<研究最前線>検査効率の向上を実現!アフラトキシン分析に適した多機能固相カラムとは

<研究最前線>検査効率の向上を実現!アフラトキシン分析に適した多機能固相カラムとは

大量の検体を短時間で検査

一般財団法人マイコトキシン検査協会では、厚生労働省の登録検査機関として、輸入食品の検査などが行われています。検査は研究のための実験と違い、大量の検体を短時間で分析する必要があります。検査が滞ってしまうと食品の鮮度が落ちていくからです。

同協会で主任研究員を務める大圖祐二さんは、効率のよい検査方法を模索し、2017年にカビ毒のアフラトキシン用の多機能固相カラムを開発。メルクも関わった多機能固相カラムの開発の経緯やメリットについて、詳しくお話を伺いました。

―多機能固相カラム法を開発された経緯を教えてください。

アフラトキシンはアスペルギルス・フラバスやアスペルギルス・パラジティカスという菌が産生するカビ毒で、発がん性があり、大量摂取すると急性肝炎などの中毒症状も起こす危険度の高い物質です。油分が好きなカビなので、主にナッツ類に発生することが多いのが特徴です。

検査をするときには、前処理でクリーンナップを行い、検体中の油分を取り除く必要があります。しかし、従来の固相カラムではこの作業がなかなかうまくできません。そのため、今まではイムノアフィニティカラムを用いてクリーンナップをしていました。

しかし、イムノアフィニティカラムは抗原抗体反応を利用した方法なので、クリーンナップ能力は高いものの、手順が煩雑で時間が掛かってしまうという欠点があります。また、抗体を使っているため保管は基本的に冷蔵で、保証される使用期限も短いため、コストもかかるのです。またロット差のばらつきが発生してしまうことも問題でした。

そこで固相カラムを用いたアフラトキシンの分析ができないかと考えました。そんなとき、メルクから油分の効率的な除去ができる充填剤「Z-Sep」を紹介されました。これを組み合わせたら、アフラトキシン分析用の固相カラムができるのではないかと思いつき、メルクと一緒にトライアルを行うことになりました。

まず試しに市販の固相カラムにZ-Sepを積層させてみましたが、これがなかなかよかったのです。Z-Sepの量を検討していくことで、アフラトキシン分析に最適な固相カラム(※)を開発することができました。

※このカラムは現在「SupelTox AflaZea」という商品名でメルクから販売されています。

SupelTox AflaZeaを用いて、クリーンナップ効率はどのくらい向上しましたか?

一番わかりやすいのが精製工程にかかる時間です。従来のイムノアフィニティカラムではクリーンナップからHPLC測定までに約60分もかかっていました。ですが、SupelTox AflaZeaを用いると約20分で終えることができます。しかも1アクションで精製操作が完了しますので、その間つきっきりでいる必要もありません。他の作業を同時に行えるため、作業効率がよくなりました。

分析精度も良好で、アフラトキシンの存在を測る基準値の判定試験には多機能固相カラムが有効であることもわかりました。

(参考)イムノアフィニティカラムと多機能カラムSupel Tox AflaZeaの比較

  イムノアフィニティカラム 多機能カラム Supel Tox AflaZea
使いやすさ
  • 使用する溶媒量が多い
  • 滴下速度の管理が必要
  • 手順が何段階もあり煩雑
  • 緩衝塩やフィルターも必要
  • 冷蔵保存し、使用前に室温に戻すことが必要
  • 使用する溶媒量が少ない
  • 真空ろ過を適用できる
  • 手順が少なく簡単
  • 追加の試薬は不要
  • カラムの保管条件は特になし
価格

比較的高価

比較的安価

前処理の手順

第1段階

1. 廃液回収用にマニホールドをセッティングする
2. 試料にリン酸緩衝生理食塩水を加え、ボルテックスする
3. 希釈液をガラス繊維濾紙等でろ過する
4. カートリッジのキャップを外して乗せ、カラム内の水分を自然落下で排出する。
5. カラムをリン酸緩衝生理食塩水でリンスする
6. カラムに受け器を装着し、試料をロードする

第2段階

7. カラムに残留する干渉物をリン酸緩衝液で洗浄する
8. カラムを水で洗浄する
9. マニホールドを試料回収用に再度セッティングする
10. 試料を溶出し、回収する

第3段階

11. 試料を蒸発乾固する
12. トリフルオロ酢酸を加える
13. 試料を希釈し、ボルテックスする

トリフルオロ酢酸誘導体化まで 約 60分

1. 試料回収用にマニホールドをセッティングする
2. カートリッジを乗せる
3. 試料をロードする
4. 自然落下で試料を溶出し、溶出液を回収する
5. 溶出液2mlを試験管に採る
6. 試料を蒸発乾固させる
7. トリフルオロ酢酸を加える
8. 試料を希釈し、ボルテックスする

クリーンアップまで 約20分

―検査方法も進化していくのですね。

輸入国との関係や決められた基準がありますので、あまり変わったことは行えないのですが、今回のようにしっかりと調べて論文にし、妥当性を理解してもらいながら改善していくことは必要だと思っています。

食文化が変わっていくと、検体の種類も変化していきます。最近は今まで扱ったことがないようなスパイスも検査するようになりました。産地によっても正確に検査するコツは変わります。より安全な食品をみなさまのもとへお届けするためにも、試行錯誤は続けていきたいですね。

会社プロフィール
一般財団法人マイコトキシン検査協会
横浜市にある厚生労働省の第三者食品検査機関。カビ毒を中心に食品添加物、残留農薬、微生物、器具・容器、栄養、有害物質、放射性物質などの検査を行っている。カビ毒検査の実績と経験はトップクラス。