペロブスカイト太陽電池は、色素増感太陽電池と有機薄膜太陽電池の長所をうまくハイブリッドした太陽電池で、生活家電や電気自動車の充電に用いるための開発のみならず、IoTデバイス用のエナジーハーベスト電源としての注目も高まりを見せています。世界中の研究室で開発が進められている次世代太陽電池なのです。

ただし、課題も残っています。ペロブスカイト太陽電池は有害な鉛を含んでいるため、劣化した際に鉛が漏れ出し環境を汚染するかもしれません。今後、無害な代替物質の研究が進み実用化されれば、ペロブスカイト太陽電池を衣類やかばんに貼って、外出しながら発電し、モバイル機器の充電も可能になるかもしれませんね。