押さえておきたい、ろ過手法とフィルターの基礎知識

押さえておきたい、ろ過手法とフィルターの基礎知識

ろ過の基本をマスターしよう

ライフサイエンスの実験から身近な日常生活に至るまで、さまざまな分野で利用されている「ろ過」。例えば、ドリッパーとペーパーフィルターを使ってコーヒーを淹れたり、真空掃除機で吸った空気からゴミを分離したりするのもその一つです。

ろ過とは、物と物をそれぞれの粒子径に基づいて分離する操作を指します。一口にろ過をすると言っても、その対象は液体、気体、超臨界流体(気体の拡散性と液体の溶解性を持つ状態)などさまざまで、分離の対象も多岐にわたります。一度のろ過ステップで作業が完了する場合もあれば、複数回のろ過ステップが必要な場合もあるなど、ろ過の手順もいろいろです。この記事では、ろ過の種類と用途、対象物のサイズとろ過手法の関係について解説します。

ろ過の種類とその用途

ろ過には、使用する膜の種類によって「粗ろ過」「精密ろ過」「限外ろ過」「逆浸透」などがあります。

粗ろ過は、10 µmよりも大きい粒子を分離し、フィルターの目詰まりを防ぐための前処理などに用いられます。精密ろ過は、約0.05~10 µmの粒子を分離し、滅菌操作などに使われます。限外ろ過は、約1~1,000 kDaの分子の分画または濃縮に用いられます。逆浸透は、極めて低分子量の成分を分離することができ、多くの場合、水の精製に用いられます。

生命科学・医学分野の研究でよく用いられるのは、精密ろ過、限外ろ過、逆浸透の3種類です。一方、医薬品製造や食品・飲料、化学工業、環境などの分野でも、精密ろ過膜が利用されています。代表的な例に、高速液体クロマトグラフなどの機器分析サンプルの前処理(微細夾雑物の除去)、土壌や自然水などの環境サンプルを均一化させるための夾雑物除去処理、特定の大きさの粒子を精密ろ過膜上に補足して計測・観察を行う粒子分析などが挙げられます。

ろ過手法はろ過対象物によって決まる

ろ過対象物の性質やサイズ、ろ過の目的によって、用いるろ過手法は異なります。そのため、実験者はろ過手法に応じたフィルターを選ぶ必要があります。

フィルターには大きく「スクリーンフィルター」と「デプスフィルター」の2つがあり、それぞれ対象物の捕捉メカニズムが異なります。スクリーンフィルターは対象物を表面で捕捉し、デプスフィルターは対象物を内部で捕捉します。

図1に、対象物のサイズと適用されるろ過手法に関する大まかな関係を示します。精密ろ過に使われる「メンブレンフィルター」はスクリーンフィルターの部類に入ります。デプスフィルターは繊維質から形成されるフィルターで、「ろ紙」がその代表です。

図1 対象物のサイズとろ過の関係

 

  • 粗ろ過
    対象物のサイズ:>10 µm
    捕捉物の例:藻類、菌類、花粉、毛髪、赤血球細胞
    使用フィルター:デプスフィルター
    フィルターの特徴:粒子を表面とその内部で補足する。

  • 精密ろ過
    対象物のサイズ:>0.05~10 µm
    捕捉物の例:大腸菌、マイコプラズマ
    使用フィルター:メンブレンフィルター
    フィルターの特徴:孔径以上の対象物を表面で完全に補足する。また、最大孔径をバブルポイントテストで確認できる。

  • 限外ろ過
    対象物のサイズ:1 nm〜0.05 µm
    捕捉物の例:グルタミン酸デヒドロゲナーゼ、ヘモグロビン、ミオグロビン
    使用フィルター:限外ろ過フィルター
    フィルターの特徴:表裏があり、表面のスキン層(限外ろ過膜の表面の層で、分子を捕捉する部分)側からろ過をしなければならない。

  • 逆浸透
    対象物のサイズ:<1 nm
    捕捉物の例:グルコース
    使用フィルター:透析膜・逆浸透膜
    フィルターの特徴:水分子以外のほとんど物質を補足する。

以上、ろ過の種類と用途、対象物のサイズとろ過手法の関係について紹介しました。普段何気なく行っているろ過作業ですが、その効率はちょっとした知識で高めることもできるはず。まずはろ過の種類やフィルターの特長に着目してみてはいかがでしょうか。

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