MISSION siRNAを使用したRNAi実験のポイント

MISSION siRNAを使用したRNAi実験のポイント

※本記事は2018年時点の情報です

RNAiとsiRNA

RNA interference(RNAi)は転写後遺伝子サイレンシングのひとつで、自然に存在する生物学的遺伝子抑制メカニズムです。低分子干渉RNA(siRNA)duplexがその標的となるmRNAの破壊を誘導することで生じます。

この記事ではRNAiに使用されるsiRNAやRNAi実験のコツについて解説し、シグマ・アルドリッチが取り扱うsiRNAライブラリーのひとつであるMISSION® siRNAやその他のsiRNA製品を紹介します。

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siRNAとは

siRNA duplexは、長い二本鎖RNAを分解する酵素 Dicerによって自然に産生されます。また、 合成siRNAを細胞に導入することにより、RNAiパスウェイの後半部分を誘導することが可能です。siRNAは21〜23塩基のフラグメントで、RNaseを含む複合体であるRNA-induced silencing complex(RISC)に取り込まれます。ATPに依存するsiRNA duplexの巻き戻しは、RISCの活性化に必要です。この複合体は、siRNA duplexを巻き戻し、センス鎖を放出します。RISCに結合したアンチセンス鎖は、相補的なmRNA配列のターゲティングに必要なガイドとして働き、mRNAの切断と分解を引き起こします。
(参考文献:Hammond, S.M., et al., Post-transcriptional gene silencing by double-stranded RNA. Nat Rev Genet., 2, 110-9 (2001).)

siRNAを使用する際は、RNase free waterに溶解しましょう。RNase free water(製品番号:W4502)はシグマ・アルドリッチでも取り扱っています。

siRNA(または一本鎖RNA)を保存する場合は、4℃で1~2週間は安定です。長期保存する場合は-20℃で保存しましょう。その際は、凍結融解の繰り返しを避けるため、使い切る分量で小分けにしてください。また、蛍光修飾品は、アルミホイル等で遮光した状態で保存すること。これらを満たした条件下では6ヶ月間は安定です。

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(※以下、本記事本文中のリンクは全てシグマ・アルドリッチのサイトにジャンプします)

デザイン済みのsiRNAを使う

シグマ・アルドリッチではバイオインフォマティクスのリーディングカンパニーであるRosetta Inpharmaticsと提携し、ヒト・マウス・ラットの遺伝子に対してプレデザインされたMISSION siRNAという製品を取り扱っています。

近年の研究によりsiRNAのデザインが、RNAi実験の成否に大きな影響を与えることがわかっています。高度にデザインされたsiRNAは、オフターゲットリスクを低減し、高発現量の遺伝子だけでなく、全ての遺伝子に対してノックダウン効果を得られることが報告されています。クラス最高のデザインアルゴリズムでデザインされたsiRNAを使用することで、時間や費用を節約し、さらに下流のアプリケーションに集中することができます。

◆MISSION® siRNAの詳細情報

MISSION siRNAは1 duplexあたり20,000円から購入可能です。バリデーションが取られているもの(Validated MISSION siRNA)は、1duplexあたり36,000円からとなっています。保証収量2ODのsiRNAの場合は、4 duplexまで受注後6営業日以内に届けられます。

 

MISSION siRNAでは、1つのターゲット遺伝子に対して3候補注文した場合、少なくとも1つは75%以上のノックダウン効率を示すことが保証されています。もし3候補ともノックダウンしなかった場合には、同一遺伝子の他の候補を1つ、1回に限り無償で再合成することができます。ノックダウン効率の検討は最終濃度30nM以上、導入後48時間で行いましょう。使用する細胞株やトランスフェクション試薬によって導入効率は異なります。75%以上のノックダウン効果が得られなかった場合には、テクニカルサービスに連絡してください。なおノックダウン効率の判定方法はqRT-PCRでの結果が基準となります。

また、Validated MISSION siRNAというライブラリーもあります。これは、20nMの濃度でHeLa細胞にトランスフェクションし、24時間後にQuantiGene 2.0にて、mRNAが70%以上ノックダウンしていることが確認されているsiRNAです。ただし、どんな実験系でもノックダウンされることを保証した製品ではないので注意しましょう。シグマ・アルドリッチのサイトではValidated MISSION siRNAのリストが確認できるので、ぜひご覧ください。

MISSION siRNAのランキングは、最も高いノックダウン効率を示すと予想されているsiRNAが1となります。

MISSION siRNAは化学修飾されていないのsiRNAです。しかしRosetta Inpharmaticsのデータの蓄積により、オフターゲットリスクを極力低減するようにデザインされています。配列は、製品に添付されているデータシートに記載されていますが、注文前に配列を確認することはできません。

実験に使用するsiRNAの量や濃度

各種培養プレートに適したsiRNAや試薬の量を下の表にまとめました(siRNA 最終濃度 30nMの場合)。6-wellプレートで2 OD(10 nmol)のsiRNAを使用する場合、10,000pmol / 75pmol/well=約133well分となります。

新しく実験を始める際には、それぞれの細胞種に最適なsiRNA濃度を確認するため、小規模の予備実験を行いましょう。この場合、siRNAは最終濃度5〜100nMに設定しますが、一般的には、30nMのsiRNA濃度ではじめるのが良いでしょう。できるだけ低濃度でのノックダウンを行うのが理想です。低濃度で使用することによって、オフターゲットリスクを軽減できます。

また、シグマ・アルドリッチでは、siRNAを効率よく細胞に導入するためのトランスフェクション試薬を3種類取り扱っています。

◆トランスフェクション試薬についての詳細情報

必ずノックダウンできる方法はあるか

使用する細胞株やトランスフェクション条件によってノックダウン効果は変動するため、必ずノックダウンできる方法というものはありません。RNAi実験はトランスフェクション方法、時間、siRNA濃度など不確定要素が多い実験系です。したがって、使用する細胞株の文献があれば、まずはそれを参考にするとよいでしょう。できればポジティブコントロールとネガティブコントロールを取り、siRNAの導入効率を検討しましょう。

ネガティブコントロールにはMISSION siRNA Univarsal Negative Controlを使うとよいでしょう。シグマ・アルドリッチではこの他に、スクランブルコントロールのデザインも行っているので、必要な場合は問い合わせてみましょう。

◆MISSION siRNA Univarsal Negative Controlの詳細情報

ポジティブコントロールはヒトとラットのものであれば、MISSION siRNA positive controlがあります。

◆MISSION siRNA positive controlの詳細情報

様々なsiRNAの合成

動物個体でRNAi研究をする場合は、HPLC精製、ろ過滅菌、エンドトキシンテストを行ったin vivo qualityのsiRNAを使用するとよいでしょう。

ヒト・マウス・ラット以外の生物種に対するsiRNAは、遺伝子名、生物種、NCBI RefSeq IDをテクニカルサービス専用メール(jpts@merckgroup.com)に送ることでデザイン可能です。またデータベース上で登録のない遺伝子の場合も、一度テクニカルサービスに相談してみましょう。ただし、カスタムデザイン品となるため、ノックダウンの保証はされません。

Mission RNAiには、MISSION siRNAの他にMISSION esiRNA、MISSION shRNAがありますが、初めてRNAi実験をする場合は、Mission siRNAを使うとよいでしょう。また、費用を抑えて短時間で結果を出したい場合は、MISSION siRNAがおすすめで、予算があり長期的な実験が可能な場合は、MISSION shRNAがよいでしょう。

このほかにシグマ・アルドリッチではMISSION microRNA mimicとMISSION Synthetic microRNA inhibitorのカスタムデザイン・カスタム合成も可能です。デザインした配列情報は非開示情報となっています。miRNAの名称(ex mmu-miR-155-5p)を明記してテクニカルサービスに相談しましょう。

以上、siRNAについての解説やRNAi実験のコツ、シグマ・アルドリッチが取り扱うsiRNA製品について紹介しました。MISSION siRNAは時間と予算を節約し、RNAi実験をより効率的に進める手助けとなるはずです。RNAi実験に取り組む際はぜひ利用を検討してみてください。

 

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