<インタビュー>日本の食の安全を守る 食品検査の現場で行われていること

<インタビュー>日本の食の安全を守る 食品検査の現場で行われていること

第三者食品検査機関「マイコトキシン検査協会」とは

日本は今も、多くの食糧を輸入に頼っています。日々の食卓に欠かせない穀物や野菜はもちろん、ナッツやスパイスなど、その種類はさまざまです。輸入された食品は検疫所で審査され、必要があれば検査機関の検査員が検体を採取して検査が行われます。

一般財団法人マイコトキシン検査協会は、国から受託された第三者食品検査機関として、日本の食の安全を守るために輸入食品の検査を行っています。検査機関としての歴史は長く、特にカビ毒検査の実績と経験が豊富です。

それでは、食品の検査の現場ではどのようなことが行われているのでしょうか。マイコトキシン検査協会の主任研究員である大圖祐二さんに、お話を伺いました。

―協会で行われている検査について教えてください。

この建物は港のふ頭に建っています。港には食品を積んだ船がひっきりなしに入ってきます。その貨物を私たちは次々検査していくのです。

船で運ばれてきた食品はいったん港の倉庫や保税置き場に置かれます。これらの食品の一部は検査が終わるまで国内の市場に出ることはありません。検査の流れを簡単に説明すると、まず積み上がった梱包物から決められた方法でサンプルを採ってきます。それを粉砕してよく混合したものが、検査用の検体となります。

検体は、まず分析を妨害する夾雑物を取り除いてから、高速液体クロマトグラフ(HPLC)などの測定機器で分析します。たとえばカビ毒のアフラトキシン検査なら、アフラトキシンの有無を、HPLCの結果を見て判断します。基準値を超える試験品があれば、より精密な検査を行います。

研究用の試薬と違って、食品の種類によっては夾雑物が多いため、適切に前処理できるかどうかが分析の鍵を握ります。それがうまくいかないと、ターゲットのピークが隠されたり、夾雑物による擬判定が出たりするからです。さらに、検査の効率も重要です。検査は多いときで1日に120検体くらい行うこともありますので、迅速な作業を行って検査結果を出さなければなりません。

―食品の種類も状態も様々なので、前処理が大変ですね。

食品ごとに適した試験法を探りながら検査を行っています。同じサンプルでも産地が違うと状態が変わることもあります。経験を積んでいくと、新しい食品でも、これまでの経験からあたりをつけて適切な検査を行えるようになります。たとえば、生産国によって出やすい妨害成分がわかってくると、産地を見て事前にそれを取り除くための前処理を行います。

ほかにも、ナッツなどの油分が多い食品は油が出ると調べたい物質の回収率が悪くなります。粉砕したときにベタベタにしているのではなく、粉が比較的ドライな状態だと分析の精度は上がります。

トライアンドエラーの結果、乾燥状態を維持して試料を調製するためには、途中の粉砕処理の過程で温度を上げないようにすればいいことがわかりました。温度が上がると試料中の油脂が溶け出てきてしまうので、熱が発生しないように手早くやります。粉砕する前に冷凍したり、ドライアイスなどで冷却しながら粉砕処理を行うこともあります。

―特に難しかった食品はありますか?

スパイス類は結構苦労します。始めはまったくわからない状態でとりあえずやってみるのですが、回収率が悪かったり、色素などが邪魔をしたり。試行錯誤の末、うまくいく手応えを感じたときは、本当にうれしいですね。

たとえば、スパイスの中でも、特にコショウが大変でした。油がなさそうに見えて、実はあるのです。辛味成分も分析の妨害になるので、それをどうやってクリーンナップするかを考えました。夾雑成分がないきれいな状態で分析できるようになるまで、半年以上かかりました。

―この仕事で大変なことは何でしょうか?

10kg以上の食品を抱えて粉砕機に投入したり、試薬瓶も一度に大量に持って行ったりなど、意外と体力が必要なことでしょうか(笑)検体を採取しに行く倉庫ではエレベーターが使えないときもあって、重い検体を抱えて急な階段を上り下りするのは割ときついですね。

あとは予定が読めないことです。船で運ばれてくるので天候が悪いとスケジュールが二転三転してしまいます。船が着かずにサンプルの到着が遅れたときは、納期に間に合わせるために夜遅くまで検査をすることもあります。

毎日、様々な食品が入ってきますので、それに合わせてスケジューリングし、手順を前の日に調整しながら行っていきます。

―違反物質はどのくらい検出されるのでしょうか。

多いときで年間1万5000件の検査をしますが、その中の15~25件くらいは違反物質が検出されます。違反を出すと相手国の業者からクレームをいただくこともありますので、二重三重の検査を行い、間違いなく違反であることを数値でしっかり示します。我々の出した数値がそのまま厚生労働省のホームページで貨物の詳細な情報と一緒に発表されるので責任は重大です。

―最後に、この仕事の魅力を教えてください。

やはり食の安全を守る一翼を担っている仕事ですので、そういう責任感というかやりがいのようなものは感じています。

うまくいかないこともあるのですが、私にとっては、それこそが魅力かもしれません。自分で考えながら試行錯誤して道を見つけていくのが好きですね。サンプルの種類が多いのも楽しいです。たまにめずらしい試験品がきたりするとワクワクします。

会社プロフィール
一般財団法人マイコトキシン検査協会
横浜市にある厚生労働省の第三者登録検査機関。カビ毒を中心に食品添加物、残留農薬、微生物、器具・容器包装、栄養、有害物質、放射性物質などの検査を行っている。カビ毒検査の実績と経験はトップクラス。