RT-qPCRのためのRT-PCRの基本とトラブルシュート

RT-qPCRのためのRT-PCRの基本とトラブルシュート

定量的PCRと遺伝子発現の評価

定量的PCR(以下、qPCR)の用途の一つに遺伝子発現の評価があり、これはmRNAのコピー数から測定されます。少量のRNAから遺伝子発現を検出し定量化するためには、定量的逆転写PCR(以下、RT-qPCR)による増幅が欠かせません。

この記事では、RT-qPCRの基礎となる逆転写PCR(以下、RT-PCR)について解説し、その後、RT-qPCRにおいてよく生じる問題とその解決方法について紹介します。

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RT-PCRの概要

RT-PCRは、RNAを増幅するための技術です。DNAポリメラーゼは1本鎖RNAを増幅することができないため、鋳型RNAからcDNAを作るためには逆転写が必要です。鋳型RNAから逆転写されたcDNAは通常のPCRか、場合によってはqPCRプロトコールを用いて増幅されます。

逆転写については、様々な逆転写酵素が利用可能です。MMLV(Moloney マウス白血病ウイルス)逆転写酵素はより長い転写に望ましい酵素で、RNase H活性を下げます。AMV(Avian Myeloblastosis Virus)逆転写酵素はよく用いられる酵素で、高い熱安定性があり、複雑な二次構造の転写に理想的です。強化型AMV逆転写酵素は、より高温で複雑な二次構造、かつ鋳型が少ない転写を想定して設計されています。

1ステップRT-PCRと2ステップRT-PCR

RT-PCRには、1ステップと2ステップの2種類の手法があります。

1ステップRT-PCRは、簡単で迅速なRT-PCRを必要とする場合に優れた選択肢です。この手法では、逆転写とPCRが同じチューブ内で行われるため、ピペット操作が少なく、混入物のリスクが最小限になります。この他に、手順の自動化が容易であること、感度と特異性が比較的高いなどの長所があります。

一方、2ステップRT-PCRは、より感度が高く、より効率的な選択肢です。逆転写のステップおよびPCRのステップそれぞれにバッファーを最適化できる、単一のRNA/逆転写サンプルから複数のPCRを行うことができる、cDNAを長期間保管することができるなどの利点があります。しかし、この処理にはより多くの準備手順が必要であり、時間がかかる場合があります。

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RT-qPCRのトラブルシュート

実験計画を十分に立て、すべてを注意深く用意しても、予想外の問題は起こりえます。ここでは、RT-qPCRにおいてよく生じる問題のうち3つについて解決法を解説します。

シグナルが小さいとき、または無いときは、阻害物質が存在している可能性があります。これらを除去するため、鋳型cDNAの希釈系列を作成しましょう。これによって、阻害物質による影響を減少させられるかを判断します。さらに、シグナルの減少を回避するために、3 mM以上の塩化マグネシウムまたはリアルタイムPCRマスターミックスを用いてもよいでしょう。また最短の伸長時間を、ゲノムDNAでは30秒、cDNAでは15秒に調節することで、シグナル減少の回避に役立つ場合もあります。

ほかによく生じる問題として、ネガティブコントロールにシグナルが認められることがあります。この問題の多くは、試薬類やピペット、作業台などからのコンタミネーションが原因です。これを回避するため、エタノールの代わりに10%次亜塩素酸ナトリウム溶液を使用し、作業台やピペットを事前に洗浄してもよいでしょう。PCR品質の水を使用し、その水はPCRのみに使用します。混入物がないことを確認するため、鋳型なしのコントロールを用いてください。逆転写の手順に移る前に、サンプルRNAをRNaseフリーのDNaseで処理するのも良いでしょう。

RT-qPCRでよくみられるもう1つの問題は、再現性の乏しさです。プライマーダイマーは、プライマーの濃度を下げること、プライマーシークエンスの相補性と二次構造を評価すること、必要であればプライマーを再設計することで回避できます。最終的には、融解曲線分析を行い、プライマーダイマーが存在するかどうかを確認しましょう。

以上、RT-qPCRの基礎となるRT-PCRについての解説と、RT-qPCRにおいてよく生じる問題の解決方法について紹介しました。RT-qPCRの基本となる技術について理解した上で、研究に取り入れていきましょう。

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